あらすじ
だれもが経験したことがある「先延ばし」や「前倒し」を、最新の心理学研究を用いて解明するのが本書の目的である。前倒しが礼賛されがちな“タイパ社会”において、諸悪の根源のように扱われる先延ばしであるが、「考える時間を十分にとれる」「創造性が促進される」などの多くの長所がある。自分の傾向を把握して“ちょうどいいタスクマネジメント”を身につける方法や、「先延ばし派」と「前倒し派」の協働のコツを伝授する。
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Posted by ブクログ
■時間管理のマトリクス
TODOリストの整理用
重要性高
↑
C領域 │ A領域
緊急性低/重要性高 │ 緊急性高/重要性高
───────────┼───────────→緊急性高
D領域 │ B領域
緊急性低/重要性低 │ 緊急性高/重要性低
■タスクマネジメントは働き方、家事、勉強の進め方など、あらゆる場面で必要とされる。タスクの処理や遂行が計画通りに進まず失敗してしまうこともある。その失敗を生み出す原因の一つが先延ばし。
■先延ばしをする理由の大部分を「失敗への恐れ」と「課題の回避」
の二つが占めている。
■先延ばししやすい人の特徴
パーソナリティ
・完璧主義
・衝動性
・現在志向:明日のことより今日の楽しさ
心理プロセス
・自身の低さ
・不安、抑うつ
・課題からの回避
■「適度な先延ばし」が予想外の発想や新たなアイディアの生産に効果的であることもある。一時的な後回しはタスクマネジメントの一つと言える。
■頭の中であれやこれやと様々な処理をしているがゆえに、やっておかなければならない単純なタスクは早めに処理しておこうとして前倒しが生じる。こうした現象は日常生活の一端にも現れる。簡単なタスクであればあるほど、早めにそのタスクを片付けておこうとする。たとえそのことによって別のコストが現れるとしても、それ自体の認知的な負荷を軽減、又は最小限に抑えようと、できるだけそのタスクに早めに取り掛かる。それによって他の活動に注意を向けたり集中したりでき、不測の事態が起こったとしても余裕を持って対処できる。
■人は、そのタスクにどれくらいの認知的な負荷が伴うかを判断し、既に大きな認知的負荷がある状況では、より大きな負担やコストを避けようと判断していると言える。
■予備的なタスクを頭や心のどこかに留めておくというのは、それ自体が認知的な負担となる。そこで、直感的かつ自動的に認知的な負荷から頭を解放させることによって、後に起きるかもしれないことに頭や心を集中させたり、適切な準備をしたりするというのが前倒しという現象の本質。
■最終状態の快適なものにするために、最初に厄介なこと、または不自然な動作を日々の暮らしの中で何気なく行っている。例えば車を駐車するときに後で発信しやすいようバックで入れるほうが多い。
■ビッグファイブの五つの基本特性と特徴
①外向性
周りの人や環境からの刺激を求めるなど、積極的で活動的
②情緒不安定性
ストレスに敏感で不安を感じやすい
③開放性
新しいものに興味を持ちやすく想像力が豊か
④誠実性
勤勉で目標の遂行に忠実
⑤調和性
親しみやすく協力的
■一見すると余り考えることなくさっさと早めの行動を取っているように見えても、実はじっくり考えているという考察は、前倒しが認知的な負荷を取り除きたいという欲求に基づいていることからも妥当であると主張できる。このように考えると、ビッグファイブによるパーソナリティでは誠実性との関連が挙げられること、そして限定的ではあるが、セルフコントロールが影響を与えているかもしれないという結果も納得できる。
■先延ばしは、システム1とシステム2のせめぎ合いの結果生じるとも言える。大脳辺縁系の働きによって目の前の快楽に注意が向くと、そのことばかりに意識が集中してしまい将来のことは後回しになってしまう。
先延ばしの起こる原因を辿っていくと、人は進化のプロセスを通じて先延ばしをするようになったとも言える。
■前倒し派の人はせっかちのように見えても、実はそうではなく、あくまでその後のことを穏やかに進めるために、今を急いでいるのかもしれない。前倒しの人はせっかちなのか、のんびり屋なのかこれら二つが表裏一体となった概念のようにも思える。
■先延ばしと前倒しのバランスの取れた仕事運びが大切。
■大切なのは、先延ばしでも前倒しでもないバランスの取れた「適時」の決定。
■「適時」の決定のためのスピード調整の目安
①何に対するどのような議論が必要なのかを、早めに明らかにする(スピード重視)
②「慎重に吟味できたか」「機は熟したのか」を確認しながら十分な時間をかけて話し合う(質重視)
③議論の末に合意形成をした後は、早期に決断を下し、行動に移す(スピード重視)
■「やらされている」と感じることによって内発的な動機が損なわれてしまうことを「アンダーマイニング現象」という。
3歳から5歳の保育園児を対象に行ったフィールド実験。絵を描くことに内発的な興味を持っていた子供たちをグループに分け、あるグループには絵を描いたらご褒美があることを伝えた。すると、ご褒美があることを知らされたグループの子供達の方が、知らされていなかった子供たちよりも、絵を描くことに対する自発的な興味・関心が有意に低くなっていた。
