あらすじ
ユダヤ人初、収容所からの逃亡に成功。アウシュヴィッツ・レポート作成者の数奇な人生
ナチスによる殺戮を今すぐ伝える、それがユダヤ人を救う唯一の方法だ――19歳のヴァルター・ローゼンベルクは危険を冒して強制収容所から脱出し、瀕死の状態のなか「死の工場」の実態を暴いた。驚異的な記憶力を持つローゼンベルクの証言によって、詳細な報告書が作成された。まもなく報告書は世界中に配信されてユダヤ人解放へとつながり、多くの命を救った。歴史を動かし、自身も歴史に翻弄された男の功績と生涯を明らかにする。
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Posted by ブクログ
アウシュビッツから脱出したユダヤ人、ナチスのユダヤ人ホロコーストの事実を何としても外のユダヤ人に伝え、さらなる殺戮を止めようと脱出。
脱出後に詳細な収容所の実態をレポートにまとめ、宗教関係者や政治家にそのレポートを広めようと努力するも、その真実を信じなかったり、中にはナチスに取引や加担した者に握りつぶされたりし、脱出後もユダヤ人の移送は止まらず。
同レポートの前にもホロコーストの実態は宗教界や連合国側にも漏れ伝わっていたこと、ドイツに占領された国の政府がホロコーストに加担したことに驚く。
同作品の主人公のその後の人生も収容所の影とその偏執的な性格も影響し、離婚や色々な人との確執、衝突を繰り返し、共産国から脱出し、イスラエル、イギリス、カナダと身の置き場を替えて行く。
ホロコースト歴史家の言葉「情報は信じた時だけ知識になり、行動につながる」や「主人公は脱出の達人であるが、自分が経験した恐怖からは自由になれなかった」と最後の段にあるが、主人公がもがいたホロコースト、ナチスとの戦いの事実にただただ圧倒された。
また、人種や宗教などの違いから、自分達以外のグループを排斥する歴史を何度となく繰り返す人間の愚かしさを痛感する。
Posted by ブクログ
ヴァルター・ローゼンベルク、スロバキア生まれのユダヤ人。
彼がアウシュビッツから脱出を企て、隠れているシーンから始まる。
ナチの非道の本は何冊も読んでいるけど、脱出した人の目線で綴られたものは初めてで、読みごとに引き込まれて行った。
ヴァルターは、たくさんの非道に鍵をかけて、冷静を保ちながら脱出の機会を窺ってきた。
脱出してもたくさんの迷いと戦い、巡り合わせなどもあって、ナチの非道を託すべきひとに伝えることができる。
通常ここまでだが、この先があるのがこの本の特徴だろう。
ヴァルターはルドルフとなって、結婚したが離婚してアウシュビッツで身についた生活スタイルや思考と闘いながら生きている様が映し出される。
Posted by ブクログ
本書は戦争時の非人間的な殺戮と、それを世界に伝えるまでが描かれている。その内実は細かく描写されているが、テンポがよく戦争を題材にした冒険小説でも読んでいるかのよう。ただしその裏では救いを求める人々の姿が見え隠れする。
これだけの目にあった人間たちが作った国が今、世界のどこかであのチョビ髭と同じ事を繰り返していると思うととても不思議な気持ちになる。
「俺は酷い目にあった。だからお前も酷い目にあえ」
これを地で行っているようにしか見えないのだ。