【感想・ネタバレ】虫を描く女(ひと) 「昆虫学の先駆」マリア・メーリアンの生涯のレビュー

あらすじ

その画家はなぜ、強烈に「知」を求めたのか──?

近代の夜明け前、フンボルトやリンネ、ダーウィンよりはるか昔に、昆虫学という学問が存在しないなか独学で研究を行い、メタモルフォーゼ(変態)の概念を絵によって表現、さらに大西洋を渡って南米を調査旅行し、昆虫や植物の姿を生き生きと描写した破格の女性が17 世紀にいた。小さな虫の中に「神」を見たその女性、マリア・シビラ・メーリアンとは何者だったのか──。科学と芸術が混じり合った豊かな時代の輝かしい偉業を、中野京子が生き生きと蘇らせる。2002 年刊の幻の名著、『情熱の女流「昆虫画家」──メーリアン波乱万丈の生涯』が満を持して復刊!

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Posted by ブクログ

虫を描く女−描くだけではなく、採取して育てて、観察して、標本にして…そして絵に描いて、銅板を彫って版画にして、出版した女性!その上、南米まで出かけて熱帯の虫まで描いたというからビックリです。
なぜ、マリア・メーリアンはこんなにも虫に情熱を傾けたのか?その生涯と作品を紹介した一冊。
オランダ東インド会社とか、植民地政策とか、世界史で習ったな〜など思いながら、当時の出版の事情なども面白く読みました。
ちなみに、新書版なのにカラー挿絵が印刷されていて、最近の印刷技術すごいなと感心しました。

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2025年11月22日

Posted by ブクログ

300年以上も前にこのようなパイオニアの女性がいたことに驚かされる。しかも当時の昆虫学と絵画の両方を極限まで突き詰めて。
マリア・シビラ・メーリアンという女性の生涯、出生から子供時代、結婚、離婚、病気、母親、画家であり商人、そして南アメリカのスリナムへの冒険ともいえる挑戦はどこを切り取っても魅力があります。

17世紀ヨーロッパの「見たい、知りたい、集めたい」という空気と、この方の絵の凄さが伝わる素晴らしい内容でした。

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2025年10月19日

Posted by ブクログ

マリア・シビラ・メーリアン。
ダブリン大学の蔵書に関する勉強中、不意に出会った女性。
ドイツではお札の顔にまでなっているとのことだが、日本ではこの手の分野は、ファーブルおじさん一択である。
ボタニカルアートが好きで、魅入られるまま関連書物を検索すると、なんと中野京子大先生の著作。読むしかなかった。

人生というものは、”そうなるようになっている“というのが私の持論である。マリア・シビラの人生も、幸、不幸を問わず、すべてのことが、少女を“虫を描く女”へと変容させていく。偶然に見せかけた神のお導きであろう。

マリア・シビラの人物像は、地味でひたむき。自分が信じたものに言葉少なく、それでも恐ろしいエネルギーで取り組んでいく。また不思議なのは、取り立てて美しくもなく、社交的でもないのに、センスが良い、大胆でビジネスも上手い。現代の昆虫図鑑は、彼女から大きく影響を受けたと言っても過言ではないほど、学者としても優れている。
父親の遺言、「おまえはメーリアンの娘」
を実証し切った。まさにイモムシ、実はアゲハチョウ!といった女性なのである。

彼女の作品の魅力は、中野先生が語るように、自然に対する素直な尊敬と畏怖の心である。この時代、花や虫を美しく描いた作品はいくらでもあった。だが、根本的な生物学的誤解があっただけでなく、寓意画のように人間の妙な概念を生物に塗り込めた、”生きているようで死んでいる”作品が多い。しかし、マリア・シビラの昆虫たちは画面上で、もそもそ動き、孵化や脱皮を乗り越える息吹を観者に与える。
花が開いているのに葉が枯れていたり、植物より圧倒的に繭玉が大きかったりと、1つの画面に見たものすべて織り込んで、生物の成り立ちをダイナミックに伝え切る作風も圧巻である。

さらに彼女の人生で面白いのは、バリバリのキャリアウーマン、でも働かない夫からDVを受け(たと思われ)、コミュニティに身を移す。しかもこの時代において離婚にまでこぎつける。妙に現代社会的なのである。
そして、さらには・・・。

それにしても時代を的確に読み手に伝える中野先生のテクニック、そして主人公の心の変遷を嗅ぎ取る力に、毎回、敬服する。客観的で出過ぎた姿勢がない、時代を映す額縁に徹している。
実はこの著作、大ヒット作「怖い絵」前のもの(復刻版)。
名画の歴史をヨーロッパの歴史とともに丹念に描き続ける中野先生、ある意味、あなたもメーリアン!

