【感想・ネタバレ】火星年代記〔新版〕のレビュー

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Posted by ブクログ 2024年04月04日

最初どうしてもイメージできない描写がひたすらに続き、これ読み切れるかなと心配していたのだが年代が進むにつれて加速度的に読みやすくなる。でも文明のうつろいを描写で感じることになるとは……。
「優しく雨ぞ降りしきる」のスピード感と「火の玉」における信仰対象への解釈の話がいっとう好き。こういう話、自分で思...続きを読むいつきたかった!というタイプの面白さ。

私にはまだ言語化が難しいところがたくさんあるのだが、先に同作者の華氏451度を読んでいたのでこの辺りは作者のテーマなのかなと思った。たまに殴りかかるような風刺が飛んでくるのでまったく油断できない。
ホラーっぽいなこれ…という描写もちょくちょくあったが、巻末の解説にある掲載誌の話を見て納得した。

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Posted by ブクログ 2024年02月18日

火星がどんな風に侵略されたか、地球はどんな状況なのか、地球人は何を考え火星へやってきたか、それらをいくつもの短編を読んでいくことで把握できるようになっているのが面白かった。喉元にナイフを突きつけられたような恐怖を味わう話もあったし、心を押しつぶしてくるような話や、詩的で美しい話もある。
目線が変われ...続きを読むば見えてくるものも違っていて、それぞれの立場で真実を見せてくれるのが良い。これが一人の主人公の語りであれば偏った情報しか得られないからだ。
いくつか印象的な短編があった。第三探検隊が懐かしさの中で殺された話。地球人の愚かさに抗おうとしたスペンダーの話。火の玉に出会った神父たちの話。死んだ家族を造った男の話。火星人になった話。どれも忘れがたい。きっとこうやって争いや悲しみはひとつひとつ積み上がって、戻れないところまで来てしまうのだなと思った。
ラストの水面を眺めるシーンはゾッとさせられたけれど、それ以降の年代記も読んでみたい。

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Posted by ブクログ 2018年01月03日

火星人と火星を訪れる様々な地球人とのかかわりを、年代に沿ってオムニバス形式で綴った物語。地球人が火星に到達し、次々と開拓していく一方、火星人は衰退の一途を辿る。
事前に全く内容を調べないで読んでおり、地球人と火星人がお互いの利権を掛けてしのぎを削りあう様子を想像していた。それをいい意味で裏切られた感...続きを読む

いくつかのエピソードの中で印象に残ったものは、火星のある家の崩壊にフォーカスを当てて、地球文明の滅亡を描いた『優しく雨ぞ降りしきる』。
かつて地球人が住まい、今は誰も住んでいない家。自動装置だけがさも住人がいるように動き続ける。歌時計の声のモーニングコール、朝食の準備、ねずみの形の掃除ロボット。就寝前の詩の朗読。すべてが行き届いたつくりになっている。ある時一つの事故から火事が起き、自動装置の消火活動も空しく、そのまま家は崩壊してしまう。時間に沿って淡々と描かれていき、静寂と虚しさが強調される。

物語の中で、過去や幻想のやさしさを際立たせるのは、人々の愚かさであり虚しい現実だった。作中で幾人もの地球人が、二度と戻れない過去を火星の幻影に見る。その描写は胸が苦しくなるほどやさしく、豊かである。

また、発表当時のアメリカや周辺の世界情勢の知識があればより楽しめたかもしれないと思う。

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Posted by ブクログ 2017年07月29日

レイ・ブラッドベリの有名な本。出だしのロケットの夏の描写が美しい。
火星人の話が前半にあって、これがなかなか読み進められなかった。地球人が火星にやってきて、定着してからは未知の世界で暮らしていく人々と先住民の話があったりして面白く読めた。
移住してくるのがアメリカ人ばかり。地球で戦争が起こり、火星に...続きを読む住んでいたほぼ全ての人々が地球へロケットで帰郷する。この2箇所は引っかかった。地球から逃げ出した人々、という描写があるのにロケットでほとんど帰ってしまうのは変だと想う。

連作短編集で、いろいろ話によってテイストが異なる。火の玉・荒野などは少し他の収録作品と毛色が違う。

正直読んでいるときはそれほど面白くないと感じながら読み進めていたが、最後のエピソードを読み終えた時は「いい話を読んだ」と満足した気持ちになった。

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Posted by ブクログ 2016年12月03日

物語は2030年1月からはじまる。あらましを序盤、中盤、終盤にわけるなら、序盤はおもに火星人の視点での叙述となる。地球人の訪問と火星人の抵抗。中盤から視点は地球人に移り、ついに彼らの入植が完了する。そして終盤はふたたび火星人の、かつては地球人だった火星人の視点に戻る。およそ27年にわたる赤い星の記録...続きを読むである。

序盤に関して、とかく2031年4月の叙述は、著者のもつ主要なテーマでもあるようだ。未来と過去の交代、奇妙なノスタルジア、動いているのに止まった時間。悲壮感と一種のエクスタシーに満ちた詩のように。

中盤以降、頁をめくる指の動きが早まる。先へ次へ!きっかけは2033年2月の叙述である。地球からの移住者たちがまるでいなごの大群のように火星におしよせる。このあたりから、登場人物は増え火星はにわかに賑やかになる。しかしそれに反比例して、なにやら虚無感が強まる。新しく次々に生まれ出でる入植者の町、しかし傍にはつねに火星人の町、もはや誰も息をしない死んだ町がある。それはまるで、新たな町の行く末を予言するかのように。文明とはなんだろうか。人間の行いとはなんだろうか。それはどんな価値があるだろうか。どんな意味があるだろうか。そう問うかのように。ここで著者の端書きにある「エジプトのどこかに火星」が思い出される。彼の着想にある光景とはまさに、この膨張する虚無感ではなかろうか。新たにできては消える生きた現在と、圧倒的な現実感をもって佇む死んだ過去。
途中の「第二のアッシャー邸」は、全体の流れのなかではすこし趣が異なるが、ポーのファンとしてはなかなか楽しめる。

