あらすじ
仕事で訪れた外国の街のその男は、初めて会ったのになつかしいひとだった……。夜匂う花、口中でほどける味、ふるい傷の痛みが、記憶をたぐりよせる。伊丹十三、沢村貞子、有吉佐和子、殿山泰司など愛読書の頁を繰れば、声の聞こえる思いがする。誰もが胸に抱くかけがえのない瞬間をすくいあげた、こころにのこるエッセイ66篇。
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Posted by ブクログ
伊藤肇さんが「人間的魅力の研究」で、人間に大切なのは「懐かしさ」と仰ってますが、確かに、思い浮かべて懐かしく感じる人たちはみんな魅力のある人ばかりですw。一方、平松洋子さんの「なつかしいひと」(2012.2)は、なつかしいひと、季節のあわい、なじむということ の3章で仕切られた珠玉のエッセイ集です。あわいは「間」、季節の合間とても解せましょうか・・・。どれも心に響くエッセイですが、特に、「猫の音」「23歳の猫の夢」の愛猫に対する著者の思いに心を強く動かされました!
緑萌ゆる若木の季節があった。今は老衰して脚は弱り、排泄場所もいろいろ・・・。持ち上げれば張り子ではないかと思うほど軽い。ガラス戸越しに野良猫、母猫仔猫5匹の隊列が1m近くを通っても、朝の日溜りの中で、目を閉じて惰眠をむさぼる。そんな風に泰然自若している23歳の愛猫へのまなざしがとことん優しい! 平松洋子「なつかしいひと」、2012.2発行、再読。
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平松さんの文章は、情景が詩的に頭に浮かぶからすごい。それも静かな凛とした雰囲気のものが多い。
この本も同様、場面場面が現実味をおびて浮かびあがってくる。
街で会った見知らぬ人から、恋人であろう人、家族など、色々な人、場所が登場する。余韻を残す終わり方が、1話1話、続きを想像させる、いい本だと思う。
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平松さんの文章、だんだんと渋い味が出てきた気がします。
もの静かに日常を見つめ、ひっそりと切り取る、それだけで美しい作品になる…そんなかけらの数々。
物を書く、特にエッセイを書かれる方は皆そうだけど、どうして昔のことを良く覚えているのだろう。
その、一つ一つが、素敵な文章になる。
普通の人が、目にとめることをせずに見逃してしまう事を、そっと引き出しにしまっておく注意深さが、小さい頃から備わっていたのだろうか。
そうだとしたら、もしも全く同じ人生を歩んだとしても、一生が違った意味になって行くのかもしれないなあ…
「いろいろなことが楽しく思い出される一生だった」とほほ笑むのと、「何も変ったことが無かった、ちっぽけでつまらない一生だった」と思うのとでは、やはり幸福感が違う。
しかし…
読もうと思って買っておいた「青い壺」…
あれほど深く読み込まれてしまっては、その解釈に引きずられてしまうかもしれない…
忘れた頃に読もう…っと。
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怒涛のような数で迫ってくるエッセイだが,どれも情景が目に浮かび膝を打つようなものばかりだ.このような文章をさらりと大量に書けるのは素晴らしい.
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つくづく平松さんのエッセイは大人の女性の文章で、一歩引いた目線で静かに物事を捉えておられるな、と感心する。
今回も気になる文章が多数。
「ほんとうにだいじなものは、記憶のなかにこそ静かに潜んでいるのかもしれない」
「現在を支えているのは、おびただしい過去の堆積である。だからこそ、たったいまを生き抜けば現在は更新され、明日へ連なってゆく」等々。
真夏の暑い日に平松さんが作られた、刻んだトマトの入った冷たい茶碗むしをつるんと食べてみたい。
私の地元を「雲の美しい土地」と書いておられて、なんだか嬉しい。
風と共に何処からか雲が低く湧き広がっていく様子が目に浮かぶ。
平松さんのように空を見上げて雲の在りかや風のみちすじをなぞってみたい。
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時々なんとはなしに読みはするものの、個人的に著者のエッセイを読んで「いいな」と思うことが少ない。たくさんの著書を出し人気のある方なので、単なる相性の問題ですね。
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そうだった、平松さんのエッセイを読むと、表現力を磨きたいなあと思うのだった。
「好き」というのを、平松さんだったら、違う言葉で表現する。
真似できない。けど、少しでもいいから近づきたいなあ。
あと、平松さんが使う日本語は、美しい。
読んでいて、背筋がシャンとするよう。