あらすじ
世界最大の難民キャンプで、作家が出会った「もう一つの戦争」。希望なき世界でたたかう仲間たちを描く、大反響ルポルタージュ!
前回訪ねたガザとヨルダン川西岸地区に続き、バングラデシュにあるロヒャンギャ難民キャンプを訪ねた著者。世界が暴力に覆われるなか、困難を増す難民の人々の現実と国際人道支援の最前線を描く。歴史学者・藤原辰史氏との対談を収録。
「著者は深く傷ついている。苦境に生きる人たちの姿を見、話を聞き、その理不尽に憤り、でも憤るよりもっと深く、傷ついている。傷ついていることを、隠さずに書いている。私はそのことに心動かされ、そして、なんと信頼できるルポだろうと思うのだ。」角田光代さん(群像2025年5月号より)
「いとうさんが訪ねた場所は、現代史の「傷」の現場だ。私は本書を生きた歴史の本として読み、著者とともに世界を旅した。」藤原辰史さん
「私たちがいなくていい世界にするために、私たちが今ここにいる」(「国境なき医師団」メンバーの言葉)
彼らはこの希望なき世界で、信じることのできない希望のためになお“踏みとどまっている”、あるいは“退避してひたすら前方をにらんでいる”、または“一歩ずつ目的地へにじり寄っている”。つまり、それでも彼らはいる。現在、世界はきつい。希望は日々少なくなる。しかしそれでも、いやだからこそ「私たちが今ここにいる」必要がある。そして俺も『「国境なき医師団」をそれでも見に行く』のだ。――いとうせいこう
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
あまりにも凄い内容で読むのが辛かった
世界が暴力に満ち溢れているようになり
イスラエルのガザへの監視と暴力
落ちていたオモチャが爆弾で子どもの手を失くす
後から足を撃たれて片足が不自由に
いずれもその後の生産性を阻害する
ひどいやり方
知らなかったとてもショック
アウン・サンスーチーでさえ
助けなかったロヒンギャの人々
ミャンマーを追われバングラデシュの
難民キャンプで暮らす百万近い人
そこで起こるギャングの争い
仕事もできず食料も不足し栄誉不足
はびこる不衛生 感染
人間として生きる希望も見いだせない
世界は分からない事だらけ
Posted by ブクログ
2024年6月にバングラデシュにあるミャンマーからの難民の受け入れ先、世界一広大なロヒンギャ難民キャンプを取材した記録。帰国後、新たな難民が増えたりなど状況の変化を「緊急補足」されていた。
これまで8年間をかけて、ハイチ、ギリシャ、フィリピン、ウガンダ、南スーダン、パレスチナ・ガザ地区、ヨルダンにある「国境なき医師団」の活動を見に行った、いとうせいこうさん、きっかけとジャーナリストでなく作家の視点で伝えたい、という話を聞いて読みたくなった。
どこを読んでも厳しい現実、せいこうさんの写真の表情を見るたびに厳しさが増す。言葉が見つからないなか唯一、本の表紙にもある「キャンプ・ライフ」と題された、可愛らしい刺繍作品があることがホットした。ロヒンギャの手法で縫われたものだが、キャンプの地図を縫う現実を思うと複雑な気持ちにもなった。
序章の「戦争について」と「歴史の傷と向き合うために」歴史学者さんとの対談は特に印象に残った。