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2025年08月08日

Posted by ブクログ

古くは『堤中納言物語』内の10話ある短編の一つとして、「虫めづる姫君」が紹介されている。化粧をすればそこそこなのに、、身なりに構わず昆虫に夢中である。ちょっかいをかけようとした若君は退散するが、西洋の虫めづる女性は結婚し、子供も産み、昆虫の絵を書くことを職業にさえした。しかしやはり、女性ならではの差別や理不尽とは無縁ではなかった。その女性とは、マリア・ジビーラ・メーリアンだ。

 メ―リアンは実家の姓だ。実家は銅版画で有名なメ―リアン一族で、マリアの父は版画工であり「メーリアン出版社」の経営者スイス人マテウス・メーリアンだ。マリアが生まれた3年後に死去し、亡くなる前に、マリアを指して「あれはメ―リアンの娘だ」と宣言するも、長男と母親の折り合いが悪く、あっけなくメ―リアン家を出されてしまう。オランダ人であった彼女の母は静物画家のヤーコブ・マレルと再婚。しかしマレルの死後、再び母親は婚家を追い出され、裁判沙汰になる。マリアもまた働かないぐうたらな夫を捨て、メ―リアン家で唯一マリアの面倒を見てくれた次兄カスパル・メーリアンの紹介で、ソンメルデイク家が所有するワルタ城のラバディ派のキリスト教コミューンに行く。近代の夜明け前、フンボルトやリンネ、ダーウィンより昔、昆虫学という学問が存在しない時代に、独学で研究を行う。メタモルフォーゼ(変態)の概念を絵によって表現し、大西洋を渡って南米を調査旅行。昆虫や植物の姿を生々しく描いた。彼女の絵は、かのピョートル大帝も好んで取り寄せたくらいである。次女夫妻はその縁でロシアに招かれた。「女性は引っ込んで家庭を守りなさい」と母親に何度言われても「いやでもあなた失敗してるからね…」とその逆を行き、成功した。但し金を持っていた割には無縁墓に葬られている。子孫に金を残すためと徹底している。

 2002年刊の『情熱の女流「昆虫画家」──メーリアン波乱万丈の生涯』復刊。

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2025年08月09日

Posted by ブクログ

小さな虫の中に「神」を見た、植物画家で昆虫学者
マリア・シビラ・メーリアン(1647~1717)
ドイツ紙幣、500マルク札と切手の肖像画の女性。私は名前どころか、存在さえ知らなかった。

今でこそ女性が堂々と昆虫好きなどと言えるが、
昆虫どころか薬草を摘んで煮ていても怪しい女と
見られ、魔女だと密告されるような時代、
そんな時代に独学で虫を研究し、メタモルフォーゼ(変態)の概念を絵によって表現した、
マリア・シビラ・メーリアン、
彼女は52歳の時に、憧れの南米スリナムに娘と
共に渡る(あの時代にその歳で!)マラリアで
死にかけながらも精力的に研究を続け、昆虫や
植物の姿を生き生きと描写した。
恐ろしいほどのバイタリティだ。

彼女が描いた生命力に溢れた細密画の植物や
昆虫達を、本書の挿絵でぜひ見てもらいたい。

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2025年07月24日

Posted by ブクログ

17世紀、ゴシック期のドイツに生まれたマリア・メーリアン。
彼女の虫を愛で、描き、探究する、波乱の、不屈の人生を
精密で美しい作品を添えて紹介する。
・はじめに
第一章 フランクフルト時代(~18歳)
               ――小さき虫に神が宿る
第二章 ニュルンベルク時代(~38歳)
             ――科学と芸術の幸福な融合
第三章 オランダ時代(~51歳)――繭の中で変化は起こる
第四章 スリナム時代(~54歳)――悦びの出帆
第五章 アムステルダムでの晩年(~69歳)
              ――不屈の魂は何度も甦る
・あとがき ・主要参考文献 ・復刊に際してのあとがき

