あらすじ
クリスティーの死後、四半世紀の時を経て、新聞や雑誌に掲載されたきりでファンの間でのみ囁かれ続けてきた幻の作品群を発掘。表題作の宝探し懸賞小説や、謎の失踪の直前に書かれた小説、ポアロやクィンの謎解きミステリ、心理サスペンス、ホラー、ロマンスなどバラエティに富む十篇を収録。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
「愛の旋律」の解説で、もとい、訳者の「アガサクリスティとウェストマコット」という訳者あとがきで、本書の「壁のなか」が、愛の旋律の登場人物と対比して考えることができるとの示唆があった。
アラン、その妻イザベルとジェーンが、
愛の旋律のヴァーノン、ジェーン、ネル、との関係との比較だ。
愛の旋律を先に読んでいたので、なるほどと思いながら読んだ。
アガサクリスティの作品にある、アガサクリスティ自身は誰だろうと思いながらも読んだ。
アガサクリスティ作品の楽しみ方の一つだと思った。
Posted by ブクログ
アガサ・クリスティの短編集。
夢の家
崖っぷち
クリスマスの冒険
孤独な神さま
マン島の黄金
壁の中
バグダッドの大櫃の謎
光が消えぬかぎり
クィン氏のティー・セット
白木蓮の花
愛犬の死
「夢の家」
ミステリーというよりサスペンス。人が狂っていく様が静かに描写されていて普通に怖い。
「名演技」
過去を知るならず者に脅されると気づいた女優、一世一代の名演技。彼女の代役も死体役とはいえ、なかなかの名優ではなかろうか。
「崖っぷち」
一線を踏み越えたのはまさかのクレアだった…!?ヴィヴィアンだと思ったのに。いや、ヴィヴィアンも楽しげに崖を飛んだ時点で一線を踏み越えてはいるのか。
「クリスマスの冒険」
ポアロシリーズ。
クリスティ作品でたまにある、主人公の機転で犯罪者が新たなる犯罪を諦めて遁走する話、結構好きだったりする。なのでこの話も好みだった。
「孤独な神さま」
これ、今の時代ならいわゆる「なろう系」とも言えそうな気がするが…ハッピーエンドはやはり良いものだ。クリスティは恋愛ものを描いても、彼女のらしい魅力に溢れた作品を作り出す。
「マン島の黄金」
今の日本でも脱出ゲームや謎解きが流行っているが、まさかそのはしりをクリスティがやっていたとは…。正直全く解けなかった。
「壁の中」
ジェイン・ホーアスがまさかの絵画だとは。最初、「いつジェインって人が出てくるのかな」と思いながら読んじまったよ。しかしこの作品はミステリーというか、まぁミステリーサスペンス……なのだが、雰囲気的にはランポーである。エヴァラードは亡くなりイザベルは生き残ったのだと思ったけど、もしかして二人とも死んだのか?
「バグダッドの大櫃の謎」
ポアロシリーズ。そしてヘースティングズ友情出演、ないし語り手。
クリスティらしいトリックの冴えた短編。クリスティの恋愛要素が強い話も好きではあるが、やっぱりミステリーが良いなあ。
「光が消えぬ限り」
いや三角関係。からの悲劇。結構クリスティが好きな愛憎劇ではあると思うが、そして彼女らしい女性贔屓な雰囲気は否定できないが、本作は特に、ティムが気の毒な気がしてならなかった。女の思わせぶりは罪。
「クィン氏のティー・セット」
少しの不思議さとミステリーが融合した作品。クリスティ作品の中では珍しいような気もするが、そして昨今のミステリーではあまり見ない手法のような気もするが、意外と個人的には好きな作品だった。
「白木蓮の花」
普通にリチャードがあかんやヤツ。「光が消えぬ限り」とはまた違う方向から攻めた三角関係。テオは孤独を選んだけど、どこか近い未来でヴィンセントと幸せになって欲しい。
「愛犬の死」
時代を思うと、ジョイスのような未亡人は生きるのに苦労しただろうと思えて仕方ない。愛犬が居たからこそ彼女はこれまで生きて来られたのだが、これから先は愛犬が居ないからこそ生きていけるのだと、ちょっと皮肉にも感じる一方、ようやく過去と別れを告げてジョイス自身の人生を歩み始められるような終わりで、読後感は良かった。
Posted by ブクログ
クリスティーの個性あふれる短編をご賞味あれ。
表題作はマン島の観光客誘致のために書かれた懸賞小説とのこと。当時は新しい手法だったかもしれないが現代では割とポピュラーなイベントとも取れるだろう。しかしクリスティーが参戦するとは豪華だ。ほかにもバラエティに富んだ短編が収められている。ポアロもあればクィン氏も。
「崖っぷち」や「壁の中」にはメアリ・ウェストマコット名義の作品群に通じる静かな狂気を感じる。「愛犬の死」は愛犬家なら共感するのだろうか。「クリスマスの冒険」は若者たちとポアロの交流も微笑ましい活劇風。「名演技」は劇作家の面が強く出た作品で、ちょっと誰かに演じてもらいたくなる。