【感想・ネタバレ】see you againのレビュー

あらすじ

30年前に起きたいじめ自殺事件。亡くなった中学生の遺書の不可解さにとらわれたルポライターが、生涯をかけて追いつづけた謎は、はたして解けたのか? いじめた人、いじめられた人、傍観していた人――すべての人が読むべき空前絶後の大作。

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Posted by ブクログ

とても重たい一冊。鈍器本だと聞いてはいたけど、本そのものがずっしり重いし、それ以上に扱っているテーマの重さと情に圧倒される。本書の概要は、どれほど言葉を尽くしても軽々しくなりそうで、安易にまとめる事ができないが、実際の事件を知る世代として細かいディテールをいろいろ思い出したし、考えさせられた。私達はこの“重さ”そのものをしっかり抱えて共に生きるしかないのか。この分量の小説だからこそできたこと。凄かった。

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2025年11月17日

Posted by ブクログ

小林さんは足利事件のルポを書いた方ですね。
今作はノンフィクションではないという、実際の事件を下敷きにしたフィクションだがどうしても起こったことそのものから想像してしまうと思う。自分の中では彼女は頭が悪いからに近い描き方だと思った。
大作だけどスイスイ読み進められる。
ヘヴィな内容なのに気になって仕方なくなってしまう。
事件当時はまだハイハイくらいやったので、読み終えてから事件については調べて少しは分かったつもり。
ニュースでよく見るような事件、実際にはこんなにも複雑で、人間が引き起こした事なんだって思い知るのが本を読むってことなのかな。

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2025年09月23日

Posted by ブクログ

1994年に愛知県で起きた中学生のいじめ自殺事件を追ったノンフィクション。
…なのだが、登場人物らは仮名で書かれており、著者は冒頭で本書がフィクションであることを表明する。

なぜそのような形をとったのか、解釈はいろいろできると思うが、900頁を超える本書を読んで感じた印象は、たしかにノンフィクションのそれではない。だからといって単なるフィクションを読んだ気にはならない。強いて言うなら文学的といえる読後感である。


ところで、大衆小説と、純文学のような文学的といわれる小説のちがいはなんだろうか。こちらもいろいろと答えはあるだろうが、ひとつ挙げるならば、大衆小説にはわかりやすい結果や解決や答えがあり、純文学にはない、もしくはわかりにくい解答しかなされない、というものだ。
大衆的な物語は、犯人を捕まえたり、敵を倒したり、幸福になったり不幸になったり、なんらかのわかりやすい結果が出る。文学的な物語は、なんらかの事象があり、そのまわりをぐるぐると考え続けたうえで、たいした結論が出ないものである。物語上は出たとしても、それがそのままカタルシスに向かわず読者へ解釈を要求するような態度がある。


本書の話に戻ると、900頁以上にわたって、30年以上の取材を通じて、なにがわかったのか?

実は、なにもわからないのである。こう言ってしまうと語弊があるが、これはひたすら事件について考え続ける物語であり、なんとなく事件への整理がつきかけたように見えるラストまで辿り着いた先には、さらなる思考を要求するような事態が待っている。
そのような意味で、文学的なフィクションを読んだような読後感を覚える。


よって本書は、なにか新たな真実が書いてあるわけでもなく、いじめの加害者や学校を糾弾するわけでもない。著者は判断というものをしない。
本事件を扱ったYouTube動画を見ると、コメント欄には感情的な怒りを込めた言葉が並んでいる。それは真っ当なものであり、ぼくもおなじように思うが、しかしそれはすぐに忘れるような一過性のものであり、事件への解決をもたらすものでないのもたしかである。

30年という月日をかけてひとつの事件に関わり続けるというのは、真っ当かどうかでいえば、そうではないと思う。ほとんど偏執的で狂気的といっていい。YouTubeのコメント欄のほうがよっぽど常識的なひとたちではないかと思う。
しかし、そのような真っ当ではないコミットメントでしか辿り着けない場所というものがあることを本書は教えてくれることかと思う。

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2025年07月31日

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