あらすじ
本が好き。でも、とある理由で編集部には行きたくなかった出版社の新人営業マン、井辻くんは個性的な面々に囲まれつつ今日も書店で奮闘中! 平台に何十冊と積み上げられた自社本と、それを彩る心のこもった手書きの看板とポップ。たくさん本を売ってくれたお礼を言いに書店を訪ねると、店長には何故か冷たくあしらわれ……。自社主催の文学賞の贈呈式では当日、受賞者が会場に現れない!? 本と書店を愛する全ての人に捧げるハートフル・ミステリを五編収録。新人営業マンの成長と活躍を描く〈井辻智紀の業務日誌〉シリーズ第一弾!
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Posted by ブクログ
目次
・平台がおまちかね
・新人営業マン・井辻智紀の一日 1
・マドンナの憂鬱な棚
・新人営業マン・井辻智紀の一日 2
・贈呈式で会いましょ
・新人営業マン・井辻智紀の一日 3
・絵本の神さま
・新人営業マン・井辻智紀の一日 4
・ときめきのポップスター
・新人営業マン・井辻智紀の一日 5
大崎梢がデビューした頃は、今ほど書店や出版社などを舞台とした本が出ていなかったと思います。
しかし今、私もそれなりにそれらお仕事小説を読みましたので、今更出版社の営業マンの仕事だけを書かれても満足は出来ない。
では、ミステリ小説としてのこれはどうか?
正直、ミステリとしてはあまり面白くありませんでした。
すべて途中でネタがわかってしまったので。
で、心温まる日常系ミステリは、今や胸焼けするほど出版されているので、わざわざここで読まなくても…という感じ。
出版されてすぐに読めば、もっとキラキラした目で読めたと思うのですが。
どうも私は短篇には少し毒があった方が好きなようです。
Posted by ブクログ
書店で本を探しているとたまにスーツで熱心になにかをメモし、本を並び替えている人がいます。書店の人かと思っていると店員さんと話をしている様子はなにか違う。何度かそのような光景を見かけましたが、あの人はこの本の主人公と同じ出版社の営業さんだったんでしょうね。普段なかなか知ることのできない出版社の営業さんのお仕事を知ることができてとても面白いですね。最終章では著者の「誠風堂シリーズ」との繋がりが出てくるのも楽しいですね。
Posted by ブクログ
出版社の新人営業,井辻智紀が主人公のちょっといい話系のミステリ。ミステリとしての謎,伏線,叙述トリックを駆使した驚きなどは皆無だが,ちょっと心に残るいい話が満載の短編集である。本屋や出版社の裏側が描かれているのもマル。キャラクターも魅力的。あまり好みの作風ではないが,これは結構楽しめた。★4で。
個々の作品の所感は以下のとおり
○ 平台がおまちかね
「白鳥の岸辺」という5年前に出版された,ややマイナーな本を,見事にディスプレイをし,販売しているワタヌキ書店にまつわる話。その書店は,一時,明林書房の本を引き上げ,取引を辞めていた。主人公井辻智紀がその書店を訪れるが,ディスプレイをしたという店長からは,つれない態度で対応される。ワタヌキ書店と明林書房の間に何があったのか?
→真相は,井辻の前々任者である吉野が,「ぜったいに大丈夫」と言っていた本の手配をすることができなかったことから,店長が明林書房との取引を辞めたというもの。吉野も反省し,店長も吉野を許そうとしており,吉野は営業から編集に部署を変え,「白鳥の岸辺」の続編である「森に降る雨」の担当になっていた。ミステリ的な謎,真相はなく,ちょっといい話系の話。
○ マドンナの憂鬱な棚
出版社の営業担当者達のマドンナであるハセジマ書店の望月さんが,訪れた謎の男から「…前の方がよかった。がっかり。つまらなくなった」と棚をけなされ落ち込む話。その男は,お世辞にもきれいなディスプレイとは思えない別の書店で「この店の棚は最高。ほれぼれする」と言っていた。いったいなぜ?
→真相は,謎の男は店舗デザイナー。大型書店のディスプレイの相談を受けていた。謎の男は,棚のディスプレイではなく,棚の材質を褒めていたのだった。これも,ミステリ的な謎はないが,読後感のよい,ちょっといい話系の話。
○ 贈呈式で会いましょう
明林書房の主催する宝力宝賞の贈呈式で,長編部門の大賞を受賞した塩原健夫が会場に姿を現さない。井辻は,謎の老紳士から,「君もずいぶん大胆な手を使うようになったじゃないか」という伝言を,塩原に伝えてほしいと依頼される。その後,謎の老紳士がミステリ作家の津波沢陵であることが分かり,塩原は,津波沢のカルチャースクールでの教え子であったことが分かり,塩原の受賞作が津波沢のトリックを盗作したものではないかという疑惑が持ち上がる。果たして,塩原は本当に,津波沢のトリックを盗作したのか?
