【感想・ネタバレ】感情的な日本語ーことばと思考の関係性を探るのレビュー

あらすじ

日本語論の専門家として多数のメディアに出演してきた著者が、日本語の特徴を歴史的に紐解く。そのメカニズムと私たちの思考との関係性とは?

本文より:

日本語はおもしろい言語です。なにしろここでは、漢字、ひらがな、カタカナ、そして昨今では西洋式アルファベットに至るまで、四種類の「字母」が同時に使われていますし、縦書きもできれば横書きもできる。また、その横書きも、左から右にも右から左にも、自在に書くことができるわけです(戦前はほとんど右から左でしたね)。生まれてこのかた、そんな日本語の中にどっぷりと浸かってきた私たちは、ほとんど意識することもありませんが、これほど変わった言語など、いったい世界のどこにあるというのでしょうか。(…)
使用する言語が何語であるかによって、その人の感性も知性も、そこに形成される思考もすべてが大きく変わってきます。そうした次第は、第一章からすぐさまお話ししてゆくつもりですが、いずれにしても、言語が私たちにとってどれほど重要なものであり、それに関する知見を深め、それに習熟することがどれほど大切であるのか、このことを本書の全体から感じとっていただければ幸いです。
それについては、昨今の「ChatGPT」など「生成AI」の発達により、やがて各言語間の障壁もなくなり、文章の作成もおまかせできるようになるだろうとバラ色の未来を考える向きもあるようですが、それはとんでもない思い違いというもの。もちろん、こうした新しいツール類にはいろいろと便利な使用法があり、時にAIから表現を学ぶこともあるでしょうが、つまるところ、文章をおまかせにすれば、思考そのものをおまかせすることになり、結局は「自分の頭で考えない」クセをつけることになるでしょう。すでにして自力で「考える」まえにネットで「検索する」ことを身につけてしまった現代人にとって、「おまかせ」は「思考停止」の終着点でしかありません。
さて、そうならないためにも、私たちはまずもって、思考と言語とがどのように関係しているのか、そのあたりのことを明らかにしておかねばなりませんね。では早速、言語について問うことから始めましょう。

――プロローグ「日本語はおもしろい」より

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

無意識的な母語のメカニズム全体を見渡す…めちゃくちゃ楽しい。日本語は表情豊か&携帯把握がしやすい反面、論理性には弱い面もある。
母語話者じゃなかったら絶対勉強したくない笑

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2024年05月28日

Posted by ブクログ

日本語は確かに感情的な表現力が豊かな言語であり、文末まで結論が明らかにならない特徴がある。また、多くの和製英語やオノマトペを含む表現力の高い言語でもある、と認識している。将来的には、主語が省略された文章が増え、結論を先に述べる言い方に変化していく可能性がある。
しかし、日本語の中には英語圏で理解されにくいカタカナ英語の使用もある。例えば「シミュレーション」を「シュミレーション」と誤って使ったり、「マニフェスト」を「マニュフェスト」と表記するなど、英語の発音や意味と異なる使い方がされている。また、「ナイター」は「ナイト・ゲーム」、「サラリーマン」は「オフィス・ワーカー」、「ガソリン・スタンド」は「ガス・ステーション」などと英語の表現とは違う点など、日本語は感情的で表現力豊かな一方で、英語圏で理解されにくい言語的特徴も持っている。

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2024年04月21日

Posted by ブクログ

極東の島国、大陸文化への憧れ、八百万の神、異なるものを受け入れやすい民族、短詩形文学による表現、等等、日本語を形作る背景は面白い。やはりAIの時代になっても、言語を学ぶ意味はあると思う。

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2025年07月06日

Posted by ブクログ

昔から聞かされた「日本語は理論的でない」「文末まで読まないと意味がわからない」などの説を詳しく解きほぐしてくれただけで価値のあった一冊。述語を先に述べる英語などは結論の出ている主張にしか使えないという話や、主語と主題どちらに注目する言語化などは、どれも納得がいき面白い。また、「辞」にこだわり「詞」を見失いがちなどといった話は、ものを書く人には割と突き刺さる気がする。

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2024年10月03日

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