あらすじ
生まれて初めて芽生えた殺意という名の感情。嫉妬、わがまま、欲求不満、不信……どんな女の心にも潜む悪意の種ははかり知れない。殺人事件の起きた部屋の隣に住み続ける女、不妊に翻弄される女、婚約者が突然姿を消した女、わがままで自分勝手な金持ち女、母親への愛情を持てない女……。それぞれが抱いた小さな悪意が導く出来事とは……? 誰の身にも起こりうる事件の背後に隠された女の心理を抉る傑作サスペンス!
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Posted by ブクログ
蝉しぐれの夜に
あるときまで一緒に過ごして、そんなに差異がなかったが、現在は明らかに違う4人の物語。
みんなの心に少しずつの『和希』という人格があれば、傷つかないのにと願ってしまう。現実はうまくいかない、女同士の難しさ。
どこにも居場所のない感情、ドロリとした生ぬるい感情、ヒリヒリとした感情。叫びたいけど叫べない苦しさ。悪びれていない感情が一番トドメを刺す。
喉元過ぎれば、忘れてしまうのは、人間の良い部分でもあり、悪い部分でもある。共感したものは忘れちゃいけない。
ホームシックシアター
類子の日常、とある事件、沢山の手紙、トラブル、引っ越してきた女、何も関係ないようでうまくピタッとはまったときの怖さで一気読み。
オーバーフロー
付き合って三ヶ月で、結婚の話がでてくるが、案の定、会社の存在の不透明さ、浮気相手の逆襲、連絡がとれなくなるなるなど負の連鎖。終わり、よくあるやつかと、思ったが、結婚詐欺に引っ掛かったで終わりじゃなかったのが良かった。
ひとりよがり
お嬢様の無防備さとわがままが招いた悲劇。
お嬢様にはお嬢様の寂しさがあったのだろうけれど、わがままが過ぎると、誰もそこに目を向けてくれなくなるし、人は離れていくよねという展開。
手段、方法、わがままの度合い、優先順位など、周りを巻き込みすぎると最悪のかたちで自分に返ってくる話。この話に出てくる人物は、ほとんど冷たく、自分勝手な人たち。
小指の代償
ずっと、重苦しい話で、三人がこのままでいいはずがないと思っているが、でも、変われずにいて苦しい、でも、変えなきゃいけないと、許すことはできないけど、ほんの少しだけかたちが変わろうとする物語。誰も悪くないはずなのに、みんなそれぞれ、『あの時、誘わなければ』『あの時○○なら…』と苦しみ、みんなそれぞれの言葉、行動に傷つく。
おさななじみ
大事なことは沢山あるのに、いろいろなことがないがしろになっていく現代に、少しだけ疑問を投げかけるような物語。受験に合格さえすれば、常に何かに勝たなければ、いいところに行けば、全て解決するのか?人の心は育つのか…?
Posted by ブクログ
短編集です。
うーん、なんとも読んでいてもやもやする…!どれも面白かったです。一貫してこういうオチなのかと思っていたら、少し光の見える話も用意されていてちょっと安心した。(笑)
Posted by ブクログ
こわっ!