→真相は,トリックそのものは盗作していなかったが,ばかばかしいトリックで,塩原は,津波沢から「そのトリックいらないなら私がもらうよ」と言われ,「さしあげますよ」と言ってしまっていたのだ。津波沢は,ちょっとした嫌味のつもりで伝言を依頼したが,津波沢の教え子の一人だった山本という男が,このことを歪曲して塩原に伝えていたというもの。すんでのところで誤解は解け,授賞式は無事に終わる。
これもミステリとしては見せ方が弱い。ミステリ的にもっと面白い仕上げにはできたと思う。ただし,小説としては,軽くて,ちょっとほっこりするいい話に仕上がっている。
○ 絵本の神さま
井辻が,地図を頼りに地方(東北)のユキムラ書店を訪れたところ,同書店は閉店していた。ユキムラ書店には,ほかにも東京から訪れてきた人がいたという。その後,地方の大型店舗で子どもに絵を描いた男の話が持ち上がる。その絵が,ユキムラ書店の看板にそっくりな絵だった。男の正体は?そして,ユキムラ書店が店を辞めた本当の理由は?
→真相は,ユキムラ書店の主人には甥がいて,その甥は人気の絵本作家「snow」だった。ユキムラ書店の主人が店を辞めた本当の理由は持病だったが,甥との仲直りをしたいと考えていた。ユキムラ書店の主人は,甥が書いた絵本を書店に並べることができ,目的を達したと考え,店を閉めたという話。真相の見せ方を工夫すれば,ミステリらしい仕上げになりそうだが,そうしないで,いい話として仕上げている。そういう作風なのだろう。
○ ときめきのポップスター
ある書店の支店のフロアマネージャーが,ポップ販促コンテストを行う。条件は,自社の本以外の本を宣伝すること。一番売り上げを伸ばした本を宣伝した出版社には,1か月分の平積みを商品として出すという。井辻は,「幻の特装本」を取り上げる。そこで,ライバル社の佐伯書房の真柴の宣伝した「ななつのこ」にまつわる,ちょっと不思議な出来事が起こる。誰がいたずらをしかけたのか?いたずらの意図は?
→真相は,書店の女性アルバイトがいたずらの犯人というもの。その女性アルバイトは,昔,書店でバイトしていた真柴から「ななつのこ」を勧められ,真柴に恋をしていたのだ。真柴は,その女性アルバイトのことを覚えているのかどうか分からない。そこで,いたずらをしかけたのだった。これもせっかくの謎をいかしておらず,ミステリとしては平凡。しかし,小説としてはなかなかのデキ。
Posted by ブクログ
大崎梢の出版業界もの第三弾は、出版営業マンさんが主人公。
「ひつじくん」
「井辻です!」
の、お約束やり取りが楽しい。
『絵本の神様』は、いいお話しでした。★★★★★
本をたくさん買うので少しでも安くあげたくて古本屋さんに行ってしまうけれど、もっと新刊書店さんで購入しなくては、と思いました。
『ときめきのポップスター』
「ライオンハート」しか読んだことない…
他のお勧め本、読みたくなりました。
Posted by ブクログ
井辻智紀
明林書房の営業。中くらいといえる程度の出版社。
真柴司
明林書房の二倍は大きな、佐伯書房という出版社の営業。
秋沢
明林書房営業部副部長。智紀の直属の上司。四十代後半の既婚女性。
吉野
智紀のふたつ前の担当者。智紀の四つ先輩。営業部から編集部に異動。
綿貫
ワタヌキ書店の店長。
安西
ワタヌキ書店の店員。別の本屋で智紀に声をかけた。
双信堂
間口四メートルほどの小さな書店。
細川
某大手出版社の営業。
望月みなみ
ハセジマ書店の書店員。
岩淵
いかつい顔をしている。某大手出版社の営業。
海道
スキンヘッド。某大手出版社の営業。
佐藤
真柴の同僚。
西雲堂北横浜店の店長
スーパー内に出店している本屋。
塩原健夫
宝力宝賞の長編部門を取った作家。今年三十二歳になる会社員。
影平
作家。
ミヤちゃん
智紀が受け持っているエリアの書店員。
松林
智紀が受け持っているエリアの書店員。
山本
ミヤさん、松林の書店の大宮店の人。むかし、宝力宝賞の佳作を取った。
酒井
塩原健夫の担当。
津波沢陵
老紳士。往年のミステリ作家。
仁科
岡田書店。山形のレインボープラザ店。佐伯書房の本をとても力を入れて並べている。
幸村孝治
ユキムラ書店。店を閉めた。
谷
小松書店の文庫と児童書を担当。南東北に拠点を置く中規模書店。
佐久間
光浦舎という小さな出版社の営業。
雪村一弥
池内
POPコンテストの担当者。
駒沢
POPコンテストの書店のバイト。法学部の三年生。