あらすじ
大佛次郎論壇賞、アジア・太平洋賞「大賞」受賞!
「私の二〇代は、この本を書くためにあったと言っても過言ではない。(中略)私は、彼が見た風景を少しでも追体験したかった。それは、私の中に、学術的探求心を超えた彼に対する愛があるからだろう。R・B・ボースの生涯は、私の人生の問いそのものであり、共感と違和感が交錯する複雑な対象でもある」(「あとがき」より)
一九一五年、日本に亡命したインド独立の闘士、ラース・ビハーリー・ボース。新宿・中村屋に身を隠し、西欧支配からアジアを奪還するため、オピニオン・リーダーとして活躍する。しかしアジア解放の名の下、日本軍部と皮肉な共闘関係に入っていく……。
「大東亜」戦争とは何だったのか? ナショナリズムの功罪とは何か? アジア解放への希求と日本帝国主義への依拠との狭間で引き裂かれた懊悩の生涯を描く。
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Posted by ブクログ
インドは何世紀かにわたってイギリスの植民地として支配された。そんな状況下で、インド独立を掲げてイギリスの帝国主義に対抗した者がいた。本書は、そのうちの一人で日本と親密な関係を築いたラース・ビハーリー・ボースの評伝である。インドで過ごした頃、テロを実行したこともあって、彼は指名手配され、逃亡生活を余儀なくされた。それで、日露戦争で勝利した日本に関心を持ち、官憲の目をくぐり抜けて何とかインドから脱出した。それ以後、イギリスはボースをめぐって日本に干渉したこともあり、日本に滞在したときも警察の目から逃れるのに必死だったが、その際、玄洋社や黒龍会といった右翼団体、パン屋の中村屋の支援もあって生き延びることができた。そして1916年天洋丸事件をきっかけに風向きが変わり、日本で安心して活動できるようになった。