あらすじ
――これ以上、悪くなることもあると?
「なる可能性もあります。やはり、今回ので、いろいろなものが壊れてございますので……」
日がたつにつれ、新聞社やテレビ局の記者だけでない多様な人が「ジャーナリスト」として東電本店に集うようになり、東電を厳しく問いただした。新聞では決して報道されることのなかった「やりとり」の詳細を朝日新聞記者が50日にわたり克明に取材・記録。いままさに、東電の「汚染」と「隠蔽」体質が浮き彫りになる。
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Posted by ブクログ
僕は記者会見の映像を見ていないので詳しいことはなんとも言えないんですけれど、一つ言えるのはあの場で言ったことを家や仕事や故郷を失った福島県の人の目の前で同じことを繰り返せますか?ということです。
この本が朝日新聞の記者が東京電力のすべての会見現場に立会い、東電側の社員と自分を含め貴社との一ヶ月のやり取りをつぶさに記録したものでございます。何の本からは忘れましたが
「東電の人間は官僚以上に官僚的だ」
という言葉が、この本を読んでなるほどなと納得するにいたりました。
僕は朝日新聞を読まないので、いま、震災から一ヶ月間の縮刷版を読んで事件および震災の足取りをたどっていますけれど、震災および原発事故の一ヶ月間とここに記録させている一ヶ月間の東電側と記者とのやり取りを照合して読んでいくと、彼らの持つ「体質」というのが浮き彫りにされてきて、なんともいえない気持ちになりました。一連のことはおそらく私よりも皆様のほうがよくご存知かと思います。僕はほとんどテレビを見ていませんので。この本に書かれているやり取りはおそらく映像として流れたであろうと推察されます。
動画サイトで見る、という選択肢もないではありませんでしたが、ここに活字で記されてあることを映像で確認するのは非常に苦痛を伴う作業でしたので。申し訳ありませんが、断念させていただきました。この本を読むと現場の混乱と追及する記者。そしていかに責任を逃れようとする東電側の答弁がカオスとなって、読んでいる人間に迫ってきます。今回の震災および原発事故が日本人の美徳と醜悪な部分を同時に晒したのだということを実感するにはいい本だと思いますよ。
Posted by ブクログ
本書は、朝日新聞報道局に所属する記者が東京電力の原発事故の取材をリアルタイムでネットで配信した内容を中心に加筆したものであるが、その2011年3月11日から4月13日の記録には驚愕するものである。その迫真迫る危機の様相と迫力ある内容は、当時の新聞報道を大きくしのぐすごいものだ。
福島原発における危機が、まるでタワーリングインフェルノのようなパニック映画を大きく上回る想像を絶した危機であったことがよくわかる。そして、この危機が決して一過性のものではなく、周辺住民の避難、放射性物質の除染、廃炉などまだまだ続くことを考えると、危機はまだ終わっていないことを痛感させるものである。
本書を読んで感じるのは、人間の不完全性である。原発所長、東電本店の幹部、政府首脳のドタバタぶりは、このような人間達に原子力発電と言う不完全な巨大技術の管理を任せられるのかという思いを痛感するものである。犠牲をかえりみずに奮闘する現場の所員達と比べて、幹部達のだらしなさが浮き彫りになっている。本書を読んで、「ほんとうに危機のコントロールができているのか」という思いが浮かび上がってくる。
危機のさなかに体調を崩して途中入院した東電社長のだらしなさをみると、本書の「自分の体調管理もできないような人間に、暴走する原発の管理など任せられるだろうか?」との疑問は説得力がある。
本書は、優れたドキュメンタリーだと思う。原子力発電の是非もあるだろうが、それ以前に東電社長をはじめとした人間達に、巨大科学の運営と舵取りを任せることは危なすぎると痛感させる良書であると思った。