【感想・ネタバレ】ハイデガー入門のレビュー

あらすじ

二〇世紀哲学における最大の巨人と称されるハイデガー。半世紀以上にわたり、彼の思想はあらゆる知の領域に圧倒的な影響を及ぼしてきた。哲学史上最重要な作品の一つとして、大いなる成功と絶望的な無理解の断層に屹立する哲学書『存在と時間』。そこに隠された真の狙いとは何なのか? 本書は難解で知られるハイデガーの思考の核心を読み解き、プラトン、アリストテレス以降の西洋哲学が探求し続けた「存在の問い」に迫る。ハイデガー哲学の魅力の源泉を理解するための一冊。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

数学や物理学などは、ある一定の高みまで行かなければ、数学する、または物理学する喜びは得られない。本書は哲学に関して、ハイデガーを通し、哲学する喜びを味わう「入り口」まで引き上げてくれる良書だ。

ただし、ハイデガーという名前を聞いた程度、その主著『存在と時間』のあらましすら分からない、という読者向きではない。

ナチスのあたりは、なぜ?が拭えなかったが、西洋哲学史上繰り返し問われてきた内容についての指摘は、全般に驚きを持って読み進めた。

0
2015年08月05日

Posted by ブクログ

良くまとまっています。但し、欲張っているのでやはり原書を読まないと思いますが、難解な文体とのことで二の足踏んでいます。今サルトルを読んでいるので、敵対したようでその参考にくらいのつもりで読もうかと思います。

0
2024年11月04日

Posted by ブクログ

本書の目的は、「ハイデガー哲学が動いている問題地平を明らかにすること」だとされる。そのため、ハイデガー哲学はいわゆる実存哲学ではなく、プラトン・アリストテレスによる存在への問いを改めて立てる西洋哲学の嫡子であることを導きの糸として、ハイデガーの思考がどのような問題に関わっているのかが詳細に論じられる。主たる分析対象は『存在と時間』であるが、その論点を逐一検討していくのではなく、ハイデガーがプラトン・アリストテレスの哲学をどのように解釈し、そこから何を得たのか、同時代のウィトゲンシュタインの哲学と実は形而上学の次元において交錯していることなどが主張される。「入門」と題され、しかもハイデガー哲学への導入の役目を果たせば「入門」は不要だと言い切る本書であるが、哲学史上の様々な問題群と関わるハイデガー哲学をいかなる視座のもと理解するべきかについて、極めて明快な解答を与えているように思われる。

0
2015年08月21日

Posted by ブクログ

ハイデガー哲学への本格的入門書。実存哲学や現代思想、あるいは禅仏教などの枠組みを持ち込んでハイデガーを理解したつもりになることを、著者は厳しく退け、ハイデガーをハイデガー自身から理解することへと読者をいざなう。硬派で良質の入門書。

著者は、「それへ向けてのそれ」(Woraufhin)というハイデガーの言葉が果たす役割に注目することで、『存在と時間』の内容を捉え返している。

ソクラテスは美のイデアを、「それへと目を向けながら、あるものが美しい、美しくないと、私が語るそれ」と捉えていた。要するに、美という視点を設定して、そこから存在者を理解するということだ。著者は、ハイデガーの「存在への問い」にも、これと同様の問題構成が見られるという。すなわち、「そこから存在が存在として理解される企投のWoraufhin」をハイデガーは問うているのであり、その答えを、時間に見いだしたのである。時間が「存在理解一般の可能な地平」だというのは、こうした事態を意味している。

以上のようなハイデガーの問題設定は、プラトン、アリストテレス依頼の形而上学の問いの反復になっている。アリストテレスは、「存在者は多様に語られる、しかし一なるものへ向けて」と述べた。ハイデガーはこの「一なるもの」が時間に他ならないと考えた。またプラトンは、洞窟の比喩の中で、イデアに光を与える太陽に善のイデアを比していた。ハイデガーはこの関係を、「存在の理解に対して根源的に光を与えるものは善のイデアである」と言い表わす。そして、彼はプラトンのこうした問題構成を引き継ぎながら、永遠普遍のイデアに代えて「存在は時間から理解される」と述べる。著者はここに、ハイデガーのプラトンに対する批判的対決を見ようとしている。

