【感想・ネタバレ】丸太町ルヴォワールのレビュー

あらすじ

祖父殺しの嫌疑をかけられた御曹司、城坂論語(しろさかろんご)。彼は事件当日、屋敷にルージュと名乗る謎の女がいたと証言するが、その痕跡はすべて消え失せていた。そして開かれたのが古(いにしえ)より京都で行われてきた私的裁判、双龍会(そうりゅうえ)。艶やかな衣装と滑らかな答弁が、論語の真の目的と彼女の正体を徐々に浮かび上がらせていく。(講談社文庫)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

2016/3/21 メトロ書店御影クラッセ店にて購入。
2017/5/2〜5/9

ずっと気になっていたルヴォワールシリーズ、ようやく順番が回って来た。私的裁判、双龍会を舞台に繰り広げられる丁々発止の会話。登場人物も魅力的でとても気に入った。続編を早く読みたいところだか、いつになるやら。

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2017年05月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

〇 総合評価  ★★★★☆
〇 サプライズ ★★★☆☆
〇 熱中度   ★★★☆☆
〇 インパクト ★★★☆☆
〇 キャラクター★★★★★
〇 読後感   ★★★★☆
〇 希少価値  ★☆☆☆☆

 「双龍会」という私的な裁判を舞台とした法廷モノ。更に城坂論語のルージュへの思いを描いたボーイミーツガールものという側面がある。大きな特徴は叙述トリック。以下のような叙述トリックがある。
○ 第1章で、「城坂論語」が女性ではないかとルージュが疑う。城坂論語は男性だが、後の方で女性を男性と誤信させる叙述トリックを使っているが、それを見抜きにくくするためのダミーの叙述トリックといえる。
○ 瓶賀流は男性のように描かれているが、実際は女性である。
○ 龍樹大和が龍樹落花の弟のように描かれているが、実際は龍樹落花の妹である龍樹撫子が紛争に関わっている姿。
 特に瓶賀流が女性だったところは、「ルージュ」になり得る人物として双龍会で証言をするという場面で明らかになっており、結構驚いた。といっても驚愕というほどではなく、「ん、ああ、こいつ女性か。叙述トリックか」という感じだった。龍樹大和が実は龍樹撫子の扮装であることが分かるのは最終章。これはかなり驚ける。双龍会の途中の「撫子」と「大和」の書き分けに十分な差異が感じられない部分がある。とはいえ、城坂論語が「ルージュ」の手に触れたときにそうだと分かったという部分につながっており、いい仕掛けだと思う。
 城坂論語による「ルージュ」の正体探しという視点から見ると、姫野葵(あおさん)がルージュという真相が最も面白い。これをダミーの真相にして、真相は龍樹撫子=ルージュというものに落ち着く。登場人物が少なく、龍樹撫子=ルージュという真相にそこまで驚きがなかったのは残念。メインの叙述トリックではないが、龍樹大和が実は龍樹撫子であるという叙述トリックが最も驚きだった。
 この作品の問題は、双龍会の位置付けがいまいちはっきりしない点。いったいどうなれば勝ちなのかが分かりにくい。青龍側は最初、裁判官(火帝)の孫である香為がルージュだった可能性を示し、城坂論語が犯人ではない可能性を示すことで双龍会の勝ちを狙ったようだが、そのような勝ち方もあるのか。そもそも、黄龍側にとって、城坂論語が殺人をした可能性を示すだけでなく立証ができたのか?最終的には偽証を明らかにして龍師を退廷させ、龍師がいないということで勝ちとなるような展開になるが、おそらくこれは例外的な勝ち。どういう形になればどちらの勝ちなのかがはっきり示されていないため、双龍会を舞台とした知的ゲームという視点ではあまり面白く読めない。
 龍樹落花が、なぜ城坂論語を助けようとしていたのかが腑に落ちない。結果的に、青龍師サイドの勝ちとなるが、これは龍樹落花が望んでいた結末であるかのような描写がある。しかし、なぜ龍樹側がこれを望んでいたのか。落花=ルージュで、落花が論語を愛していたというのなら分かるが、それでも龍樹家を大切にしている落花がそんなことを望むか。撫子が論語を愛しているから論語を守るためにこのような展開を望んでいたということか。龍樹家のことを心から大切にしている落花の性格から見て、そこまで腑に落ちない。
 登場人物はいずれも魅力的。ひと昔前の漫画のようなキャラクターで、非常に愛着がわく。キャラクターの魅力と作品全体の雰囲気は良いが、知的ゲームとしてはそこまで面白みがない。作者のサービス精神が旺盛であると感じるが、やや盛り込み過ぎだとも思う。叙述トリックの連続。最終章で撫子が落花のふりをしていた点は、キャラクター小説としては面白い終わり方なのだが、ミステリとしては「また?」と感じてしまった。
 キャラクターが非常に好みで、作品全体の雰囲気が好きなのでやや甘めの評価で★4。
● 第1章 朱雀の人よ
 ルージュという女性が、城坂論語が寝ている部屋に忍び込む。城坂が起きてルージュの手を握り、城坂とルージュの間で丁々発止のやり取りがされる。そのやり取りが描かれる。城坂が女性ではないかという疑惑が出るがすぐに解消。これはこの後の筋書きのミスディレクションになっている。城坂がこの時点では目が見えない状態であったことが隠されている。最後の最後で、侵入者は最初から城坂の目が見えなかったことを知っていた人物であることが分かる。最後はルージュが睡眠薬で城坂を眠らせる。その後、城坂論語の祖父である城坂慈恩が殺害される。城坂は、携帯電話で慈恩のペースメーカーを狂わせる方法で殺人をした疑いが掛かるが、結局、事件は病死として処理される。
 なお、物語の位置付けとしては、この第1章そのものが、双龍会に向けて黄龍師(龍樹)側が盗聴して作成した逐語録という位置付け。
