あらすじ
昭和100年、戦後80年記念エッセイ
昭和19年生まれの著者は、人生のほぼすべてを戦後と共に生きてきた。それはまるで、奇跡のように平和な時代。家業が没落したのちも気丈な母、しおれてしまった父、そんな父に反発する兄、苦労して成功した友人、仕事を諦めた妻、バブルを謳歌した仲間たちとの思い出、忘れられないあの人の記憶。平成・令和と時は流れる。いつの時代も人は懸命に生きてきた。共に生き、暮らし、そして風になっていった人々に送る31篇の人間賛歌。
【目次】
はじめに
1章 名古屋・東京・千葉
二度の大地震/サマータイム/長崎の鐘/転校生/モナミの思い出/闇市/兄の進学/被爆した船員/兄の手紙/一九六〇年安保闘争/千葉駅前栄町/東京オリンピックの空/沖縄への旅/羽田闘争/一九六九年/革新都政/デモに行きませんか/妻の中学校/「本の雑誌」のこと/目黒孝二と椎名誠/独立/彼女の名はノエル
2章 満洲
満洲に行ってみる/北京の公園にて/孔乙己酒楼と酒/満洲への第一歩/世界でもっとも美しい街/大草原の大きな要塞/満蒙開拓の旅/高原列車の旅/景星県の小さな村
あとがき
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
椎名誠氏のエッセイの挿絵で知られる沢野ひとし氏の半世紀です。
椎名作品では、おバカキャラとして描かれていますが、当たり前ですがそんなことは全くありません。
あのヘタうまの絵も七転八倒の末に作り上げたものであるし、この本の内容も実に味わい深いです。
何よりこの本は、単なる昭和回顧録でもなく、椎名氏とのドタバタ劇でもなく、自分のルーツとも言える旧満洲国の開拓団の歴史を追うことが、本書の中心となっています。
現代から見ても信じられないような奥地にまで開拓団が、日本国の政策によって送り込まれている理由は、国境を接する当時のソ連に対する防波堤の意味もある「人間の盾」にされていたのでは?
という考察は、あながちあり得なくもないと納得してしまいました。
追憶するだけではない、昭和の裏側も知ることができる一冊です。
Posted by ブクログ
戦後10年ほど経て生まれた自分。その時代の生の生活を庶民の目線で書いてある本書は、新鮮。政治的流れを扱う著書が多い中で、生活の流れを追う本書は、面白い。幼少期は周囲の空間が全てだったから。
Posted by ブクログ
沢野ひとし氏の文章は初めて読んだ
椎名誠氏の哀愁の町シリーズで結構飄々としたモテモテキャラとして描写されていたのであまり良い印象は無かったのだが意外とよかったな
ヤッてない若い女性に個人事務所の庇を貸して母屋を取られるとことか(笑)
個人的戦後史って感じでワシの知らない時代の風俗が知れて興味深い
外国語表記でサマータイムを当時は「サンマータイム」と表記したのくだりはなるほどとなった
鈴木みそ氏の漫画でニューサマーオレンジを作ってるおばあちゃんが商品に「ニューサンマー」と書くってのがあって笑うとこなんだけどあれはこういうバックボーンがあったのか、なるほどぉ
昭和五十年代までTシャツはテーシャツって表記してたもんなぁ
とまあ本筋とは関係なさそうなとこで感心してたよ
イラストは好き嫌いが分かれる所かな ワシはあまり好きではない
Posted by ブクログ
戦後の昭和のエッセイ。
終戦から高度成長期の街の様子等が興味深かった。
全ての頁にイラストが描かれた絵日記になっていて読みやすく、面白かった。
Posted by ブクログ
ちょっと中国の話に寄せすぎたな。それがなければ⭐️4.5くらいはあげられた。でも、本人が書きたいんだもんな、それで良いと思う。沢野ひとしも分かって書いてると思う。そしてそんな沢野ひとしが好きなんだよ、僕は。
Posted by ブクログ
ほのぼのとした挿し絵楽しみながら、昭和に想い馳せる。ただ、かなり偏った昭和。個人史だから仕方ないか。先日観た「映像のバタフライエフェクト・昭和百年・高度成長やがて悲しき奇跡かな」と映像被り、いっそう、あれこれが天然色で瞼に浮かぶ。
Posted by ブクログ
団塊の世代のちょっと前の世代の沢野さん。なかなか、激動の時代を過ごされている。学生運動は、私は経験ないものなぁ。
優秀で、可愛がってくれたお兄さんの末路が、ちょっと悲しい。
椎名誠さん、沢野さん、この世代の方の若い時は、今よりもずっととんがっていて、活気があって、元気だったなあと羨ましく思う。
Posted by ブクログ
沢野氏と沢野家の戦後史のような一冊。椎名さんの本を飾る朴訥としたイラストが、何ともいえなく良くて、椎名さんの本を読む楽しみでもあった。戦後の大変な時期も体験しているのに、なぜか古き良き昭和と言いたくなる。
いつまでもお元気で…
Posted by ブクログ
昭和期の半生を語る絵日記風エッセイと、おまけ?として21世紀の中国・旧満州紀行記。著者の昭和はノンポリ的な私生活謳歌の人生が世の中の主流となった時代であり、そんな時代にシンクロした世代だったのだろう。共産党シンパの兄の影響もあり学生運動にはどこか冷めた目線が注がれる一方で、バンドや登山といった若者文化の描写には時代の雰囲気が感じられる。
中国紀行の分量は少ないが、最先端だったり最悪だったりする極端な像から離れて、平熱の中国の姿が垣間見れた。
あとがきでは兄への思いが綴られる。この兄弟を来し方を見ると、人生とはどこでどう転ぶかわからないものだと身に沁みる。