あらすじ
「今さら読み始めるのはちょっと……」という人へ
日本最大の現役作家であり、何十カ国語にも翻訳されて文学賞も多数受賞している村上春樹は、国内では「今さら読み始められない」「読んではみたが消化不良」「設定が非現実的で苦手」とも言われてきた。本書は村上研究で博士号を取得した著者が、一般読者向けにごく読みやすい文章で、村上作品へのよくある誤解を解きつつ、どう読めば現代人にとって得るものがあるのかを示す。村上がデビューから一貫して「自由の困難さ」を描いてきたことを指摘し、『ノルウェイの森』や『1Q84』などのベストセラーから「ドライブ・マイ・カー」などの短編、エッセイやインタビューに至るまで幅広く紹介して未読者にも興味を抱かせる、新鮮な入門書。
【内容】
はじめに 苦しみ悩む人々に寄り添い、人生と向き合えるよう背中を押す文学
第一章 村上春樹の読まれ方 ――批評的読解と世界的共感
第二章 村上春樹が考える「自由」とは何か ――地下鉄サリン事件と「単純な物語」
第三章 「橋を焼いた」作家 ――三つの習慣と「意識の整え方」
第四章 『ノルウェイの森』と『1Q84』 ――ベストセラーの“謎”を解く
第五章 諸刃の剣としての「想像力」 ――「かえるくん」「ドライブ・マイ・カー」「海辺のカフカ」
第六章 資本主義社会をどう生きるか ――「交換」から「象」へ
おわりに 自ら作った壁に向き合う
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
村上春樹を読む気が昔からなぜか起きない(村上龍はたくさん読んだ)
映画『ドライブ・マイ・カー』が素晴らしくて、原作を読んだときも映画のほうが断然好きだった^^;
しかーし!
世界的に高い人気を得ているハルキ・ムラカミの話に外国人となったとき何も知らなくてよいのかという危機感からこの本を手に取った
村上春樹のテーマや特徴が分かり易く興味深くまとめられていて、これ読んだだけでも外国人との話はできそうww
でもそういえばこんな事も書いてあったから、
『本当に価値のあるものごとは往々にして、効率の悪い営為を通してしか獲得できないものなのだ。(『走ることについて語るときに僕の語ること』252頁)』
なのでとりあえずまずは1冊、『1Q84』を読んでみる!
※エルサレム賞(イスラエルで最高の文学賞)での受賞スピーチ(2009年)は刺さった (^^)
『Yes, no matter how right the wall may be and how wrong the egg, I will stand with the egg. Someone else will have to decide what is right and what is wrong, perhaps time or history will reveal it. But if there was a novelist who, for whatever reason, wrote works with [the belief of] standing on the side of the wall, of what value would such works be?(どれほど壁が正しく、卵が間違っていようと、私は卵に寄り添います。誰かがいずれ善悪の判断をしなければなりません。おそらく時間や歴史が明らかにするでしょう。しかし壁側に立とうとする小説家がいるのだとしたら、彼らが書く小説にどんな価値があるのでしょうか。)』
For some reason, I have never felt like reading Haruki Murakami (though I have read many works by Ryu Murakami).
The movie "Drive My Car" was wonderful, and even when I read the original work, I liked the movie version much more ^^;
However!
Feeling a sense of crisis about not knowing anything about Haruki Murakami, who is so popular worldwide, especially as a foreigner, I picked up this book.
The themes and characteristics of Haruki Murakami are clearly and interestingly summarized, so just by reading this, I feel I could have conversations with foreigners about him.
But then I remembered this was also written:
"Truly valuable things are often only attainable through inefficient endeavors." (From What I Talk About When I Talk About Running, p.252)
So, for now, I’ll start by reading one book, 1Q84!
