あらすじ
本来、「生き方マニュアル」として誕生した教えから、受難と復活という特殊性を通して「信仰」が生まれた。
「宗教」として制度化したことで成熟し、広く世界に普及する一方で、様々な思惑が入り乱れ、闘争と過ちを繰り返すことにもなった。
本書は、南米や東洋での普及やその影響を通じて、ヨーロッパ世界が相対化され、近代に向かう中で、「本来の教え」が普遍主義理念に昇華するまでの過程を、激動の世界史から解読する。
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Posted by ブクログ
某グループの読書会課題図書.フランス在住の著者が外から見た日本のキリスト教を考察している面白い視点の本だ.利他、原罪と言ったキリスト教に絡む言葉が数多く出てくる.文化装置としてキリスト教という発想は新鮮だ.カトリックが"何度も信仰の「イズム」に立ち返って「宗教」を刷新してきた"という考察(p104)、新世界への布教に際して、先住民の存在を神学的整合性の上で苦慮したこと、普遍宗教としてキリスト教の構築などなど、新しい見方が面白かった."祖霊を祀るとか、氏神を祀るとか、自然神を敬うとかというレトリックの影には共同体における権力システムの継承のために個人の尊厳を冒し、死を封じ込めるという死の取り込みがあったことを忘れてはならない"(p176)は、日本におけるキリスト教の立場を明らかにする文言だと感じた.
Posted by ブクログ
「キリスト教」を「宗教」として捉えるのではなく、「生き方の規範」として展開してゆく。既存「宗教」が作り出す「共同体」や「聖」=「掟・禁」を否定する「自由」を有し、最も弱い者達に寄り添い人々がお互いを愛し合う事、それが「キリスト教」(=「聖書」)が説く教えである。
自分自身、日本の「キリスト教の教え」において聖書で述べられている内容と力点が少し違うのではないか?と思っている部分があったのだが、その違和感が間違っていないのではないかとより思う様になった。
難しい言葉が使われているのではないのに、何故か読みにくいというか、何度も行ったり来たりしないといけないのだがが少し残念。ただ読み込む程に理解が深まり、得るものも多くなるのは確か。