「すごい博物画 歴史を作った大航海時代のアーティストたち」
デイビッド・アッテンボロー/著 グラフィック社で
初めてマリアの絵に出合い、驚き、興味を抱いて探した
「マリア・シビラ・メーリアン作品集 Butterflies」
グラフィック社で、彼女の作品を堪能していました。
で、更にマリアの人生が知りたいと思っていたところ、
復刊したのが、この人物伝でした。
著者ならではの、マリアの人生の歩みを辿りながら、
彼女の内面や心理を深く探ってゆく内容になっていました。
時は17世紀。メーリアン出版工房を営む父の後妻の娘に
産まれたマリアは、心身共に複雑な家族関係の中で育った。
だが彼女は虫に出会う。虫愛でる娘は、
蚕の飼育から虫のメタモルフォーゼを知る。
亡き父の出版工房と義父の絵画工房での学びも、彼女の基盤に。
結婚後、フランクフルトからニュルンベルクへ。
処女画集「花の本」出版。第二作目「虫の本」出版。
夫との別居でフランクフルトに戻り、
次兄の影響でオランダのラバディストのコミューンへ。
そこでスリナムの動物や昆虫の標本と出会う。
離婚と母の死からアムステルダムで再始動。
52歳で娘とスリナムに渡り、精力的にフィールドワークを
行うが、体調を崩して53歳でアムステルダムに戻る。
その成果は大センセーションを巻き起こす。
58歳で最高傑作の「スリナム本」を出版。
69歳での死。1771年頃までが最盛期で、その後18世紀に
批判が起こるが、20世紀半ばに再評価され、現代に至る。
昆虫学の先駆であり、研究者、画家。更に商人としての才。
バロック期、女性の第一の仕事が家事の時代に、
見たい・知りたい・集めたいをこれほどまでに追求した
生涯は、力強いものでした。そう、作品もインパクト抜群!
ただ、一度忘れ去られた彼女がどのように再評価されて
いったのかの言及が無かったのが、少し残念。

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2025年06月04日

Posted by ブクログ

植物昆虫学者としてまた画家として素晴らしい業績を残し、また2人の女の母としての行動力など生命力に溢れたマリア・メリーアンの人生。
沢山の挿画ありその素晴らしさが伝わってきました。

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2025年05月31日

Posted by ブクログ

葉を食べる芋虫が、蛹となり、蝶や蛾になり飛び立つ。メタモルフォーゼ。本能の赴くままに動いて、時が来て、変態する。偶然おかれた環境で、生き物がそれぞれ行動し、自然界を成り立たせている。…フランクフルトの版画工の後妻の子として生まれる。父の死後、実家を追い出され、母の再婚相手の元で暮らす。孤独な少女が出会ったミクロな世界。虫さえ追っていれば幸せだった。成長し結婚する。出産し離婚する。その後、スリナムを目指す。娘とのフィールドワーク。歴史に残る「虫の本」の出版。バロック期の女性。それぞれの中の1人として生きた。

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2025年05月08日

Posted by ブクログ

売り文句として「昆虫学の先駆」、「リンネ、ダーウィンよりも昔に研究を行い~」という人物の伝記であり、「マリア・メーリアン」という名前は一切知らない状態で読み始めたが、非常に興味深く読むことができた。
まだ近代科学が発達する前で昆虫学もない(おそらく生物学もなく、博物学が大勢を占める)時代に、変態含めて自然観察を前提として書籍を作成した女性であり、その生涯の業績だけでなく、関係者や親類とのやり取り方から、時代の背景を知ることができ、興味深く読むことが出来た。
レーウェンフックとの関係とやり取りはちょっと笑ってしまった。

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2025年05月04日

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