【感想・ネタバレ】デザイン経営 各国に学ぶ企業価値を高める戦略のレビュー

あらすじ

電子版は本文中の写真を多数カラー写真に差し替えて掲載。
どれほど消費者調査をしても、人々が気付いていない未来のニーズは掘り起こせない。
だが、デザインにはそれが可能だ。
本書は、「デザイン経営とは何か」を解説し、デザインプロジェクト中心の経営とは何かを描く。
イタリア、アメリカ、中国、韓国、北欧、そして日本の先進的な企業を紹介し、アパレル、インテリア、家電、自動車など、多様な事例から、デザイン経営の類型と特長を解説し、日本の進むべき道を提示する。


■□■□■目次■□■□■

はじめに
デザインが企業価値を高める
さまざまな「デザイン経営」
デザインの3つの意味

第1章 デザイン経営とは何か
1 デザインとは何か
⒜ビジネス上の問題解決
⒝最終製品の“かたち”の決定
⒞工学的設計
2 デザイン経営の特徴
中心は最高デザイン経営者(CDO)
将来ビジョンを構想する
各国別の特徴
デザイン経営という思想の誕生と変遷
デザイン投資の経済効果
デザイン経営の研究対象

第2章 美しいかたちが良い眺めをもたらす――イタリア
1 友人を迎え入れる場となったキッチン――バルクッチーネの事例
キッチンデザインの3つの軸
美しい眺めのキッチン
自分仕様のキッチン
2 階層から解放されるためのファッション――アルマーニの事例
ユーザーはドラマチックに振る舞う俳優
アルマーニテイストの確立
スケッチから見る特徴
3 市場調査に勝ったピニン・ファリーナ――フェラーリの事例
自動車のフォルムは未完成
フェラーリらしさとは
4 イタリアのデザインプロジェクトの全体像
モデラー・デザイナー・企業家の協業
⒜リサーチ局面
⒝商品コンセプトの決定
⒞試作(かたちの決定)
⒟グッドテイストな商品の誕生
⒠国際見本市への出展

第3章 IT技術でユーザーに寄り添った問題解決を行う――アメリカ
1 EV専業・テスラのデザイン経営
デザインは各ブランドを分ける最後のフロンティア
モデルSの開発
ピックアップトラックと長距離トラック
移動するリビングへ
2 トップダウンでデザイン経営を導入――IBMの事例
デザインプログラム局の創設
ユーザーインターフェースの統一
セキュリティ製品やAIにも
3 ミニマリズムの美学――アップルの事例
ジョブズ、ブルーナー、アイヴ
iPhone の開発プロセス
マルチタッチの優位性
大きくなりすぎたデザイン部門

第4章 工学的な設計でメイド・イン・チャイナを牽引する――中国
1 マイクロ企業が牽引するデザイン経営――ハイアールの事例
人単合一と市場連鎖(SST)管理システム
Win-Win 付加価値計算書の事例
製品のライフサイクルのループを閉じる
2 空撮文化の創造――DJIの事例
エンジニアリング主導の空撮ジンバルの開発
エンジニアの確保
3 中国テイストの模索――奇瑞、吉利、長城汽車の事例
奇瑞のQQme
中国テイストを実現するピーター・ホーバリー
難しかったレディースカーが成立

第5章 デザイン重視のトップがグローバル競争に乗り出す――韓国
1 自社の哲学を反映させる――サムスン電子の事例
第1次デザイン革命宣言
第2次デザイン革命宣言と4つの目標
家電の布置によるデザインの違い
“すっきり”とした見た目の実現
2 韓国初のデザイン研究所――LGエレクトロニクスの事例
見えないエアコン、消えるテレビ
1万3000パターンの床材
3 ファミリーフィーリングの構築――現代自動車グループの事例
シュライヤーによる起亜自動車のデザイン
現代自動車のテイスト

第6章 デザインプロジェクト中心の社風を創造する――日本
1 「造形係長」のDNA――ホンダの事例
グッドデザインの審美眼
Honda e のデザイン
2 地中海の風――バルミューダの事例
テイストの2つの特徴
ファンタスティックなプラスチックの用法
空間ごとに異なる家電
3 子どもの可能性をクリエイトする――ファミリアの事例
ビジュアルプラットフォームの活用
社史に描かれた将来ビジョン

第7章 自然と共生するエコロジカルな人間中心主義のデザイン――北欧
1 バイオ・デザインの先駆け――エレクトロラックスの事例
製品サービスシステムを導入した家電
ペットのような家電
社内のチェックはパス
2 民主的な家具――イケアの事例
イケアらしさの源泉
スタイルと価格のマトリックス
3 ケアの哲学――ボルボの事例
乗員・歩行者・環境に対する配慮
ボルボらしさとは
ソフトウェアで安全性を向上