0
2011年11月18日

Posted by ブクログ

[ 内容 ]
二〇世紀哲学における最大の巨人ハイデガー。
半世紀以上にわたり、彼の思想があらゆる知の領域に及ぼしてきた圧倒的な影響はいうまでもない。
大いなる成功と絶望的な無理解の断層に屹立する今世紀最も重要な哲学書『存在と時間』。
その本当の狙いとは何か?本書は、難解といわれるハイデガーの思考の核心を読み解き、プラトン、アリストテレス以来西洋哲学が探究しつづけた「存在への問い」に迫るとともに、彼が哲学者としてナチズムのなかに見たものの深層に光をあてる。
ハイデガー哲学の魅力の源泉を理解するための一冊。

[ 目次 ]
序章 『存在と時間』とは何か
第1章 存在への問い
第2章 存在の意味への問い
第3章 現象学
第4章 現存在の分析論
第5章 形而上学
第6章 ナチズム
終章 展望

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

0
2014年10月30日

Posted by ブクログ

自分が何を知らないか、何を読むべきかがわかった。本書の内容は5章以降からなんとなく理解できる部分が増えたものの、それ以前はやはりアリストテレスやプラトンを、彼らの言葉を知らないので致命的にわからなかった。

0
2021年04月25日

Posted by ブクログ

20世紀に活躍した哲学者ハイデガーの主著
『存在と時間』を中心に、
本入門書の著者の言葉通り、
「ハイデガー哲学が動いている問題地平を
明らかにすることを目的にしている」本になっています。
原語でハイデガーを読む人のための入門書という位置づけのため、
本書では、中身の解釈にまでは立ちいっていません。

「哲学」というもの自体、
頭を使うもので、難しくて、
なかなかとっつきにくいものだったりしますが、
そんな「哲学」のなかでも、
ハイデガー哲学はとりわけ難解な部類に位置付けられる「哲学」だそうです。
なので、本書自体も難しいです。

『存在と時間』にあたるための外堀を埋めていくにしても、
古代ギリシャ哲学者である、
プラトンやアリストテレスから始めなければわからない。
『存在と時間』は、古代ギリシャからの存在論を甦らせるというか、
より一歩進めたような哲学のようだと僕は思いましたが、
『存在と時間』を読んでいないし、たぶん読まないので、
そこはわからないですね。
ただ、存在の意味への問いが、形而上学的(神学を含んでいる学問)にいえば、
それが「神」が答えになるところで、ハイデガーは「時間」を答えだとしてました。
さらに、ハイデガーは存在の意味においては、
神がそこに立ち上ってくることを嫌い(?)、
存在の真理を問うというかたちで回避していこうとしていくようなんですが、
もうね、なかなか、読み終わってしばらくたつと、
脳内から湯気のように蒸発していくような、
頭に定着しずらい難解な抽象的思考で構築されていました。

形而上学もそうだし、現象学もそうだし、
いろいろな基礎があって、ハイデガーは自分の哲学を創っていった。
そして、当時ナチスの時代ですから、
ナチズムとの間になにかスキャンダル的なことがあったらしいのですけども、
本書はスキャンダル的にならないことをモットーとして書かれているため、
まったくそれがどういった事件なりトラブルなりスキャンダルなりなのか
書かれていないのです。
その態で、ナチズムとハイデガーについて哲学的な面から論じられていて、
なんだか核心をベールで覆ったままみたいに、
すっきりしなかったですね。
なんていうか、ちょっと純だというか、
中身については、きれいすぎる本ではあります。