● 第2章 その絆に用がある
 「双龍会」の前日譚。御堂達也による捜査の様子が描かれる。城坂論語は医学部に進学しないという条件で、城坂慈恩は自然死として処理されていたが、城坂論語が医学部に進学したことから、城坂論語を御贖(被告人)とする私的な裁判、双龍会が開かれる。主要な登場人物が紹介される。
● 第3章 さらば甘き眠り
 双龍会。大和による全体の流れの説明の後、近藤雅己の尋問。証拠は甲として携帯電話、乙として固定電話、丙として通信記録が提出される。青龍側と黄龍側の応酬。苦戦の青龍側は、X嬢という人物が屋敷にいたと主張。湯島茂の尋問。芳野由乃の尋問。それから城坂論語が隠し持っていた湯呑を証拠として提出される。火帝である荻島時代は荻島香為がX嬢である可能性を恐れる。龍樹大和の「X嬢がどのようにしてマグカップに睡眠薬を入れたのか」という質問に、瓶賀流は明確な答えを言えない。さらに、龍樹大和は湯呑のすり替えまで行い、青龍師サイドは湯呑を証拠から撤回する。休廷後、青龍師側は証拠を偽造。口紅がついたハンカチを証拠として提出する。これに対し、黄龍師サイドは龍樹落花を証人とし、X嬢が龍樹落花であると主張する。落花はルージュと龍樹(りゅうじゅ)の語呂、「ブラン」というあだ名の存在などからルージュ=落花を認めさせる。そして、恵心を証人とし、龍樹落花のアリバイを認めさせる。証拠の偽造がバレそうになる直前に、御堂達也は瓶賀流がルージュであるとして証人に立たせる。ここで、読者に瓶賀流が女性であることが明かされる。瓶賀流と龍樹落花のどちらがルージュか。城坂論語の質問などにより龍樹落花がルージュだと信じられそうになる。そのとき、御堂達也は黄龍師側が盗聴をしていたと主張。瞬間記憶能力を使い、由乃の姓が旧姓の有村ではなく芳野となっていたことなどから、盗聴されていた事実を証明する。共犯者は黛。盗聴されていた文言の中に嘘があった。部屋の前の床板は歪んでいなかった。このことでルージュが龍樹落花ではなかったことを暴く。これにより龍樹側は退廷。黄龍師がいなくなる。青龍師側が勝ち…となるところで、城坂論語が、黄龍師になろうと言い出す。論語はポットに睡眠薬が入っていたと推理し、ルージュはあおさんだったと主張する。落花は姫名葵から受け取っていたという手紙を出す。双龍会はルージュ=姫名葵。姫名葵が城坂慈恩殺しの犯人だという結論で物語が終わる。
● 終章 昏くなるまで待って
 真相。城坂慈恩が死んだのは病死。自然死だった。姫名葵がルージュという真相は、双龍会をつつがなく終わらせるための嘘。龍樹落花が思い描いていたシナリオを城坂論語がうまく利用した。
 龍樹大和が龍樹撫子の姿であったことが読者に明かされる。ルージュの正体は龍樹撫子だったことが分かる。
 最後は、龍樹落花のふりをした龍樹撫子と城坂論語の二人がタクシーに乗る。城坂論語は龍樹撫子に改めて告白。「貴女のことを愛しているんです。」
● 双龍会
 問題の中心となった人物を御贖(被告人)として立て、青龍師(検事)と黄龍師(弁護人)が御贖を挟んで戦い火帝(裁判官)の裁配を仰ぐという私的な裁判。
● 登場人物
● 城坂論語
 祖父である城坂慈恩殺しの容疑で、双龍会の御贖(被告人)となる。全ては初恋の人物である「ルージュ」に出会うため。
● 御堂達也
 越天学園の懲罰室に入り、探偵集団、群生累集の中心人物だった。師匠である瓶賀流が、城坂論語を御贖(被告人)とする双龍会の青龍師(弁護人)になることから、そのための捜査を行う。瞬間記憶能力の持ち主。
● 瓶賀流
 城坂論語を御贖(被告人)とする双龍会の青龍師(弁護人)となる。女性だが男性だと誤認させるような叙述トリックが仕込まれている。
● 龍樹落花
 号を紅龍弁天という特級龍師。瓶賀流とは京都大学の同じゼミだった。落ちた花を元踊りに戻すような見事なイカサマ=落下戻しを使う。
● 龍樹大和
 暗殺剣という技を持つ龍師。暗殺剣は双龍会の中で論拠を潰す技。実は、龍樹落花がプロデュースした撫子の龍師としての姿。
● 龍樹撫子
 龍樹落花の妹。龍樹大和の姿で双龍会に挑む。ルージュの正体。
● 龍樹八俣
 龍樹落花の弟。シスコン。大和が弟だと読者に誤信させるために「ヤマちゃん」と呼ばれる。
● 城坂慈恩
 城坂論語の祖父。城坂論語の死が病死か殺人か。殺人の場合は犯人が城坂論語なのか。その疑惑を裁くために双龍会が開かれる。
● 城坂影彰
 城坂慈恩の子ども(兄)で、城坂論語の父。
● 城坂純紀
 城坂慈恩の子ども(弟)。
● 楠木
 城坂慈恩殺害に使ったと思われる携帯電話を発見した城坂家の使用人。双龍会の当日には福祉の研究のために北欧に出張
● 湯島茂
 城坂家の秘書
● 芳野由乃(旧姓有村)
 城坂家のお手伝い。目の見えない城坂論語の世話をしていた。
● 姫名葵(あおさん)
 城坂家のお手伝い、70を過ぎた老人
● 黛
 速記から英会話までこなせるという理由で引き抜かれ城坂家で雇われている人物。龍樹サイドの盗聴に協力する。
● 恵心祐次
 双龍神社の宮司。瞬間記憶能力の持ち主。龍樹落花のアリバイを立証する。
● 荻島時代
 京都の保守派の議員だった人物。龍樹家のパトロン。御贖の双龍会で火帝(裁判官)を務める。
● 荻島香為
 荻島時代の孫娘。城坂論語の元許嫁。声優。双龍会で青龍側は荻島香為をルージュにしたてあげようとする。
● 近藤雅己
 京都大学の医学部教授。心肺停止の状態で病院に運び込まれた城坂慈恩を病死と診察した。
● 細かい仕掛け
● 「双龍会追ってたり?」のアナグラム(アナグラムを穴熊というヒントを使って伝える。)
souryuuue ottetari → toutyou sareteiru(盗聴されている)
● 龍樹落花が弟を「ヤマちゃん」と呼び掛ける。

