あらすじ
英国では奇妙なことに幽霊が居着いている物件ほど高く評価される傾向にある。殺人や凶事が起きた建物を巡る趣味もあり、幽霊は現在でも英国人の親しき隣人である――夫を裏切った末悲惨な最期を遂げた若妻の亡霊の出没する邸宅、館主の宴を訪れた黒衣の婦人の呪いが破滅を招くゴシック譚、田舎の農場屋敷に雇われた家庭教師が耳にした一族の愛憎劇に由来する幽霊騒動など、多彩な13篇を厳選し、収録する。ヴィクトリア朝の精華たる美しくも恐ろしいホーンテッド・マンション・ストーリーをご堪能あれ。/【目次】●英米・女流「幽霊屋敷」競作 「幽霊屋敷」エマ・ホワイトヘッド/「幽霊屋敷」マーガレット・ヴァーン/●ふたつの「開いた扉」競作 「開いた扉」シャーロット・リデル/「開いた扉」マーガレット・オリファント/●幽霊談義小説競作 「ブレイクスリー屋敷の幽霊談議」ウィリアム・マッドフォード/「奇談の屋敷」アンドルー・ラング/●J・E・プレストン・マドックの二屋敷 「バロカン屋敷の幽霊」J・E・プレストン・マドック/「ライスリップ僧院屋敷(アビー)の幽霊」J・E・プレストン・マドック/●応報と理不尽 「パディントン領主屋敷(マナーハウス)の幽霊」チャールズ・オリア/「ヨークシャーの幽霊屋敷」ダドリー・コステロ/「農場屋敷(グレインジ)の幽霊」フランシス・ブラウン/●異色競作 無名作家と巨匠 「岩礁の幽霊灯台」チャールズ・F・F・ウッズ/「ゴアズソープ屋敷の幽霊選び」アーサー・コナン・ドイル/編者あとがき――幽(かそ)けき扉、霊への階(きざはし)
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Posted by ブクログ
やはり古典的怪談がいい。
読んでいてしんみり幸せな気分になる英国古典的怪談。
「開いた扉」という邦題の話がふたつ載っているが、うちひとつは「廃屋の霊魂」の題で別の短編集で読んだことある。ネズの茂みが扉のどちら側にあるか、なんてもころが記憶に残っている。
灯台の話は予想以上に血なまぐさい話だったのでちょっと辟易かな。
でも全体的に雰囲気が良い。
表紙の絵も良い趣味だ。
Posted by ブクログ
英国ヴィクトリア朝時代の幽霊屋敷譚の佳作13編を紹介する。
●英/米・女流「幽霊屋敷」競作
幽霊屋敷 エマ・ホワイトヘッド
・・・亡き愛しい人の霊は彼を隣の幽霊屋敷に導く。
幽霊屋敷 マーガレット・ヴァーン
・・・閉ざされた部屋で聞こえた亡霊の声?それは私の?
●ふたつの「開いた扉」競作
開いた扉 シャーロット・リデル
・・・ラドロー屋敷の開かれた扉。潜むのはミステリー。
開いた扉 マーガレット・オリファント
・・・病の息子を救うため、廃墟の扉口での声を探る。
●幽霊談議小説競作
ブレイクスリー屋敷の幽霊談議ウィリアム・マッドフォード
・・・幽霊からの依頼。呪われた地の女霊の話。
奇談の屋敷 アンドルー・ラング
・・・書斎の霊。円塔での死。見えない気配。霊柩馬車。
●J・E・プレストン・マドックの二屋敷
バロカン屋敷の幽霊 J・E・プレストン・マドック
・・・その屋敷の幽霊は死を告げる。誰に?誰の?
ライスリップ僧院屋敷の幽霊 J・E・プレストン・マドック
・・・死体は隠せても、その霊までは隠せない。
●応報と理不尽
パディントン領主屋敷の幽霊 チャールズ・オリア
・・・かくのごとく廃屋となったのは、主の罪と罰。
ヨークシャーの幽霊屋敷 ダドリー・コステロ
・・・不可解な死のあった屋敷に響く音。大音声の恐怖。
農場屋敷の幽霊 フランシス・ブラウン
・・・あの女があそこにいる。笑い声は凶兆への導き。
●異色競作/無名作家と巨匠
岩礁の幽霊灯台 チャールズ・F・F・ウッズ
・・・閉ざされた灯台での怪異は過去の事件の光景。
ゴアズソープ屋敷の幽霊選び アーサー・コナン・ドイル
・・・ここには幽霊がいない。幽霊が欲しい!
ユーモアと皮肉で彩られた話の顛末は?
編者あとがき――幽けき扉、霊への階
時は英国ヴィクトリア朝時代。主役は幽霊屋敷。
古式ゆかしい屋敷の描写が重厚な作品が並ぶ。
それらと恐怖への誘いの語りが濃密だが、
なかなかの佳作がある一方、
作品によっては筋立てや人物設定の甘さがあるものも。
それでも、この時代の恐怖小説の一端が味わえました。