【感想・ネタバレ】アンチ・アンチエイジングの思想――ボーヴォワール『老い』を読むのレビュー

あらすじ

老いには誰も抗えない。それなのに、私たちはなぜ老いを恐れるのだろう。平均寿命が延び、老人としての生が長くなったことで、誰もが老いに直面すると同時に不安も高まっている。自分が老いたことを認めたくないのは、社会が老いを認めないからだ。それを惨めにしているのは文明のほうなのだ。「老いは文明のスキャンダルである」――この言葉に導かれて、ボーヴォワール『老い』への探究がはじまる。さらに日本の介護の現場を考察し、ボーヴォワールのみた景色の先へと進む。認知症への恐怖、ピンピンコロリという理想、安楽死という死の権利。その裏側にある老いへの否定から見えてくるのは、弱いまま尊厳をもって生ききるための思想がぜひとも必要だということだ。ひとが最後の最後まで人間らしく生きるには、徹底的な社会の変革が必要なのだ。老いて弱くなることを否定する「アンチエイジング」にアンチをとなえ、老い衰え、自立を失った人間が生きる社会を構想する。

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Posted by ブクログ

老いには誰も抗えない。それなのに、私たちはなぜ老いを恐れるのだろう。
自分が老いたことを認めたくないのは、社会が老いを認めないからだ。
それを惨めにしているのは文明のほうなのだ。
「老いは文明のスキャンダルである」
――この言葉に導かれて、ボーヴォワール『老い』への探究がはじまる。

ボーヴォワールにしても、上野千鶴子さんにしても、
「女性」をテーマに闘ってきた、というイメージはあったが、
老い にも着目していた。
もちろん、「女性の老い」と「男性の老い」の位置づけの違いにも着目しているが。

でもまず「老い」である。
確かになあ、、老いを受け入れる、歓迎する社会だったら、
アンチエイジングなんて言葉は生まれなかったかもしれない。
私自身も内臓関係の衰えを感じながら、マラソンを通じて、
過去の自分と闘っている。老いたくはない。

その発想自身どうなのよ、ってところだろう。ボーヴォワールも千鶴子さんも。
耄碌、認知症、、、どうしたって最後の何年間は世話をかけざるを得ない。
かけたっていいじゃないか、と。

ただねえ、、、
今の若い人は自分が生きるのに精いっぱいで子供も持てない。
そんな中で年寄の面倒まで見ろというのは無理筋って気はするんだよなあ。
野生の動物だって、生き延びるために老いたもの、病に倒れたものは置いていく。
それが自然の摂理なんじゃないかなあ。
いや人間はもっと高尚な生き物だ、といいたいところだが、
現状の日本の出生率はそれが困難なことを示している。

そこに輪をかけて年寄りが「選択的夫婦別姓は家族を壊す!」などとのたまう。
同姓だって壊れている家はたくさんあるし、
別姓を認めないから家族になれないカップルも少なからずいるんだけどねえ。

話がだいぶそれてしまった。
老いを語るのは難しい。
男女の老いの差を語るのは大いに語りたいね。
生殖能力、性欲、、、

第1章 老いは文明のスキャンダルである
第2章 文化の中の老い
第3章 歴史の中の老い
第4章 近代化の中の老い
第5章 「生きられた経験」としての老い
第6章 知識人の老い
第7章 老いと性
第8章 女性の老い
第9章 高齢者福祉の起源
第10章 ボケ老人へ向ける眼
第11章 アンチ・エイジズム
第12章 三つの死
第13章 「死の自己決定」はあるか
第14章 ボーヴォワールの「宿題」
第15章 「自立神話」を超えて

引用・参照文献
ボーヴォワール略年譜
あとがき

0
2025年06月15日

Posted by ブクログ

ボーヴォワールの「老い」を今の
上野先生の頭で読む
いつか忘れたが若い頃に読んだ「老い」
人間は老いて死ぬ
そんなことを考えて読んだな
体力も知力も減退した時どう生きるか

上野先生の分析は素晴らしい
そしてボーヴォワールの時代とは
福祉も高齢者も変わった

しかし終末期の医療が死ぬことを強いる あるいは生きることを強いる場合もあるという考えには はっとさせられた

結論としてどんな状況にあろうと
生きることの大切さだった

0
2025年06月07日

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