あらすじ
ペドロ・パラモという名の,顔も知らぬ父親を探して「おれ」はコマラに辿りつく.しかしそこは,ひそかなささめきに包まれた死者ばかりの町だった…….生者と死者が混交し,現在と過去が交錯する前衛的な手法によって紛れもないメキシコの現実を描き出し,ラテンアメリカ文学ブームの先駆けとなった古典的名作.(解説 杉山 晃)※この電子書籍は「固定レイアウト型」で作成されており,タブレットなど大きなディスプレイを備えた端末で読むことに適しています.また,文字だけを拡大すること,文字列のハイライト,検索,辞書の参照,引用などの機能は使用できません.
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Posted by ブクログ
ささ‐めき【私=語】
ささめくこと。ひそひそ話。ささやき。また、男女のむつごと。
「貴妃の―、再び唐帝の思ひにかへる」〈海道記〉
初めてこんな言葉を知ったが、これほど的確にこの小説を表す一言はない。
ささやく。ひそめく。
まずは翻訳の文体の素晴らしさ、語のセレクトの素晴らしさ。
少ない文字数から滾々と湧く抒情。
次に構成のしかけ。
ただシャッフルしているのではない、ひとつの言説が連想を呼び過去を掘り起し広がり深くなる。
最後に語られる内容。
極悪な奴なのにスサナへの思いが、たまらなく切ない。
すべてを手に入れようとしてそれだけ手に入らず。
これだけの男の行き詰まりは街の行き詰まりを呼び廃墟へ。
cf 中上の浜村龍造
Posted by ブクログ
奥深い、底知れぬ物語。
死んだ男をめぐる噂話が、死んだ人間たちの間で語られ、死んだペドロ・パラモの人物像がうすぼんやりと形作られていく。伝え聞きの集合体として物語が建設されており、それらを細胞に、町の盛衰が語られる。鮮やかな小説。
ガルシア=マルケスに「百年の孤独」を書かせた小説という、ある意味で究極の評価を得ているようだが、そういう文学史的注釈を抜きにして面白い。