Posted by ブクログ
自分は「人生の大切なこと」は、先延ばし派で、自分の「仕事」に関しては前倒し派の複合型という事がわかった。
仕事人間でプライベートを蔑ろにしていることを改めて自覚。
また「〇〇すると効率爆上がり!」だったり、「まるさは鬱になります!」みたいな極端な言葉が飛び交う中で、いろいろ紹介されている研究結果を読んで落ち着いて考え直す事ができる判断材料になりました。
Posted by ブクログ
先延ばし=悪、前倒し=善という価値観を相対化する作品。先延ばしと前倒しは対立概念でないこと、先延ばし派の人と前倒し派の人が協働することでパフォーマンスが上がる可能性が示唆される。
また”課題への取り組み方”という極めて身近な、そして測りにくそうなテーマを如何に実験に落とし込むかということ。心理学の巧妙な実験デザインを知ることができる。
具体的には、頭を使うタスクをしながら水の入ったバケツをゴールまで運ぶ実験があった。
Posted by ブクログ
心理学の観点から、論文をもとに先延ばしと前倒しを考察している。
あくまで考察であり、読みやすい学術書という印象。純粋に書名のテーマが気になる方にはマッチするかもしれない。
一方、学生や研究などの話で、8割出来でも早めに成果物を出し、やり直しに備えるという今どきの仕事術を前提としていないので、何かしら対応策など、ビジネス書を求める方のニーズとはマッチしないかもしれない。
Posted by ブクログ
あなたは、好きなおかずは最初に食べますか?最後にとっておきますか?
ちなみにわいは最初にちょっと食べて、残りを最後に締めくくる派です(質問の意図台無し)
というわけで、心理学の視点で見た「先延ばし派」と「前倒し派」について解説
まぁ、簡単にいうとタスク処理(やらなきゃいけなきこと)を前倒しにするか先送りにするかってことなんだけど、それぞれにメリット、デメリットがあり
決して対立するものでもないってことを数々の実験結果とともに紹介してくれてます
思いのほかがっつり学問
そして、「先延ばし派」と「前倒し派」の共存の方法についても解説
まぁそりゃそやろなってことばっかりなんだけど、そりゃそやろなってことも明確化することは大切よね
あ、わいはもちろん「先延ばし派」です
そして奥さんはがっつり「前倒し派」
意見の相違ばっかりですが、相違を表明することはめったにありません
「平和主義派」ですから(めんどくさいだけ)
Posted by ブクログ
何年か前に「サフラジェット」という原題の映画があった。イギリスで、権威に(時には命をかけて)抗いながら女性参政権運動に身を捧げた女性たちを描いた事実に基づく物語だった。階級社会であった当時のイギリス社会において、時に身分を超えて時代の常識や今以上の"ガラスの天井"にチャレンジする彼女たちの姿に胸を打たれた。
原題の「サフラジェット」とは、彼女たちの運動体を指す言葉なのだそうだが、このまま公開しても日本人には何のことやらわからないというので、日本ではオリジナルの邦題をつけて上映されたのだった。
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本書は「先延ばし」「前倒し」をテーマとしたタイムマネジメント、そしてタスクマネジメントをテーマにした本である。つまり、実は副題が本題である。自分の性格上タスクを効率よく、かつ質の良いものにしていきたいと願う人のニーズに適う一冊と感じた。
著者(前倒し派)は、なぜ一部の人々は物事を先送りにし、また別の人々は時に過剰すぎるほど前倒しするのか、海外の研究(バケツ運び実験をはじめとする地道な基礎研究、性格特性ビッグファイブとの関係について、など。果ては「人間以外の動物にもこうした行動が見られるか」といった実験まで)を引きつつ「先延ばし」「前倒し」現象の背景について紹介している。
「先延ばし」についてはだいぶ昔から研究されているのだそうで、集団生活を送る人間にとってはなかなかの問題であったことがうかがわれる。
ただ、一口に「先延ばし」といっても単にダラダラ問題を見ないようにするタイプと、ギリギリまで粘ってスパートをかけるタイプとでは全く異なるのではないか、と述べられる。後者はある種意図的に時間をかけるのであって、タスクに費やす時間の見積もりがそれなりにできていると判断してもよいのではないか、と。
同様に「前倒し」についても「早いから良い」とは限らないことが論じられる。「とにかく目の前の(面倒な)タスクを早くなくしてしまいたい」という、無意識にせよ認知的負荷を減らす目的で行われる「前倒し」は熟慮のないやっつけ仕事になってしまう可能性もあり、そんな場合は当然「質」が犠牲になるだろう。
本書のタイトルになっている「締め切りより早く提出されたレポートは(略)」は、この現象を指している。
本書においては、それぞれの性格特性によって得意な面とウィークポイントがあり、協働で仕事をする場合にはお互いの性質を理解した上でそれぞれに適したタスクプランを作ることで補い合ってよい成果を出せるようなタスク/タイムマネジメントが提案される。