Posted by ブクログ
村上春樹の個々の「作品論」でもあり、村上春樹についての「作家論」でもある。
まず作品への分析、解釈は見事である。新書でこのようなものが読めるのは本当に素敵なことだ。村上春樹作品のある種のすごみを感じることができる。資本主義、消費=記号化というシステムの問題とそれへの対抗を掘り下げている。
次に作家論であるが、これはこれまでの村上春樹のインタビューなどを読んでいる人には自明の部分が多かった。ここは文学性には触れず、どことなく人生訓めいているのが気になる。
いずれにせよ、村上春樹に関する、今後の仁平さんのご活躍を期待したい。
Posted by ブクログ
中高の時に、ノルウェイの森や騎士団長殺しなど何作か読んできました。分からないなりに色々解釈していましたが、この本をきっかけに、もう一度「自由」の本質に立ち返って読み直そうと思いました。
Posted by ブクログ
書店で、表紙の色がオレンジ色の新書を探していたところ、この本に出会いました。
そういえば、学生の頃、わからないなりに、『海辺のカフカ』、『ノルウェイの森』、『1Q84』等を読んでいたなと思い出しました。当時、村上さんの作品は難解だけど、美しく、不思議な世界が描かれているなと感じていました。この本を読めば、当時の疑問が少しは解消されるのではと思い、購入しました。
読んでも細かいメタファー等は解明されなかったのですが、村上春樹さんの思想に触れ、自己啓発されたような気がします。率直に言って、読んで良かったです。村上春樹さんの解説本というよりは、自己啓発本として優れていると思います。村上春樹さんの小説を読んでいない方でも、十分に背中を押してくれる内容になっています。
村上春樹さんが、オウム真理教を熱心に取材されていたことや、ランナーであること、等知らなかったことも多々書かれていました。また、小説家になる際に、「橋を焼いた」という話があったのですが、その話はとてもかっこよく、しびれました。
印象に残った言葉も多かったのですが、その中でも特に、以下の一言が短いけど、自分には刺さりました。
「生産性に必要なものは健康と集中力だ」
現代のサラリーマンはいろいろなものを犠牲に働いているけど、生産性を高める方法が間違っているのではないかと、問題提起されているようでした。私も健康と集中力の向上を意識して、日常を過ごそうと思いました。
Posted by ブクログ
第1章 村上春樹の読まれ方
第2章 村上春樹が考える自由とは何か
第3章 橋を焼いた作家
第4章 ノルウェイの森と1Q84
第5章 諸刃の剣としての想像力
第6章 資本主義社会をどう生きるか
Posted by ブクログ
村上春樹を読めない人ではないですが(多分)、より深く、味わいながら彼の作品を読めるようになるガイドブックのような本でした。
未読はもちろん、既読の作品も読みたくなりました。特にアフターダークを読みたくなり、早速書店へ向かいました。
Posted by ブクログ
分かりやすく興味深かったです。これまでもさまざまな村上春樹解説本を読みましたが、クセがなく、主張が強すぎず、内容が無理なく入ってくる感覚で読めました。
Posted by ブクログ
なんやかや1987年の ノルウエイの森 から、村上春樹作品は読んでいる。
面白いのかどうかわからないけど、時代の波に乗り遅れぬようにと。
1988ダンス・ダンス・ダンス 1994ねじまき鳥クロニクル
2002海辺のカフカ と 2004アフターダーク は読んでないかな。
2009 1Q84 2017騎士団長殺し 2023街とその不確かな壁 は読んでる。
一番読み込めたのは1Q84かなあ。3部作。なんかわかった気がした。
一番衝撃的だったのはねじまき鳥の拷問。
短編はNHKのドラマで見た。
『神の子どもたちはみな踊る』より、『UFOが釧路に降りる』『アイロンのある風景』『神の子どもたちはみな踊る』『かえるくん、東京を救う』
かえるくんが一部引用されていたが、のん の声にしか聞こえない。
村上春樹のテーマは「自由」
人は自由を求めるもの、と思いきや、さにあらず。
自分で考え、自分で判断、決断する自由は楽ではない。
人の命令で動くほうが、楽。
そういう人が身近にもたくさんいる。
そういう人が扇動される。戦前のように。あるいは昨今の選挙のように。
そういう人が空気を作る。一人の声の大きい、しかし考えの浅い人の意見に。
トランプを支持するアメリカ人がみなそうなのかはわからんが、、
一日4時間集中してものを書き、あとは走ったり読書したり。ランナー作家。
