あらすじ
死んだあなたに「とりつくしま係」が問いかける。この世に未練はありませんか。あるなら、なにかモノになって戻ることができますよ、と。そうして母は息子のロージンバッグに、娘は母の補聴器に、夫は妻の日記になった……。すでに失われた人生がフラッシュバックのように現れる珠玉の短篇小説集。
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読み終わった後、大切な人に自分の想いを伝えたくなる…
切なくも、優しい気持ちになれること間違いなし! の10話から成るショートストーリー。
この世に未練を残したまま、生涯を終えた人の前に突然現れる『とりつくしま係』。
主人公たちは『とりつくしま係』との契約により、大切に想う人の近くで
なりたい“モノ”として存在し、もう1度だけこの世を体験することが出来るという。
愛する家族、憧れの先輩、お世話になった人達の元へ“モノ”として戻った主人公たちは、
残された人たちと再び時間を共有していく…
作者の一つ一つの言葉選びが絶妙で、“モノ”目線で見る世界も新鮮で良い。
また一話ごとに語り口が変わり、主人公から放たれる言葉や感情が心にスッと入って来ます。
タイトルだけではストーリーの想像が付きにくいですが、
目の前にある細やかな幸せと人を大事に想うことを再確認させてくれる素敵な一冊です。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
東直子さんによる文庫版あとがきより引用します。
P206~
前略
「とりつくしま」とは、命をなくした人がこの世に戻ってきて魂を宿すモノのことをそのように呼びならわすよう設定したのですが、「とりつくしま」を考えるということは、死んで間もない人のことを考える、ということになります。誰でもその身に潜ませている「死」を考えることでした。実際に書きはじめる前に、頭の中で、なんらかの未練を残して亡くなった人を想定し、さらにその人が生前一番大事に想っていた人のことを考えました。物になって大切な人に再会した死者たちが、どんなことを呼びかけたいと願うのかを。
後略
全十一話の連作短篇集なのですが、全話がとてもいい話ばかりで、どれがよかったかは選べないので前から順番に三篇挙げると
「ロージン」
ピッチャーの息子を見守るため、野球の試合で使うロージンになった母。
これはもう切なかったです。
「トリカラトプス」
夫のお気に入りのマグカップになった妻。
これはちょっと最後にスカッとするいい話でした。
「青いの」
いつも遊んでいた大好きなジャングルジムになった男の子。
優しい優しいお話で涙が出そうになりました。
全部の話がよくて、はずれは一話もありませんでした。全部説明したいくらいですが。
この本は明日、作者の東直子さんのオンラインの講座に出るために少し前から積んでいたのですが講座の前に拝読しておけて本当によかったです。
歌人としての東直子さんの歌集や詩集はほとんど拝読していましたが、小説は初読みでした。
歌人という個性を活かされた、どこの誰とも違う個性的な作風に思えました。
天は二物も三物も与えられるのですね。
講座に参加するのは昨年の穂村弘さんの対面講座以来で一年ぶりです。
明日の講座がとても楽しみです。
何だかドキドキ、ワクワクします。
Posted by ブクログ
死んでしまったら、「今日」が終わる。
本当にあっさりとした短編集なのに、しっかり辛くなったし、あたたかい気持ちにもなった。
特に「日記」「マッサージ」では感情移入しすぎて、涙が止まるまでの数分間は次に進めなかったほど。その次の「くちびる」はまさに中学生の青春で、ほっこりしつつ落差にバグった。笑
各編の最後の文が心に浮かんで、そこから死者の代わりに綴ったというあとがきを読み、東直子さんのことが大好きになった。
生きていく勇気をもらいました。
Posted by ブクログ
朗読劇で知ってから原作を読もうと購入。こんなにも原作が朗読通りだったとはと衝撃。作者が歌人なので必要な分だけそり落とされた言葉たち。でもまるで1人1人が語っている様な文体に心奪われました。短編でここまで書き分けられる人がいらっしゃるとは!東さんのご本、もっと沢山読みたい!!と魅力にとりつかれてます。
どのお話も好きだけれど
特に「名前」と「レンズ」はキラキラした希望の中で終わる感じが優しくあたたかい光が見えて好きでした。
逆に「青いの」と「ささやき」は辛かった。
私は何にとりつきたいかなと考えながら読み進めて、母の眼鏡かなという結論に。
そう考えてるうちに、「今」ときちんと向き合って惜しみなく生きようと思えました。
Posted by ブクログ
私が今死んだら、きっと、家のリビングにある、もうすぐ壊れそうな電子レンジに取り憑くと思う。
生きているからこそ言葉で伝えることができるんだなあと改めて実感。
p143
Posted by ブクログ
とりつくしま
どんな物語かと話を進めていくと、とても心温まる作品ばかりだった。
自分だったら何にとりつくかな?
