あらすじ
3.11で我々に突きつけられたのは、文明の限界である。人間がテクノロジーによって自然を飼いならし、開拓し続けることには限界があり、終わりなき成長は夢でしかないと露呈した。早晩、世界が直面するであろう文明の壁に真っ先にぶつかった日本。国家と資本主義の構造を原理的に問い直してきた哲学者と、リスクと社会の相互作用を論じてきた科学史家が、天災・テクノロジー・エネルギー・経済成長の関係を人類史的に読解しながら、日本が描くべき新しい時代へのヴィジョンを提示する。【目次】はじめに 菅野稔人/第一章 天災が日本人をつくってきた/第二章 テクノロジー・権力・リスク/第三章 テクノロジーはどこへ行くのか/第四章 エネルギーと経済のダイナミズム/第五章 国力のパラダイム・シフト/おわりに 神里達博
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Posted by ブクログ
自然環境やエネルギーの観点から社会や文明の成立を考えることが主要テーマとなっています。内容を少し挙げると、、、
・日本人は地震や火山噴火といった大災害が所与の条件である場所で暮らしており、天災が時の権力や社会体制を破壊或いは卑小化してきたという側面がある(日本の中央政府は古来意外に弱い)。
・天災と付き合ううちに、人間が作ってきたものは必ず壊れるという意識が醸成されてきたとも考えられ、これが「無責任の体系」(責任の所在があいまい、問題になりにくい)を形成してきたのではないかと推論。
・人類にとって定住による農耕開始が人類史における最大の革命(「農耕⇒定住」ではなく「定住⇒農耕」の順で、実は当初の農耕には収穫も少なくあまりメリットがない)。
・農耕には”麻薬”の側面があり、一旦始めると、「人口増加⇒食扶持増えて増産の必要⇒人口増加⇒・・・」のスパイラルに。また定住化することで疫病リスクも当然増加。人類の平均寿命は農耕開始直後に最低となっているという研究あり。
・農耕はサステナブルとは言い難い。
・当たり前と思われている経済成長は実は新しい現象であり、資本主義の成立とともにあったわけではなく、例外的な現象と捉えるべき。
・経済成長をもたらしたものは”化石燃料によるエネルギー革命”。一方で、化石燃料の持つポテンシャルを使い果たしたところに先進国は位置している。
、、、など。
個人的に、農耕を始めたことが人類繁栄の礎と漠然と思っていたので、農耕部分の記載は今まで見えていなかった要素が垣間見れてとても興味深かった。また、経済成長を前提とした社会制度は見直されるべきという点には同感。
エネルギー、空間革命とヘゲモニーや、治水や灌漑といった土木工事が権力ひいては国家を形成するといった萱野氏の持論も絡まってきて非常におもしろい、かつ対談方式なので読みやすい1冊となっています。