女性だけじゃなくて、男性も怖い…
そして、なんかわかるってのもあって、自分も怖い(笑)
でもあるなぁー、なんかモヤモヤと嫉妬とかイライラとした悪意とか…
怖くて一気に読んでしまった…
2022.1.3
Posted by ブクログ
◆蝉しぐれの夜に・・・不妊に悩む小夜子は、子供に関する無神経な誘いに苛立ちを感じながらも断れずにいた。
◆ホームシックシアター・・・隣室に引っ越してきた女性は知っているのだろうか。その部屋が事故物件であることを。
◆オーバーフロー・・・恋人の宏志の真意が読めず悩むこともあるが、彼の姉の朝子は誰よりも味方をしてくれる。
◆ひとりよがり・・・臓器提供意思表示カードを持っていた私に声をかけてきた男は、妹がレシピエントだという。
◆小指の代償・・・人が変わってしまった佳代の小指を見つけるため、私と猛は雪山を探し続ける。
◆おさななじみ・・・母を疎ましく思う私。いつからこうなったのだろう。
以上6編の短編集。いずれも主人公は女性の、いわゆるイヤミス短編集。
◆蝉しぐれの夜に…1番印象的だったというか、主人公の気持ちがわかる気がするのはこれだろうか。世の中不公平だと思う主たるもの。
◆オーバーフロー…物語として1番うまくできていると思ったのはこれ。うん、こういう詐欺、本当にあるんだろうなぁ。
Posted by ブクログ
不妊治療中の小夜子に友人から届いた胎児のエコー写真付暑中見舞から始まる話、成り行きでドナーカードにサインをした結末のドライブが恐ろしい話、事故で小指を失った友人の吐き出す「あたしどんどん嫌な人間になる」の一連の台詞が胸に迫る話、優等生と幼馴染とピアノ教師の祖母が母へも繋げる絆にじんわりする話等六編。
Posted by ブクログ
女の複雑な心情を描いた短編集。子供の出産と女の友情を描いた[蝉しぐれの夜に]。大音量のホームシアターで近所迷惑をかけているのに無頓着な女が殺人事件の被害者の妹に復讐される[ホームシックシアター]。いつも我慢していた女が結婚詐欺の被害にあい限界に達する[オーバーフロー]。裕福な家庭のワガママ娘が臓器移植のカードを通して知り合った男とのドライブで災難にあう[ひとりよがり]。婚約者と友人との旅行でスノボで失った友人の小指とその指輪を探し回る女の心理を描いた[小指の代償]。近所の幼なじみの女友達と疎遠になっていたがおばあちゃんの好きな銀杏拾いを通して心を通わせる[おさななじみ]。
Posted by ブクログ
女性心理サスペンス短編集。
イヤミス系と前向き・ほっこり系が半々といったところ。
イヤミス系の3つが面白かった。
・蟬しぐれの夜に:不妊に悩む主人公と友人2との話。
・ホームシックシアター:上手い。マンションで、毎夜5.1chサラウンドのホームシアターセットで映画を見るのが楽しみという別居婚をしている自由気ままな女の話。
・オーバーフロー:真面目に生きてきた主人公に恋人ができたが・・・。
Posted by ブクログ
2017年、15冊目は、『イジ女』以来の春口裕子の短編集、6編収録。
今回は、それぞれ、簡単に触れておきましょう。
蝉しぐれの夜に:イヤミス調の一編。この作りは巧い。読後、速効で冒頭に戻りました。
ホームシックシアター:コレもイヤミス調でなかなか巧い。やはり、鍵は「このマンションで、5.1chサラウンドのホームシアターセット❔」だった。
オーバーフロー:マイルドなサスペンス(❔)。コレはタイトルが秀逸。クライマックス前が少し出来すぎかな。
ひとりよがり:不条理系ライト(❔)。コレもタイトルが、ほぼ全て物語ってる。
小指の代償:不条理系ライト(❔)、再び。ただし、コチラはラストが少し前向き。
おさななじみ:最後は、ラストにホッコリする系。目新しさは特にない、ベタな部類。
全体的には、イヤミス的な感触。「蝉しぐれの夜に」の作り。「ホームシックシアター」の伏線の張り方。と、特に最初の二編は、巧いと感じた。一方で、真梨幸子のドロドロなイヤミス。花房観音の丁寧に紡がれた粘度高い愛憎。その辺りが好きな、自分には、短編というコトを割り引いても、全体的に、物足りない印象。(花房観音の)エロ(真梨幸子の)グロが苦手な方向きとも言える。
幾つかの点は見落としても、解説で、ある程度フォローしてくれます。なので、解説の先読みは厳禁。
Posted by ブクログ
女性は怖い、とは言い古された言葉。
なにも怖いのは女性だけではなく男だって怖いはず。
けれど「女は怖い」というフレーズの方が意味ありげであるには違いなく世に広まっている。
本作品は女性ならではの怖さを描いた6編の短編。
それぞれの話から浮き彫りにされるのは、男にとって女性が怖い存在だというよりも女性が生きていく上で彼女達は様々な危険と隣り合わせになっているという怖さ。
男から見ると、怖いというよりも女性は大変だなあと思わせる。
Posted by ブクログ
女性のゾワっとするような話ばかり集めた短編集です。
ホラーになるのかな?