最終局面のはじまりは、2036年11月の叙述、「地球を見守る人たち」である。地球では戦争が勃発する。母なる地球が燃えるのをみた移住者たちの耳に「帰リキタレ」と電報がこだまする。そして12月の叙述、「沈黙の町」で予言は完遂する。個人的にはこの1話がもっとも印象深い。誰もいない町に突如鳴り響く黒電話ーここでもノスタルジアが物語をより高次の芸術に昇華する。

そして最後の叙述、2057年10月。地球の戦火から命辛々逃れてきた家族が、新たな神話をつくる。かれらはアダムとイヴであり、アブラハムとサラであるだろう。地球人ではなく火星人の。著者は『火星年代記』という神話を編んだ。未来の入り口は過去とつながった。

はじめから読んでも楽しめるが、気になる1話から頁を進めても本作のもつ魅力は褪せないだろう。SFだけれど叙事詩のような、壮大な物語であった。

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Posted by ブクログ 2024年04月11日

・あらすじ
2030年代の火星に地球から探検隊がやってくる。
地球からの移住者、火星人たちの文明と滅亡が書かれた火星が舞台の短編オムニバス小説。

・感想
海外SF小説が好きなYouTuberさんがレイブラッドベリを紹介した動画をみて興味を惹かれ購入。
超超有名なディストピア小説「華氏451度」はず...続きを読むっと読んでみたいと思いつつ未読なんだけど、この作品から読んでみようと思い手に取った。

あまり事前情報を仕入れずに読み始めたので「詩的な文章」という私がもっとも苦手とする表現が多く、抽象的というか想像力が必要な作品で序盤は雰囲気を掴むのにちょっと手こずってしまった。
でも「第3探検隊」からの「月は今でも明るいが」が良すぎて、そこからはブラッドベリの魅力を堪能しながら読むことができた。

特に「月は今でも明るいが」がよかったなーー。
「生きるとは」「なぜ生きているのか」という思春期に誰しもが持つ純粋で普遍的、根源的な哲学的な問いと火星人たちの結論。
科学と宗教と芸術の哲学が生活にどのように染み渡っているか〜的な解釈が好きだった。
物質至上主義の地球人と、執着や即物的な欲望から肉体を捨て去ることで脱却し精神世界に全振りすることで解き放たれた火星人の対比。
先住民族の文明・文化を壊し開拓する人間の傲慢さも描かれてるけど、そういう性質は何年経っても変わらないものなんだな。

のちに第3探検隊の面子が出て来た時と彼らの行く末も退廃的で好き。
最後の短編「百万年ピクニック」が綺麗にこの作品を締めくくってて良かった。

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Posted by ブクログ 2021年01月14日

読んだのが数年前なのでうろ覚えな部分もあるのですが…。
この作品が書かれた当時は、核兵器というものがともかく驚異(今もそれには変わりませんが)だったのだなという感想を読んだ当時は強く感じました。けれど、緊急事態宣言が出ている今は、火星人が絶滅した原因が感染症だったことの方が気になります。私達もSFの...続きを読む世界だけでなく、病原体を宇宙にばらまいているのかもしれません…。まさに、小松左京のあの小説のような驚異を、異星人に与えるかも。このSFの物語が現実になりませんよう。
また、火星人は悲しい最期を迎えてしまうのですが、彼らの文化がなんだか美しくて好きでした。

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Posted by ブクログ 2019年09月15日

ほぼほぼ独立した叙情的な短編から構成されるが、タイトルの通り、火星(と地球)をめぐる小史といった流れ。

別々に見ると毛色が違う作品群であるが、話の筋は通っており、随所に差し込まれる衝撃的な展開を動力に一気に読んでしまった。
私が特に面白かったのは、
『夜の邂逅』『荒野』
いずれもイメージが美しい。

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Posted by ブクログ 2019年05月14日

1999年から31年後にされたそう。2030年からたった27年で地球も火星も滅んでしまう悲しい物語。

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散文ファンタジー

2018年12月30日

不意にSF小説が読みたくなり、おすすめをググった結果出会った一冊。散文形式と、あまりに科学考証が乏しいので、読み出してすぐにどうしたものかと悩みましたが、一応読破。そんな読者にとって、SFとはスペース・ファンタジーなのだと思い至らされた一冊でした。架空の世界で、書きたい主題を取り扱うのに、「考証」が...続きを読むどれだけ必要なのか? 必要ありませんよね。
人類に対する悲観的で、不信感をまとった話の運びのなかに、理由はないけど、ヒトはそれでも生き残るのだという、不思議な万能感を示した一冊。
イーロン・マスクは本当に火星を目指すのか??

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Posted by ブクログ 2017年08月06日

SFの古典を初めて読んだ。各ジャンルのなかでSFが最も苦手である。『月は無慈悲な夜の女王』も『星を継ぐ者』も読み始めて早々と挫折した。読み終えたのは『幼年期の終わり』についで2作目!夢中で読み耽った。
第三探検隊の隊員たちを待ち受けていたのは懐かしい故郷の街並み。とうに亡くなった父母や兄弟姉妹。こっ...続きを読むそりと脱出しようとした隊長に兄だと思われていたものが声をかけた、その場面に戦慄した。
ブラッドベリの文章は叙情的で情景が丁寧に彩色された水彩画を見るようだ。
古典を読む歓びを味わった。

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