そこそこ流行っていたバーをたたんで作家に専念した、ストイックな村上。
今までやってきた仕事を辞めて作家を目指して失敗した人はそれなりにいるだろう。
村上春樹は成功した、ってことだ
Posted by ブクログ
村上春樹さんの本は、意味を考えず、ただ夢中になって読んでおりました。
あの独特の読後感が忘れられず、ほとんどの作品は読んでおりましたので、このように注釈頂くと更にまた、ああ読んで良かったなぁと思いました。
ただ、[街と、その不確かな壁]は未読でしたので、内容少しわかってしまったので、あとがき読まなきゃ良かったかなぁ、、とはおもいました。
僕的には村上春樹さん読んでからの方が良いかな~とは思いました。
でもオススメです
Posted by ブクログ
村上春樹の小説を面白く読むための解説本。
村上春樹の小説は、文章は難しくなく、むしろ簡単だが、内容は難解に感じることが多い。
なぜだろう。
村上春樹の文章に慣れていないせいだろうか。
著者は、「日本一の作家がこれほど世界的な評価を得ている背景には、その作品が多くの読者に共感を与える力を持っている。共感とは、対象と自分を重ね合わせることで生まれる感情。その生活や人生を追体験する中で、読者は他者の物語の中に自分自身の姿を見出すことがある。人々が物語に共感を求めるのは、そこに自分自身を理解するための手がかりがあると感じるからだ。共感を通じて、自分と他者とのつながりを再発見し、人生をより深く考える機会がある。」と説く。
村上春樹はインタビューで、「物語のなかでも主人公が個人であること、自由であること、束縛されていないことがなにより重要だ。」と答えている。
そうなんだ、村上春樹の小説の主人公はみんな「自由」なんだ。読んでいてどうも時間がゆっくり流れていると感じることが多い。現代に生きる我々は朝起きてから夜眠るまで何かと時間に追われている。しかし、村上春樹の小説の主人公はみんな「ゆっくり」している。「ゆっくり」生活している。「ゆっくり」料理をしている。「ゆっくり」読書している。どうも自分の感覚と違う。この違いの底辺にあるものは、恐らく、「憧れ」だと思う。主人公に憧れている。それが共感に繋がっていくのだろうと思う。
なにも小説の意味を理解しなくてもいいと思う。小説を読んでその世界に浸ることができればそれでいいんじゃないかな。
村上春樹は、小説家を目指す若者に向けて、まずたくさん本を読むことを勧めている。
村上春樹もこれまでたくさんの本を読んできたことだろう。そう言えば、ご両親はともに国語の教師らしい。幼少の頃から本はとても身近な存在だったのだろう。
小説家とは何か、と質問されたとき、「小説家とは、多くを観察し、わずかしか判断を下さないことを生業とする人間。」と答える。つまり最終的な判断は読者がするということ。読者も自由に判断してよいのだ。
僕が村上春樹の小説でいきなり物凄い衝撃を受けた比喩がある。それは、『スプートニクの恋』ですみれが生まれて初めて同性であるミュウに恋に落ちたときの表現。
「平原をまっすぐ突き進む竜巻のような激しい恋」
こんな表現普通出来ないよね。
いつ読んだかも忘れてしまったぐらい昔に読んだ『ノルウェイの森』など、内容も覚束ない長編小説がいくつかある。読みなおしてその世界に浸りたいと思った。
Posted by ブクログ
世界中に愛読者がいる村上春樹だが、国内には意外に敬遠している人が多数いる。村上春樹はなぜ世界の人から称賛されるのか、また村上作品の根底にあるものとは何か、これらについて本文を解体しながら探っていく。
まず、「『読めない』人のための村上春樹入門」であって、「『読まない』人のための村上春樹入門」ではない。そのため、本書を読んだからといって、「村上春樹って面白そう!読んでみよう!」とはならないと思う。読んでみたことはあるがちょっと難解だった、という人向けの解説文のように思える。ワタクシ自身が「『読まない』人」だったので、その点は非常に残念に思った。
根底にあるものを知り、村上作品と直面した際どのように考えるとより深く楽しめるか、については知ることはできたが、まだその段階で止まっているので、いつかは手を出してみたいとは思った。
Posted by ブクログ
■前説
この本は…村上春樹作品が『読めない』『意味わからん』『途中で挫折した』という苦々しい経験をお持ちの春樹アレルギー患者向けに書かれた〈肩の力を抜いたガイド本〉。
とは言え、僕が抱いた疑問〈はたして、読んだところで苦手意識が和らぐのかなぁ…〉に反してよく売れています。
