【感想・ネタバレ】黒いイギリス人の歴史 忘れられた2000年のレビュー

あらすじ

「黒いイギリス人」とは、Black Britishの訳語である。「黒人のイギリス人」である彼らは、歴史に翻弄されながらも、「白いイギリス人と女王様の国」では忘れられた存在だった。
「黒人史」といえば真っ先に思い浮かぶのは「アメリカ黒人史」だが、アメリカ黒人史の多くは「アメリカの国内史」として語られるのに対し、イギリスの場合、その黒人史はブリテン島内だけでなく、海を越えて東西にわたる帝国に視野を広げて見る必要がある。ここに「イギリス黒人(在英黒人)」にとどまらない「黒いイギリス人」という語を用いる意図がある。
イギリス史には古くから黒人が姿を見せる。イングランドに最初の黒人女性が現れたのはローマ時代。16世紀チューダー朝の絵巻には王室付き黒人ラッパ手が描かれている。17世紀初頭、エリザベス女王は黒人追放令を発し、シェイクスピアは『オセロー』でムーア人の軍人を主人公にした。さらに、18世紀の新聞の「逃亡奴隷」の広告データベース分析や、アメリカ独立戦争で王党派についた「黒人ロイヤリスト」たちの命運、ロンドンの黒人貧民をアフリカに移送する「シエラレオネ植民計画」の顛末など、「黒いイギリス人」の歴史は「イギリス帝国」の光と影を映し出す。
長期的かつグローバルな視点で、その移動と混合の歴史をたどり、社会的マイノリティの共生の道をさぐっていく。

目次
はじめに:「白いイギリス人」と女王様の国で
序章 「黒いイギリス人」とは誰か
第1章 最初の来訪者たち:ローマ帝国期から近世まで
第2章 逃亡奴隷のプロファイル:18世紀前半
第3章 シエラレオネ計画の夢と失望:18世紀後半
第4章 奴隷解放と「黒人消滅」:19世紀
第5章 世界大戦下の黒人臣民と黒人米兵:20世紀前半
第6章 戦勝国の旧弊:20世紀後半
終章 「イギリスらしさ」を担うのは誰か
あとがき

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ブリテン島における黒人の歴史
・ローマ帝国時代のブリテンにおける黒人上流階級の存在、15世紀のポルトガルを経由した黒人従僕の来住を前史とし、17世紀には砂糖植民地形成による奴隷貿易が興隆。
・18世紀には家内奴隷や従僕として流入、男8割女2割と推計。黒人男性と白人女性との結婚も下層階級では相当数あり
・18世紀末にはシエラレオネ計画。ブリテン島の黒人、ノバスコシアの黒人、ジャマイカの逃亡奴隷を送り出すが、熱病等により多くは死亡。
・1838年に奴隷制度廃止。黒人のシエラレオネやジャマイカ送り出しと同化により19世紀後半にはブリテン島にほとんど黒人はいなくなる。
・第1次世界大戦では黒人の志願兵を忌避。戦後復員兵による失業が発生すると黒人迫害暴動。人種間結婚も迫害。
・第二次世界大戦では西インド諸島を中心に志願兵。戦中の米軍駐留の際には米軍内で黒人兵弾圧の内乱により黒人兵が多数殺害。
・戦後コモンウエルスが形成されると西インド諸島から移民。しかし1962年コモンウエルス入移民法により黒人移民は激減。再度増加するのは労働力不足へ対応するための80年代から。

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2025年07月23日

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