ただ、特に「前倒し」については研究されるようになって浅いため、現時点での研究成果と筆者の調査研究をもとに…という留保がついているので注意。
このタイトルはおそらく編集者がつけたのであろうが、いかにも「なぜ〜なのか」という、最近ライトアカデミックな領域の本にありがちなテンプレタイトルになっている。
本書の内容とはだいぶかけ離れており、読者によってはミスリードと感じるかもしれない。
まぁ、論文そのままの題では一般読者になかなか訴求しないだろうし、難しいところだと思うので本題を副題にしました、というところか。
でも、これだと本当に届いて欲しい人に刺さりにくいんじゃないかなあ、とか心配だけれども(これ、レビューに低得点つけてる人がいる原因の一つなのでは)。
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映画「サフラジェット(原題)」は、日本公開の時には何と「未来を花束にして」とかいうクソダサい邦題がつけられてしまった(批判が殺到した)。
ポスターも、元のものはいかにも"女性の人権のため命がけで闘った"ことを象徴するようなかっこいいビジュアルだったのだが、かなりソフトな感じ(素敵な女性たちのロマンチックなお話かしら、みたいな)にされてしまい「のぉぉぉ…!」と頭を抱えてしまったのだった。
あのタイトルとポスタービジュアルしか知らなければ、少なくとも私は観に行かなかっただろう。
(素晴らしいのでぜひ観てね)
いっそのこと、本書はもっとビジネス書とか自己啓発系のタイトルにした方がニーズのある人に届いたんじゃないのかなあ。
Posted by ブクログ
先延ばしはよく聞く言葉であったが、前倒しに対してはあまりネガティブな印象は受けていなかった。たぶん、自分もどちらかというと前倒し派だからだろうと思っている。前倒しは認知的負荷を軽減したいといったストレスへの対処であることが記載されており、納得。ただ、これがメンタルヘルスの問題につながらないように気をつけたい。
Posted by ブクログ
先延ばしは必ずしも悪くない。前倒しも全てが良いとは限らない。
多様なタスクに溢れる中で、なぜ人は対応を先延ばしたり前倒しするのか。 本書は様々な実験も紹介しつつそれぞれの考え方を示してくれる。 前倒しという概念がここ10年くらいで研究対象になっているというのは、なかなか驚きだった。自分はどちらかと言えば前倒し派なので、簡単なものを片付けて頭をスッキリさせたいというのは凄く分かる、と思いながら読んでいた。
一方、嫌だからとあまり力を入れないのは、それはそれで問題というのは本書を読んでいて感じたし、先延ばしも締切をオーバーしない範囲でやるのなら良いのではないかとも、読んでいて思うことができた。
Posted by ブクログ
『締め切りより早く提出されたレポートはなぜつまらないのか』(安達未来著)を読む。刺激的かつ挑発的なタイトルである。
最近は以前より余裕を持って仕事を進めるようになった自分が、成長したと感じる反面、締め切りぎりぎりまでこだわる情熱やら努力やらを失っていないかと振り返ることもしばしば。現在の立ち位置を整理したいと思い、手に取った。
タスクを先送りにして取り掛かるのが遅いのが「先延ばし」であり、逆に、早く済ませてしまわないと不安であるという理由で必要以上に早く着手し、締切よりずっと前に仕上げてしまうのが「前倒し」。
これまで「先延ばし」による弊害は多くの人が指摘してきたが、「前倒し」にも良くない面があると本書は指摘する。
著者は「前倒し」派で、夫は「先送り」派であるという。
まあしかし、同一人物の中に両方が共存している筈で、僕自身はようやく前倒しと先送りを使い分けたり併用できたりできるようになったんじゃないかというのが読後感。若い人に読んでほしい。
Posted by ブクログ
今大学生なので、題が気になりすぎて手に取りました。
私は楽なレポートは早めに仕上げる傾向にあるかな、と感じている。
やっぱり重いものは後回しにしてしまう。
それも先延ばし、というもので、前倒しすることの方がすくないのかなと思う。
簡単なレポートも、もう少し調べて仕上げることで、精度が上がってより学習が深まるのだろうと思うため、少しでも良いからプラスで考えることにする!
Posted by ブクログ
先延ばし、前倒しそれぞれの特性が述べられていた。
また必ずしも前倒しが良いわけではないことは新鮮な気づきだった
私自身は前倒しの傾向が強いタイプだが、先延ばしの人の特性を理解しながら協調することが大切だと感じた
Posted by ブクログ
先延ばし=悪、前倒し=善
必ずしもそうではないという視点がわかった。
計画的(戦略的)先延ばしをすることで解決することもあり、使い分けることで効率を上げていく。
自分がやっている仕事スタイルの正当性が示された良本であったが、実験等の例がややわかりにくかった。
ちなみにタイトルの「締め切りより早く提出されたレポート」に関する記述はほとんどなかった。特に物語風といったわけではない。思ってたのと違ったが、学びはあった。
Posted by ブクログ
先延ばしの理由は何となく想像がつくが、前倒しも研究が進んできてメカニズムが明らかになってきたことが興味深い。頭ではわかっていてもなかなから改善できないのがこの手のやつ。