その背景には『読めないことに引け目を感じていた人』が、少しでも安心したいというニーズがあるからだと見る。そう、『読み通せなくてもちっとも変じゃない』『村上春樹の世界観は独特だから肩肘張らなくていいんだよ』って言ってくれる存在が欲しかった挫折読者にとって、伴走者のような役割を期待してなんだろうと推察。
村上この本に手を伸ばしたのは〈村上春樹の小説に惹かれる理由〉を知りたくて。
これまで『村上春樹のどこが面白いの?』と幾度となく訊ねられ、その度上手く返答できないモヤモヤが残った。よくよく考えれば、そもそもそんな問いかけをするって、決まって村上春樹文学アレルギーの方。力説したところで、のれんに腕押し、豆腐にかすがい、多勢に無勢。トランプ支持者がアンチトランプにトランプ施政の良さを説くみたいなもの…と言うのはちと暴論か。
村上春樹の小説を初めて読んだのは、大学入学が決まり、ホッとした1982年の3月。デビュー作『風の歌』。以来42年。ここいらで一度『なぜ、村上春樹作品に惹かれるのか?』について、綴ってみたい。
■僕は村上春樹作品をこう読んできた
好き嫌い分けるポイントはただひとつ『共鳴』。村上春樹の場合、ホントこれに尽きる。
一般に小説の面白さって、ストーリー展開がもたらす〈快感〉と、書き手の論理と読み手の論理の〈フィット感〉が先導役となり、本に没入していく。
方や村上春樹の小説、特に長編は論理的に整理された『読解』を用いた読み方をすると、大火傷する。ここがエンタメ作品と純文学作品の大きな違いであるんだけど、やがて幻想・ファンタジーという迷宮へと誘われるあたりから付いていけなくなり、挫折へと向かう。『村上春樹アレルギー』の病巣はココにある。
〈論理的読み方=常識という軌道に乗った読み方〉すると、井戸だとか壁だとか、6本目の指だとか、旅館の風呂に浸かってると猿が入ってきて背中を流してくれたり、月がふたつだったり、ブラジルから逃げてきたアリクイの夫婦が突如現れたり…、絶賛『村上春樹ワールド』開催中に触れた瞬間、『メタファーか何か知らんがな、もう勝手にやってくれ!あゝ〜やっぱりダメだ』となる。
反対に村上春樹ファンは、非現実・荒唐無稽さもそれはそれとして受け止め、あるいは受け流し、小説の中に描かれる様々なシーンに、一節に、比喩に…共鳴を覚え、自身の感覚や記憶に置き換えた〈染み込ませる〉ような読み方をする。
付け加えるなら、ストーリーを追うというよりは、『空気に浸かってる』ような感じ。ストーリーについては意味が分からない部分も多いけど、『何か』が確かに残ってる読後感にたゆたう。
おそらく村上春樹自身も『どうぞお好きに読んで〜」って思っているからこそ、その証拠に文庫本に解説を付けいない。
『羊をめぐる冒険』あたりから、俄然『心理世界』が濃厚に描かれるようになった。以来、長編を読む際は『村上春樹の小説という邸宅』にお邪魔させてもらってるような気分で読んでる。その空間には、便利とか不便とか二元論で片付けられない独自の考え方に基づいて設計された間取りと調度品が配置されており、『こういう空間もあるんだー」と興味津々に眺めているような読書体験は村上春樹をおいてほかにない。
数多の文芸評論家が村上春樹にアプローチするのは一筋縄ではいかず、如何様にも解釈される深淵さをたたえているからであり、そして書き下ろしが出る度にまた煙に巻かれるという繰り返し。
■総括
村上春樹の小説は人生のトリセツにはなり得ない、一幅の『風景画」みたいなもの。意味を読み解くんじゃなくて、ただただ眺めて、感じて、味わう。理屈じゃなく“肌感覚”で読める小説だってこと。
行き着くところは『肌合い』です。合うか合わないか。読書は所詮〈娯楽〉です。寛げないものに、合わず必要はないです。
ここまで書いて積年のモヤモヤも薄れた村上春樹解釈本でありました。村上春樹も齢76。はたして、新作を心待ちにできるのはいつまでかなと思う43年目の初夏。
Posted by ブクログ
悪くない本なのですが、「村上春樹を嫌っている人もしくは理解できない人」がこの本を読んで「よし、ノルウェイの森を読もう!」と思うようにはならない……というのが正直な感想。
本書で『かえるくん、東京を救う』からの引用として、ドストエフスキーが
「神が作り出した人間が、その神に見捨てられるという凄絶なパラドックス」を描いた作家、と紹介されている。
申し訳ないが、この本自体がある意味で凄絶なパラドックスだ。村上春樹信奉者により書かれた本で「これを読んだら、あなたも村上春樹が好きになる!」って感じだが、たぶん余計に嫌いになる…というパラドックス。
まあ、村上春樹嫌いは村上春樹信奉者が嫌いなのだろうけど。
私は村上春樹、好きですよ。