終わりに――デザイン経営の展望
日本が目指すデザイン経営とは
デザイン企業家の使命
工業デザイナーの役割
うっとりする眺めを創るデザイン経営
幸福な人生を目指して

あとがき

参考文献

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Posted by ブクログ

デザイン経営という考え方について、グローバル企業の具体的な事例を通して学ぶことができた。商品の購買や満足感には空間と調和するデザインが持つ力が大きく、それが企業価値の長期的な向上につながることは納得に値した。バルミューダやダイソン、イケアに現代自動車と、世界中で成功しているデザイン経営の事例を見ると、CDOと呼ばれるようなデザイン責任者が会社の指揮を取れる仕組みだと機能する。アップルではティムクックがCEOになってからは、デザイナーが好きな製品を追求できる環境が無くなったことが近年のアップルの停滞につながってるとされる。今はApple Watchや新しい製品を通して、デザイン的な製品の価値を再創造している段階である。また、日本は視覚公害に汚染されているという指摘も尤もである。本当に心の底から、日本の街並みは美しいと思ったことがたるだろうか?もちろん京都や金沢、熊本や松山、郡山や渋川など、日本中に残ってる市街が美的景観を備えている事例もあるが、多くの日本の街は、看板広告や電柱、電線、ガードレールや乱雑なコンクリート道路、建物屋上の室外機など、見るに絶えない残念な視覚公害が乱立している。これは、ジャパノロジストのアレックス・カー氏に、「日本は近代化に失敗した国」という評価を言わしめている。これからの日本は、高付加価値、高デザインの製品に注力し、再び輸出大国に名乗り出ることが必要である。

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2025年04月27日

Posted by ブクログ

デザイン経営という、抽象的な概念を扱った本なので、難しかったです。
デザインに注力することで好業績をあげている企業があって、それらの企業事例を紹介しています。
この本では、デザインと言っても3つの種類があるとしています。
a. ビジネス上の問題解決
b. 最終製品の「かたち」の決定
c. 工学的設計
この3つが様々な意味で用いられる、ということだそうです。
イタリア、米国、中国、韓国、日本、北欧のいろいろな企業を紹介しています。

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2025年03月31日

Posted by ブクログ

トム・ケリーの「発想する会社」を読んだのは今世紀になってからか…それ以来IDEOに対する尊敬はずっと続いています。個人的な思い出もいろいろあるけど、それはさておき「デザイン経営」というストレートな書名に、これは読まないわけにはいかない、ということでチェックしました。イノベーションの方法論として、この言葉を使う書籍はあったような気がしますが、シンプルにタイトルとして見たのは初めてです。ただあとがきにあるように本書が「失われた30年を取り戻すための処方箋」だとしたら「発想する会社」の時点から日本の経営はあまり動いていないのかもしれません。それが成し遂げられなかった歴史的要因についての著者の視点をいつか読んでみたいです。タイムラインという横軸は置いておいて、本書の優れているところは各国の「デザイン経営」の特徴を詳らかにしているところです。それこそIDEO流のDESGIN THINKIGNGではなく各地の歴史、風土、産業構造に根ざした「デザイン経営」の多様性の存在を知りました。それを「工学的思考」「工業デザイン」「デザイン思考」「工芸(クラフト)」の4つのキーワードから選ばれる3つの円のバランスで分析する手法が鮮やかでした。IDEO出身の深澤直人が現在、日本民藝館の館長も兼ねている意味がわかったような気がしました。そういう意味で工学設計とデザイン施工に注力した米国型に分類される日本のデザインプロジェクトが、美しいかたち重視のイタリア型、クラフト重視の北欧型、バランス重視の韓国型、工学的設計に特に注力した中国型、いずれにも展開しうる可能性と、逆に型を持たない道程の遠さを感じました。一気読みだったので、もう一度ゆっくり読みます。

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2025年06月18日

Posted by ブクログ

事例が豊富で図解がわかりやすかった。
一概にデザイン経営といっても様々なアプローチかわあることがわかった。

デザインプロジェクトのタイプに国別の傾向があり、そこに社会的・文化的な背景が紐づいていることも興味深かった。

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2025年06月11日

Posted by ブクログ

将来のビジョンを打ち出し設計をしていくことの重要性は、製品開発にとどまらずサービスや制度、環境デザインにも通じるので、そこまで話を広げてほしかった。

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2025年05月30日

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