イヤミスまでは行かないけど嫌な女も出てくるし。
女特有のわがままっていうか自己中的な論理とか自分は悪くないって思う感じが出てる作品が多かった。
個人的にはホームシックシアターが好きかな。
自分のせいで他人が死ぬとか究極だけどありえない事でもないんだよね。
ほんの些細な事が他人の運命を変えてしまうという怖さがありました。
Posted by ブクログ
女性の視点で描かれたホラーなのか、イヤミスなのか、どっち付かずの短編を六編収録。単行本『ホームシックシアター』を改題、文庫化。
『蝉しぐれの夜に』『ホームシックシアター』『オーバーフロー』『ひとりよがり』『小指の代償』『おさななじみ』の六編。
ハズレだった。
Posted by ブクログ
すべて女性が主人公で、女の嫉妬や欲望、自意識やプライドといったものがないまぜになって出来上がったストーリーの短篇集である。
サスペンスというジャンルは小説ではあまりもてはやされない気もするが、ああたしかにこれはサスペンスかも、と読み終わって感じた。
イヤミスというほどに人間に踏み込んでいないところとか。
『蟬しぐれの夜に』
は不妊をめぐる三人の女の話。
どんでん返し系である意味後味は一番悪い。
『ホームシックシアター』
打算的に結婚し、愛人を持って自由気ままな別居婚を送っている女が主人公。
世にも奇妙な物語でありそうな展開だった。
『オーバーフロー』
端的に言えば、人畜無害で気配りの人である主人公が結婚詐欺に遭う話だが、人間関係の中で擦り切れてしまういい人を描いたお話として面白かった。
完成度は一番高いと思う。
『ひとりよがり』
裕福な家に生まれ何不自由なく暮らしてきた女王様タイプの主人公が、病気の妹を献身的に介護する男と出会い悲劇に巻き込まれる。
『小指の代償』
スキー場での事故で小指を無くしてしまった友人を気遣うカップルの話。
いくらなんでもそこまでやるか?という違和感がずっと残り続けて話に入り込めなかった。
ハッピーエンドではある。
『おさななじみ』
子持ちの主婦が優等生だった頃の自分を回想する。
母子の関係、自傷行為など現代の病理的な内容盛りだくさん。
ちょっと冗長だった。
文章があまり上手ではなくテンポが悪いところが多々ある。そして全体的に少し古めかしい。
内容もありがち。
暇つぶしにはまあいいだろうという一冊だった。
Posted by ブクログ
嫉妬、わがまま、欲求不満、不信…どんな女の心にも潜む悪意の種ははかり知れない。殺人事件の起きた部屋の隣に住み続ける女、不妊に翻弄される女、婚約者が突然姿を消した女、わがままで自分勝手な金持ち女、母親への愛情を持てない女…それぞれが抱いた小さな悪意が導く出来事とは…誰の身にも起こりうる事件の背後に隠された女の心理を抉る傑作サスペンス。
Posted by ブクログ
まずタイトルからしてなんか怖いです・・・(表紙も怖いけど)
「住む」じゃなくて「棲む」のところが・・・
これは相当女の狂気が渦巻いているのだろうと期待しておりました。
その結果。。。ちょっと期待しすぎた(^▽^;)
全6編なんですが、前半4編は後味悪い系、最後2編はちょっと最後に安心出来る話でした。
解説の藤田香織さんが言う「イヤ汁」はかなり出てますね~。
特に私は最初の「蝉しぐれの夜に」がイヤでしたね。
一番身近に居そうな気がして、最も怖いです(笑)
女が4~5人集まってるとロクな事がないなって気がします。
(あくまで小説内での事ですよ!)
「ホームシックシアター」もかなりゾクっとくるお話です。
知らぬ間に加害者になっているかもしれない恐怖を感じられます。
私は変に期待しすぎた感があるのですが、それでも十分にゾクゾクするようなお話が揃っていました!!