あらすじ
ソニー凋落、トヨタも危ない……日本はなぜ世界で勝てないのか
日本でイノベーションが起きない根本原因は、起業の数が圧倒的に少ないことに求められる。ではなぜ、硬直化した大企業が幅を利かせ続けるのか? ベテラン知日派ジャーナリストが多彩なデータや若手起業家たちへの取材から徹底分析し、日本経済復活の道を示す。
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Posted by ブクログ
雇用の流動化は進んだものの不十分、成長分野への人材移動が進まないと言われて久しいが、さて日本の雇用制度が変われば日本人のマインドが変わるのかどうかは分からない。ボーダレスな世界に生きる私たちが、起業家マインドをもった国民に生まれ変わるためには、また子どもの頃からの経験にまで遡って時間をかけて変わっていかないと大きな変化にはならないかもしれないと感じた。
Posted by ブクログ
著者であるカッツ氏の座談会を拝聴する機会が先日ありましたことから、本書を手にとりました。日本の経済がなぜ近年低迷しているのか、産業の新陳代謝という観点から明解に断じておられます。
シュンペーターの言う「創造的破壊」が、1970年代後半以降の日本の産業で機能せず、急速に発展するガゼルのような米国の企業、アップル、マイクロソフト、近年ではテスラ、などのような企業が日本で出現せず、収益性の低いゾンビ企業が生き残り、雇用の安定を至上命題とする政界と財界の結託から、企業の新陳代謝が進んでいないことに大きな問題あることを著者は指摘します。一例として、2015年時点で日本では1990年以降の25年間に設立された企業はわずか5%であったが、米国では半数近くに上ると言います。
また日本の資本生産性(資本投入による追加的GDP増加額)の低さが、長年の低金利に反映される一方、間接金融が大きなシェアを占める日本で、銀行が担保を重視する与信方針をとるため、起業家が大きな資本を調達することが困難であることから、新興企業が大きく羽ばたく素地が得られていないこと、起業家自身がグローバル視点を持っていないことなどを問題として挙げておられます。
一方、日本が米国のようなモデルを採用することが現実的でないことを踏まえ、筆者は、北欧のフレクシキュリティモデルを提唱しています。これは、1990年代にデンマークで実施された、FlexibilityとSecurityを組み合わせたモデルで、市場経済を重視しつつ、所得安定と平等を図る政策です。
日本に長年住まわれるカッツ氏の、日本経済、そして若い世代への熱い期待を感じさせる本でした。