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2019年12月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

とにかく一番感じたのは、厨二病という言葉そのままの小説。
キャラクターや場面設定といい、私設裁判といい、言葉づかいから何から何まで、現実を自分の理想に都合よく上塗りしたい厨二連中のたわごとワールド。しかも結末に至っては…。

それでいて、謎解き部分は脆弱極まりなく、ミステリー音痴の俺でさえ「は?これアリなん?」みたいな伏線回収が散見されて、バカミスとしてなら合格だろうけど、これを本格ミステリーとするのはどうかと思う。

と、ここまで貶しておいて悪いんだが、なんだか妙に引きこまれてしまったのは事実。呑み過ぎて深夜に帰宅した部屋で、水呑みがてらふと付けたテレビに映った深夜アニメについつい見入ってしまった…みたいなハマり方。人に語れる魅力はないが、惰性でダラける時のお供にベストマッチ。これはこれで褒め言葉なのである。

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2018年03月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

デビュー作だからか、そこはかとない野心と作者の若々しさを感じる。
ちょっと面妖なファンタジーっぽい邂逅シーンに始まって(この部分はとても好きだった)、厨二臭漂う古典部的ノリになり、そのうち逆転裁判が始まったと思ったら、どんでん返しの応酬、なんなんだよまだどんでん返るのかよ!って突っ込み入れてたら、結局ラブストーリーだった、みたいな話。

読む前にあらすじを確認した時に、京都の伝統「双龍会」に関わるって時点で何故か厳かでシリアスなストーリーを想像してしまい、ギャップに苦しんだ。
群生累集とかちょっと痛かった。古典部ほど拒否反応は出なかったけど。

解くべきネタは2つ、慈恩の死の真相と、ルージュの正体。
慈恩の死は至極真っ当な結論で納得できたけど、二転三転したルージュの正体の方は、まさかの葵説が真実ならどうしようかと思った。老女の肌質は流石に触れば分かるだろ…。

全体としては推理合戦モノってことでいいんだろう。論理的なら真偽は問わないってところが『その可能性はすでに考えた』みたいだった(本作品の方が成立が早いけど)。
厨二っぽいのに本歌取りに溢れてて頭でっかちな感じなのは、京大推理研出身者の一傾向と言っていいのだろうか。
伏線の張り方があまり達者でないので、回収時の「そうだったのか!」って衝撃がやや力不足だった。
特に、流の女子カミングアウトは、あまり効果的でなかったような。

登場人物が天才ばかりで、流の凡人的感情に激しく同意。
京大生って世界をこんな風に見てるのかな…
でも、読む側だって天才ばかりではないから、もう少し親切に説明した方がいいと思う。

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2018年06月02日

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