【感想・ネタバレ】崩れる 結婚にまつわる八つの風景のレビュー

あらすじ

仕事もしない無責任な夫と身勝手な息子にストレスを抱えていた芳恵。ついに我慢の限界に達し、取った行動は……(「崩れる」)。30代独身を貫いていた翻訳家の聖美。ある日高校の同級生だった真砂子から結婚報告の電話があり、お祝いの食事会に招待されるが……(「憑かれる」)。家族崩壊、ストーカー、DV、公園デビューなど、現代の社会問題を「結婚」というテーマで描き出す、狂気と企みに満ちた8つの傑作ミステリ短編集。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かった。

ツイッターで表題作の「崩れる」が話題になっていたので読んでみた。
この作者の作品を読むのは初めてだと思う。アンソロで読んだかもしれないが覚えていない。

総じて女性の心理を描くのが上手いなという印象。
ダメ男に対する女性の辛辣な評価まで描かれているので、作者は自己内省も込めて描いているのか?とも思った。各キャラのダメなところもきちんと描いているところが面白い。


以下、各話の感想。


「崩れる」(小説すばる94年11月)
パート終わり、夏の暑さにうんざりしながらバスに乗り遅れるところが印象的。そして乗れたバスでも定期が切れて両替もしてくれない、という目に見舞われる。
この出来事で主人公芳恵は『異邦人』みたいに、太陽のせいと言う殺人者になったのかなあと思った。
『異邦人』では母親の死について涙を見せない非人間性を異邦人として扱うが、今作では、「あんな家族なら、もう二度と欲しいとは思いません」で終わるのが良い。


「怯える」(小説すばる95年4月)
主人公哲治は元カノに怯え、妻は夫の浮気に怯えていた、という話。
夫婦がちゃんと話し合えば起きなかった話。
過ぎてしまえば笑い話になりそうな着地点で面白かった。まあほんと洒落にならんが。
哲治が赤ん坊のことを最初から気にしているのがちょっと新鮮。育児書を自分から読む父親、というのが現代でやると優等生に見せたい、みたいなニュアンスを受け取ってしまうが、昔に書かれたもの、というとそのフィルターを外して見れるので、素直に偉いじゃん、の気持ちになれる。普通のことを普通にやってて偉い。


「憑かれる」(小説すばる95年8月)
幽霊オチとは思わなかった。だからやけに手が冷たいと描写されていたのか。
誰も呼ばれてないのは、復讐目的?と思ったけど、幽霊とはね。
お店の人はその分個室を開けて置かないといけないから、その代金とかって…という細かいところが気になった。
周りの男を不幸にさせる運命だとしても好きな男を手に入れたくなったのすごい。男のほうが本気にしなかったからだが。死んでからも恨んでない様子なのもすごい。


「追われる」(小説すばる95年11月)
ストーカーの話だけど、ストーカー自体知名度が無かったらしくて、それ知らずに書いたの!?すご!だし、結婚相談所のセミナーもよく知らずに書いたらして、それもすごい。


「壊れる」(小説宝石94年11月)
主人公は上司にチクられたと思ってるっぽいから、女性社員からゲットした情報なら上司の不倫相手の女性社員がチクったのでは、と思う。
不倫についても男は左遷で女性は退職、という差も理不尽ですごいな。
交通事故あったら、会社に報告しといたほうがいいなと思った。


「誘われる」(小説すばる96年3月)
信頼できない語り手だったとは。
育児ノイローゼについてはもうちょっと手がかり欲しかった。
ママ友が出来なくて孤立する描写は面白かった。今ならネットとかに書き込んで愚痴を語り合えるだろうけど、昔は手段が限られているからなあ。
現実的なとこだと実母に泣きつくとか?
親子関係が良くないと取れない手段だが。


「腐れる」(小説NON96年10月)
匂いに敏感になるのは面白い。妊娠すると体質が変化して匂いがダメになるというのはよく聞く。食べられるものが変わるとかも。
そこからお隣さんが気になるというのが面白い。
父親死んだのかな。いつ死んだのか。娘を実家に預けてから?
殺しちゃったから娘を預けて偽装工作してたとか?
でもまず死体を片付けたほうが良いのでは。匂いが残っちゃったとか?


「見られる」(小説すばる96年12月)
最後の最後に婚約者からの電話かもしれない、という余韻を残して終わるのが面白い。
よく知らない相手に見られている恐怖とよく見知った相手から見咎められていたと知る恐怖。どっちも怖い。

0
2025年11月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最後の見られるって、早く寝ろまた遅刻するぞって最初に言われてたけどそれもゴミからは分かんなくない?しかもその時康平隣にいたやん
どーいうこと〜!!!!!!!
つまり犯人3人くらいいるってこと??
向かいの家の40代きもおじ、康平、あと誰?課長?

0
2023年08月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

貫井徳郎初の短編集。

「結婚」をテーマに8つのストーリーがおさめられていました。

短編なので、それぞれはサクッと読み終えるのですが、内容はしっかりと詰まっています。

そしてそれぞれのストーリーで明かされる謎。

お見事でした。

説明
内容紹介
崩れる女、怯える男、誘われる女……ストーカー、DV、公園デビュー、家族崩壊など、現代の社会問題を「結婚」というテーマで描き出す、狂気と企みに満ちた、8つの傑作ミステリ短編。
内容(「BOOK」データベースより)
仕事もしない無責任な夫と身勝手な息子にストレスを抱えていた芳恵。ついに我慢の限界に達し、取った行動は…(「崩れる」)。30代独身を貫いていた翻訳家の聖美。ある日高校の同級生だった真砂子から結婚報告の電話があり、お祝いの食事会に招待されるが…(「憑かれる」)。家族崩壊、ストーカー、DV、公園デビューなど、現代の社会問題を「結婚」というテーマで描き出す、狂気と企みに満ちた8つの傑作ミステリ短編集。
著者について
1968年東京都生まれ。93年『慟哭』でデビュー。2010年『乱反射』で日本推理作家協会賞、『後悔と真実の色』で山本周五郎賞を受賞。他書に『失踪症候群』『天使の屍』『プリズム』など多数。最新刊は『灰色の虹』。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
貫井/徳郎
1968年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。93年『慟哭』でデビュー。2010年、『乱反射』で日本推理作家協会賞、『後悔と真実の色』で山本周五郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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2022年07月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

貫井徳郎作品はいくつか読んだことがあるけど初めての短編集。1997年ということでちょっと状況が今とは違うところもあるが、基本的には今でも全然その辺でありそうな話なだけに余計怖かった。
個人的には「崩れる」「腐れる」が特に面白かったかな。

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2021年10月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

*崩れる女、怯える男、誘われる女……ストーカー、DV、公園デビュー、家族崩壊など、現代の社会問題を「結婚」というテーマで描き出す、狂気と企みに満ちた、8つの傑作ミステリ短編*

一つ一つがとても丹念に緻密に書かれた、完成度の高い短編集です。
日常に潜む昏い部分を丁寧に切り取ったような作品たち。一見してやったりと思われる出来事が最後には自分に跳ね返ってくる「追われる」のような展開、ぞっとしますがさすがです。

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2019年07月11日

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