あらすじ
「東雅彦は嘘つきで女たらしです。東雅彦は2月1日、こんなことをしていました」愛心学園吹奏楽部の部室に貼られた怪文書。こんなものを貼ったのは誰だと騒ぐ部員たちが特定の人物を犯人扱いしそうになったとき、オーボエ主席奏者の渡会千尋が「私がやりました」と名乗り出る。渡会千尋。僕の初恋の人だ――。初恋の人の無実を証明すべく、葉山君が懸命に犯人探しに取り組む「中村コンプレックス」ほか、葉山君の小学生時代のエピソード「あの日の蜘蛛男」、探偵役を務める伊神先輩の卒業式の日の出来事を描く「卒業したらもういない」など、〈卒業式編〉は4編を収録。デビュー作『理由あって冬に出る』に続く、ライトでコミカルな学園ミステリ第2弾、前編。
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Posted by ブクログ
この本を読んで、なんだかいろいろ身につまされた感じ。何がというよりかは、全体に醸し出される雰囲気に。
こうした高校生・大学生が登場する小説をよく読むのは、灰色の高校生活だったことの代償行為なのかもしれないと常々感じるのだけど、なんとなく中二病的ななにかが働いている気もして、若干の痛々しさもなくはなく。
今回の作品は高校の卒業という、冬から春へ移ろうタイミング。その季節が持つ物悲しさ故だろう、「別れ」の話が多い。高校生の探偵ものという非日常な設定にも関わらず、高校時代の思い出のせいで、妙なリアリティがかぶさってくる。あぁもぞもぞする。
話としては一区切りがつくのか、卒業してしまった彼が今後どうなるのか。連作短編としての構成もかなりよかったので、次の展開が楽しみ。
Posted by ブクログ
4話ともにそれぞれ異なるテイストで楽しめる。いったんきれいに終わったかに見える第四話はこのまま終わりでよいのか? 後編で伊神さんの活躍はあるのか?2009年に出版された本なのでストリートビューが目新しいものとして紹介されている。10年以上たった今では逆にストリートビューで見れない道路の方が少なくて「見れなくて残念」なんて思うけれど、その当時は自分の見慣れた風景が(リアルタイムではないながらも)ネットで見れるなんて、と興奮した感覚を思い出した。
Posted by ブクログ
別の著者の本も読もうと思っていたが・・できなかった。まだまだ忙しくて、肩のこる本は読めない。そして、やはり期待通りの面白さだった。
今回は短編が4つ含まれている。前作の物語より時系列が前のものもあるが、卒業編とあるように、最後は卒業式の日の物語だった。「市立高校シリーズ」はたくさんあるのに、2冊目でメンバーが卒業したり進級したりするのは意外だと感じた。まだ先を読んでいないのでわからないが、卒業した伊神さんはこれからもちゃんと探偵をやってほしい・・お願いします・・
4つの短編のうち、最初のものは、正直なところこれを実際にできるものなのかな?と感じてしまった。2作目の「中村コンプレックス」が一番面白かったし、著者の力の入れようも特に感じた。
前作でも感じたが、自分は葉山くんに性格が似ているような気もする。苦労性で、面倒ごとに巻き込まれやすく、伊神さん的な人の助手的ポジションの立ち回りが多いことなど。だから本シリーズを好きになったのかもしれない。でも、自分には残念ながらミノのような親友はいない。それにしても前作の序盤と比べるとミノはとても頼りになる感じである。
Posted by ブクログ
短編集なんだけど前篇らしい。
今のところ後編とどう繋がるのかまだ分かりません。
いくつか気になった点が残ってるので、
それがどう回収されるか楽しみです。
Posted by ブクログ
正直,一回目読んでいたときは飛ばし飛ばしで,さらに途中で伊神さん退場?なんだかなあと読む気が失せていました。あらためて再読して,これがなかなか面白い。後に<新学期編>につづいている設定に驚く。
Posted by ブクログ
なんか露骨な複線をはりまくってるので後編に期待でした。
あまり推理させる気はないミステリだと思います。
そして、男性人はとことん振られ続けます笑
Posted by ブクログ
“なんだかよく分からないが、僕は「いいのさ」と言って、ふっ、と笑う。
「彼女がいい顔で笑った。見返りとしたゃ、充分だ」
ミノは僕を見て沈黙した。しばらく沈黙して、それから爆笑した。「はははははははははは。似合わねえ。ほんと似合わねえお前。面白え」
「笑うな。くそう」
ミノは「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」とひとしきり笑って、それから、ふっと真面目な顔になって呟いた。「……まあ、お前らしいわ」
ミノが僕の肩を勢いよく叩く。「泣くな友よ!お前にはまだ演劇部<ウチの部長がいる!」
「いるのか?」どうも信じ難い。”[P.158]
第三話は見事に騙された。
葉山くんがそんなことするか……?
とは思っていたけどまさか、ね。
視点が変わっても一人称が同じだとなかなか気付けない。
断章は後編が出る前にもう一度読んでおこうかなぁとかなんとか。
“伊神さんはもう用件は済ませたという顔で時計を見た。「そろそろ出発だ。じゃ、よろしく」それだけ言ってさっさと背中を向け、ゲートに並んでしまう。
ちょっと待った。ゲートを抜けようとする伊神さんに、僕は急いで言った。「伊神さん」
伊神さんが振り向く。列の後が詰まっている。僕は焦る。言うべきは何か。
「……お土産を」
伊神さんは露骨に面倒臭そうな顔をした。違う。そうではなくて。
「……卒業、おめでとうございます。ええと、それと……卒業しても遊びに来てください」
やっと言えた。
伊神さんは、すっと手を上げて、ゲートのむこうに消える。ずっしりと重くて暖かいコートを両手で抱えたまま、僕はその背中を見送った。”[P.251]
2013 03 04 再読