物を大切にしよう等、いろんな視点で読み進めることができる作品。
Posted by ブクログ
『日記』『トリケラトプス』
『名札』『マッサージ』
が好きでした。
わたしだったら、なににとりつくだろう。
大切な人のそばにいられるモノ。
そこまでしてそばにいたい人たち。
そんな人が思いつくだけでも、今充分幸せなのだなあ。と思った。
とりつく、と言うけれど、
暗い感情はなく、じんわりとした温かさや救いを内包するような少し切ない読後感が残る。
あとがきで、作者の東さんは、どの短編も、まず全て最後の一言を思いついて、そこから着想を得て描いたと。
もっと東さんの著書を読みたくなった。
Posted by ブクログ
とりつくしまってどういうことだろう?から始まる読書体験。白檀が1番好きだった。ロージンもレンズもトリケラトプスも名前もお気に入り。
わたしがなにかをとりつくしまにするなら、何にするだろう。心があたたまり、自分を振り返る、少し切ない良い書でした。
Posted by ブクログ
死んでしまったあと、生命のないものに『とりついて』大切な人の近くにいて思い遺したことを見ているというお話。
11のお話です。
第一話の『ロジン』が切なくて、でも潔い感じがしました。
夫に思いを遺して、マグカップになるお話は…この先もずっと見ていかなきゃならないのはしんどいかなと思ったり笑
それぞれの大切なモノになるのは選択によっては、辛い思いもしそう。
私だったら何に『とりつこう』かなぁ。。。
でも、死んだらどこからでも見ていられると勝手に思っていたけど。。。
やっぱり死んだら見られないかぁ…。
その日が来るまで、一日一日を大切にしていこうとあらためて思った。
周りにいる人が愛おしく思える一冊でした。
Posted by ブクログ
読書会で紹介していただいて気になった本。死んだあと「とりつくしま係」によって無生物に取り憑くことができる。そのような設定もあってモノ=死者の視点から描かれている珍しい物語。解説でも書いていたが、視点を描いた絵画を知っていたこともあって、芸術的だなと感じながら読んだ。
Posted by ブクログ
あなたは何に「とりつき」ますか? 死んでしまったあなたに、とりつくしま係が問いかけます。そして妻は夫のマグカップに、弟子は先生の扇子に、なりました。切なくて、ほろ苦くて、じんわりする連作短篇集。
映画を観て再読。
Posted by ブクログ
死んだ後、何かに取り憑くことが
できるとしたら、
私は誰のそばの何になるだろう。
年代性別もバラバラの死者が
何かに取り憑いて世界を眺める短編集。
視点がまず斬新で、
主人公は無くなっているから
切なさはもちろんあるんだけど、
生きていた頃を想像できるし
1番会いたい人の近くにみんな取り憑くから
愛を感じて温かい気持ちになりました。
死後の世界は生きている以上知り得ないけれど、
こんな世界なら怖くないなぁと思ったし、
今年他界した祖母もどこかにいるのかなぁ
と思ったりしました。
Posted by ブクログ
死んだら何にとりつく?(無機物限定)という発想が見事。様々な人が物に取り憑いて世界を眺める短編集。自分なら何に取り憑く?を自ずと考えられます。
Posted by ブクログ
妹からコメント付きで勧められて読みました。
とてもあったかい気持ちになれる短編小説。
亡くなってからのことは誰もわからないけど、こう言う考えもあるのか!と私は嬉しかったです。
また、物を大切にすることの重要性を改めて感じました。
大切な人がどんな形であれそばにいてくれたら、、見守ってくれていたら、、
死に対するマイナスイメージを少しでも払拭してくれる、そんな作品でした。
Posted by ブクログ
気がついたら「とりつくしま係」に話しかけられている。モノになってもういちど、この世を体験できるらしい。
残してきて気になる人のモノになる。その視線から色々な体験ができる。もしもそうなったらいいのにという気持ちを味わえる短編集。
