あらすじ
歴史は何のために学ばなければならないのか? そもそも、社会や個人の役に立つのだろうか?年号ばかり羅列する歴史教科書への疑念。一方で相対主義や構造主義は、“歴史学の使命は終わった”とばかりに批判を浴びせる。しかし歴史学には、コミュニケーション改善のツールや、常識を覆す魅力的な「知の技法」が隠されていたのだ!歴史小説と歴史書のちがいや従軍慰安婦論争などを例に、日常に根ざした存在意義を模索する。歴史家たちの仕事場を覗き「使える教養」の可能性を探る、素人のための歴史学入門講座。[序]悩める歴史学 [1]史実を明らかにできるか―歴史書と歴史小説/「大きな物語」は消滅したか/「正しい」認識は可能なのか [2]歴史学は社会の役に立つか―従軍慰安婦論争と歴史学/歴史学の社会的な有用性 [3]歴史家は何をしているか―高校世界史の教科書を読みなおす/日本の歴史学の戦後史/歴史家の営み [終]歴史学の枠組みを考える
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
「歴史学で本当に史実を明らかにできるのか?」「歴史学は本当に役に立つのか?」という、「なぜ歴史学を学ぶのか」を考えるにあたって出てくる疑問についてガッツリ書いてくださっている本。
また、歴史教科書に対する批判もあり、「おおこの人もか!」と思ってしまった。ただ、小田中氏の場合は、倉山氏とはちょっと違って、教科書と言うよりも、教科書にそういう書かせ方をするシステムが問題と言う言い方をされていて、私もむしろこっちが問題だろうなと思いました。
Posted by ブクログ
大学1年時の授業で勧められた本。「史実を明らかにできるか」、「歴史学は社会の役に立つのか」、「歴史家は何をしているか」という3つのテーマでページが割かれている。
突き詰めると
・史料批判でコミュニケーショナルに正しい認識をすることでより正しい解釈に至る
・真実性を経由することで、「コミュニケーションの改善」、「教訓を得る」という形で個人の役に立つ
・歴史家の仕事は「テーマを設定する」→「史料を探して読み解く」→「そこから得た知識を文章化する」の三段階にわけられる
ということになります。従軍慰安婦をめぐる論争の根底に「歴史は物語(フィクション)であるか否か」という問いがあったこと、「倹約」、「謙譲」、「孝行」といった美徳が規範になったのは江戸時代で、その結果「日本人は勤勉」という共通認識が生まれたということは、当時としては印象的だった。