あらすじ
ピューリッツァー賞受賞作。ヨルダン川西岸地区で園児たちの乗ったバスが燃えた。アーベドは息子を探して奔走する。占領とは何かを問う悲劇のノンフィクション。
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Posted by ブクログ
小説風のタイトルと中身で気が付かなかったのだが、実はノンフィクションという恐ろしい小説だった。
占領されるということの恐ろしさを感じた。生活の全てが侵略されている。戦争のずっと前からこんなにも虐げられていて、人権も命も蔑ろにされていたと知った。
一方で、パレスチナの人達の伝統的なあり方、具体的にはあまりにも家父長制的で女性の人権や意思が軽視されていることに素直にショックを受けた。
気持ちや状況があまりにも精緻に書かれていてまるで小説のようだったためだと思う。
これは許されないと思うし、とても好きになれない。しかし、占領されていい理由にはならない。
そのような国でありながら、パレスチナを一度出ることができた女性がまた自ら帰っていくことに驚いた。何よりも大切な故郷を奪ういまの世界のあり様は変えなければならないと思う。
Posted by ブクログ
「本書はノンフィクションの作品である」
この一文で、こんなに胸が痛くなったことはこれまで一度もない。
かつてホロコーストの大虐殺が起きて、私たちはジェノサイドがいかに恐ろしいかを知った、はずだ。
しかし、今度はその被害者側が、別のジェノサイドを起こしている。
「神さまから与えられた土地」
正当化の理由は、ただそれだけ。
パレスチナの人々は、自分たち祖先の土地を奪われ、仕事を奪われ、パスポートを発行してもらえないので移動する自由も与えられず、裁判権もなく、自分の国の旗を掲げただけで逮捕されて拷問される。何万人ものパレスチナ人の命が、圧倒的軍事力の前で失われている。
そして、パレスチナの子どもたちが亡くなったことを喜ぶイスラエルの若者たち。
植民地化と不当な制圧で、国際法に違反していることは明らかなのに、アメリカのせいで裁かれずに放置されているイスラエルという殺人国。
ホロコーストの悲劇で、センシティブな問題となったことで、メディアもイスラエルの人たちが行っている殺戮を糾弾することができず、ずっとヴェールに覆われ見て見ぬふりをされてきた。
あの日、2023年10月までは。
いまや、インティファーダの頃とは違う。
ネットがある。YouTubeがある。
私たちには、発信する術がある。
かつて、村上春樹がエルサレム賞のスピーチで語ったように、システムを作ったのは人間だ。システムに負けちゃダメだ。
それがどんなに、高い壁でも。
Posted by ブクログ
なぜ彼らが死ななければならなかったのか。壁を作ったから。行政サービスがまともに機能していないから。学校が近くにないから。救急車が来なかったから。暴力による恐怖が染み付いているから。
イスラエルによる非人道的な「攻撃」だけじゃなく、日常と地続きにあるいくつもの不正と機能不全。
Posted by ブクログ
壁の向こうとこっち、のような単純な世界ではないことを思い知らされる一冊。前提の勉強が足りておらず制度を理解するのが大変、かつ登場人物も多く読むハードルは高かったが、一読すべき本を読めたな、と感じられた。
Posted by ブクログ
イスラエル↔パレスチナ問題、そこに生きる人々の実情。ニュースで観るどこか遠く現実味のない現代も続く問題に、主人公と彼を取り巻く環境を通して触れることができる。あまりにもやるせないその日常と出来事を記した1冊。
生活そのものや思想、家族との関係や結婚観、色んな所に自分の周りでは考えられない驚きばかりだった。
Posted by ブクログ
ひどい話オンパレード。ぬるま湯の中で政治批判しながらもそこそこ生きてられるのは幸せと思えてきました。また、古風というか多様な、というか、彼の地の結婚制度に驚き。