私は、白檀の扇子と日記になった物語が潔くてよかった。
ロージン、トリケラトプス、青いの、白檀、名前、ささやき、日記、マッサージ、くちびる、レンズ、番外編びわの樹の下の娘
Posted by ブクログ
亡くなった人の魂が指定した無機物にとりつき、この世に戻ることができる。ある人は母親の補聴器に、ある人は夫のマグカップに、ある人は公園のジャングルジムに。そして、自分がいなくなった後の大切な人の生活に触れる。気になることはあっても声に出すことはできず、もちろん行動することもできない。ただ、見て聞いているだけ。もう何もしてあげられないもどかしさもあり、見えなかった一面が見えることもあり、切なさや哀しみ、温かみが交錯する。
Posted by ブクログ
とりつくしま。残された家族を見守りたいが故に、縁のある物に移ることで進むストーリー。
自分の経験からは寿命を全うするよりも、圧倒的に突然死んでしまう方が多い。(それが寿命だと言われれば、何も言えんが。)
仮に今自分が亡くなり、とりつくしま係があったとして、何になろうと思うだろう?ふと残される側より、先立つ側にいるということを考えさせられる作品だった。
Posted by ブクログ
この世から亡くなり、何か物にとりつく事ができた短編集。
ロージンとして側にいる事にした母のお話しにはホロリときました。
全体的に切なくホロリとくるお話しでした。
Posted by ブクログ
死んでしまった人に『とりつくしま係』が尋ねる。
あなたは何になりたいですか?
野球のロージン、カップ、扇子、日記、カメラのレンズ、などなど
自分だったら、何になりたいだろうか。
ついつい考えてしまいました。
Posted by ブクログ
「日記」と「トリケラトプス」が良かった。自分なら何にとりつくか考えながら読んでいた。とりついた後、すぐ捨てられたり壊れたりしたらと思うとなかなか決まらない。
Posted by ブクログ
とりつくことができても現実世界に介入ができず、見ることしかできない。これってとりつくことができないことよりツラい気がする。それを思うと、ロージンを選んだ1人目の母親の方は、切ないけれどもすごく良い選択をしたなと思う。
Posted by ブクログ
本当にこんな世界があるといいなぁ、と思いつつ、本当にあったらどうしようとも思う、わがままな気持ちになりました。(いい意味で。)
自分なら何になるかずっと考えています。
Posted by ブクログ
死んでしまった後、魂の入っていないものに『とりつく』ことが出来るというお話。
短編集だったので、スラスラ読めました。
文章がとても美しかったです。
もし私だったら何にとりつくか。。。
魂の入っていないものにとりつく切なさで
何になりたいか決められない。
Posted by ブクログ
各話かなり短め。最初は短いな〜もうちょっと読みたいなあ〜と思ったけど、死んでしまった人がテーマになっているので、このぐらいの短さがちょうど良いのかも??
レンズが1番好きな話で、カメラの持ち主となったおじいさんの人柄が穏やかで好き。
Posted by ブクログ
とりつくしま……海で溺れても上陸する島がないこと。 頼りとしてすがる手掛かりがないこと。 相手を顧みる態度が見られないこと。(ウィクショナリー日本語版より)
死後のボーナスタイムに、現実に働きかける話かと思いきや違った。
存命の人のそばでなにができるわけでもなく、ただ物として死後を見るだけ。
つい退屈だなぁと思ってしまったが、みんな既に死んでしまっているのだから、生きている人間に”とりつくしまもない”のは当たり前だった。
死んだ人間が生者にすがっても、なにも起きることはない。
生者が死者にすがっても、頼りになることなんかない。死というものに隔てられて、互いに影響することなんかない。だってもう居ないから。でも、誰もがただそこにいる。
そこに気がついてから、急に読みやすくなった。