あらすじ
迷惑なの! と言われても。
昔話に説教、趣味の講釈、病気自慢に孫自慢。
そうかと思えば、無気力、そしてクレーマー。
双六やカルタの製作販売会社・雀躍堂の前社長・戸山福太郎は、娘婿に社長を譲ってからも現役に固執して出勤し、誰彼かまわず捕まえては同じ手柄話をくり返す。
彼の仲間も老害の人ばかり。素人俳句に下手な絵をそえた句集を配る吉田夫妻に、「死にたい死にたい」と言い続ける春子など、老害五重奏(クインテット)は絶好調。
「もうやめてよッ」福太郎の娘・明代はある日、たまりかねて腹の中をぶちまけた。
『終わった人』『すぐ死ぬんだから』『今度生まれたら』に続く著者「高齢者小説」第4弾!
定年、終活、人生のあとしまつ……。
自分のこと、親のこと、いずれは誰もが直面する「老後」。
「最近の若い人は……」というぼやきが今や「これだから『老害』は」となってしまった時代。
内館節でさらなる深部に切り込む!
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Posted by ブクログ
内館牧子さん好きで、これまでの老人シリーズも面白かったので読みました。本作もとても面白かったです!
主人公は、会社経営を引退して「会長」となった老人と、その娘。会社は娘婿が継ぎ、その息子も成績優秀で将来が期待できる。娘は独立して医療機関で働いていて、コロナ対応で忙しく、ほとんど帰ってこない。
最近、コロナ禍を題材にした小説がけっこう出てきましたね。この小説でもコロナ禍でままならない老人たちが描かれている。
主人公の「会長」、福太郎は、一度は引退したものの、妻に先立たれ、することがなくなったので再び会社に出るようになり、自慢話や社員へのお説教を繰り返し、老害だと言われている。ついに、出しゃばりすぎて大事な取引先との契約を台無しにしてしまう。いい加減にブチ切れた娘が、二度と会社に迷惑をかけるなと言い渡すと、出勤するのをやめ、暗い顔でしょんぼりと日々を過ごすようになった…。
と、思いきや、福太郎は転んでもタダでは起きなかった。老人の自分に何ができるか、考えて行動した。
戦々恐々とする娘や孫世代。
その娘も50代で、すでに若くはなく、親世代を見ながら「こんな老人にはなりたくない」などと考えている。孫は成績優秀で陸上競技での実績もあり、名門大学からの誘いも来ているが、自分が本当にやりたいことは何なのか考え、選択する。親や祖父が「その選択はリスクが大きすぎる」と考えるような選択だが、未来の社会を築いていくのは彼らなのだ。古い価値観を押し付けても、それで将来が安泰とは限らない。
色々な世代の生き方を描いてはいるのだが、やはり福太郎のキャラクターがすごい。
娘は福太郎を「老害だ」と思っているが、誰にも止められない福太郎が、生き生きと動き出すとき、やはりカリスマ性が光っている。入り婿の社長がいくら頑張って実直に勤めても、どうしてもかなわないオーラがある。それを認めざるを得ない場面とか、なかなか面白かった。
最後は「老害」と言われようと、なんと言われようと、老人だって誰にも遠慮することなく、自分の人生を生きるのだっていうなんとも痛快な終わり方で、心温まると同時にちょっと呆れる、でもそんな老人になりたいな、なんて思える物語でした。
Posted by ブクログ
初めは老害まみれの人たちに苛立ちを覚え気分が悪くなったが、
老害を老害たらしめるものって何だろう
うまく共存するにはどうすればいいのだろうと考えるきっかけとなった