というわけで、ハイデガーの哲学そのものについては
わかるところがあまりなかったですが、
外堀を埋めていくところで、その周辺部に出てきたものが面白かった。
そのひとつは、現象学です。
「見る人」と「見られる物」、
その二つがあるとだけ認識してものを見る、と考えると何か足りない。
そう、光が足りないのです。
光が照射されているからこそ、
「見る人」は物を見ることができる。
現象学のこの考え方っていいなあと思いました。
これは「考える人」と「考えてもらう物」の二つだけとすると
不完全だってことに繋がります。
たとえば医療の現場で、
医者が患者を治療するところだけを見たり考えたりしてたんじゃ足りなくて、
なにがその病気を起こしているかを考えないと完全じゃない、
みたいな疫学的思考と現象学は繋がると思う。
現場が川下で疫学研究が川上と比喩したものも以前読んだ本にあったけれど、
現象学的な光の考え方ですよね。

それと、
関連してでてきたウィトゲンシュタインの哲学があって、
彼の「人が永遠性を無限な時間持続してではなく、
無時間性として理解するならば、
現在のうちに生きる者は永遠に生きる」っていうのが、
村上春樹『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』の
結末のアイデア源なんじゃないのって思ってしまった。
しかも、読んでいくうちに、
この無時間性の永遠性って、
古代ギリシャから連綿と引き継がれてきた哲学のひとつだそうで、
ポピュラーなんだなあと、自分の無知を知りました。

また、
プラトンが言ったイデアの概念については、
実は学生時代にwebでいろいろ調べて考えた経験があって、
それが今回助けになったのでした。まあ、それでも難解でしたが。

というわけで、
ハイデガーについてもちょこっとでもなにか言いたいところですが、
本書の著者が、ハイデガーについてわかってもいないのに、
部分的につまみ食いしたようなものを語るべからず、と強くいっていますし、
そういったものは「おとぎ話」にすぎないと斬って捨てているので、
やめておこうと思います。
ハイデガーを知りたければ、まず入門書としてこういう本がありますが、
原書をあたらなければわからないということです。
翻訳したものもありますがそれは不完全すぎていて、
原語の単語単位で解釈しないとわからないところがあるから、
ちゃんとドイツ語を学んで読みなさい、ということです。
……厳しい世界ですね。

0
2019年03月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

正直自分の頭ではこの本は入門ではなかった。難解。ハイデガー入門といいながらも、ニーチェやプラトン、アリストテレス、ヴィトゲンシュタインなどの思想も説明してくれている。しかし難解ww

ハイデガーを実存哲学ととらえつつも、アリストテレスから続く西洋哲学の歴史の流れの中でハイデガーの「存在と時間」について説明している。
存在とはなにかを考えさせられた。
「美」と「美しいもの」は「存在」と「存在者」の存在であり、存在は存在者を規定するものであるし存在者はそれにむけて理解するテーゼであるという理論は納得できた。
うん、全体的に難しかった

0
2011年11月21日

Posted by ブクログ

この本が入門書として良書かどうかはこの後実際に「存在と時間」を読む段になって明らかになると思う。なので今は星三つ。

不満な点を挙げるとすれば、一部の術語(「時熟」、「脱自的」など)が最後まで意味を説明されずに使われていることか。入門書の読者としては、国語辞典に載っていないような術語については一言説明が欲しかった。

0
2011年09月12日

Posted by ブクログ

ハイデッガーの事を勉強しようと思って初めて読んだ本が難しすぎて、2冊目に読んだ本です。

この本は文庫だけあってものすごく読みやすかったです。
ハイデッガーの主張を筆者の言葉で言い換えてあり、理解が比較的容易に出来ました。

しかし、わかりやすさ故の物足りなさを感じる面もありました。
例えば原典の引用が全体的に少なかったような印象があります。
やはり原典に基づいているという確信が持てなかったので物足りなさがありました。
また、この本では時間と存在については結構詳しく分かりやすく触れられているけれど、詩作・思索についてなどはあまり触れていないのかなーと感じました。


この本はハイデッガーの主張を彼の生涯を絡めて考えているのですが、私はこういう視点も面白いと思うけれど、もうちょっと著作に踏み込んだ内容のほうが好きかなーという印象です。

でも、あらゆる視点からハイデッガーの思想を考えるのは有意義だと思うんので、読んでよかったと思っています。

0
2011年04月12日

「学術・語学」ランキング