【感想・ネタバレ】クリエイティブ・マネジメントのレビュー

あらすじ

■ビジネスに「創造性」が求められる時代

2022年にダボス会議が発表した「世界が求めるビジネススキルトップ10」で
「創造性」が3位になったように、「正解が見えない時代」と言われる今、
ビジネスの現場において創造性(クリエイティビティ)が求められています。

これまでの「良いモノ」を作れば売れた「生産性」の時代から、
「新しい価値」の提供が求められる「創造性」の時代へとシフトが始まっています。

そして実際に、今多くの企業が新規事業開発に力を入れています。

とはいえ、大半の企業が新規事業の開発に苦労しているのが現実です。

「アイデア出しの会議をしたり、社内でアイデアを公募してもアイデアが集まらない」
「そもそもどんなビジネスを開発すればよいのか、これからどんなビジネスが成功するのか、アイデアがまったく思い浮かばない」
など

さまざまな理由があるでしょうが、
要は「新規事業のアイデアを創出して、それをビジネスに育てるノウハウがない」ということです。

それを解決するためのフレームワークが本書で解説する「クリエイティブ・マネジメント」です。

■新規事業はアート思考×デザイン思考×ロジカル思考のかけ算から生まれる

本書で解説する、新規ビジネスを開発するためのフレームワーク
「クリエイティブ・マネジメント」は、次の3つの思考をマネジメントすることを意味します。

・アート思考:創造するスキルと自分起点の内発的なマインド
・デザイン思考:他人(顧客)の思いや行動に共感と洞察を重ねた課題解決
・ロジカル思考:事実にもとづき客観性を持った論理的な思考

この3つの思考を行ったり来たりしながらアイデアをビジネスに育て上げるまでのプロセスが「クリエイティブ・マネジメント」です。

■20年以上の現場での実践から生まれた思考のフレームワーク

「クリエイティブ・マネジメント」は、トヨタ自動車のメタバース「メタポリス」や
内閣府の「地域経済分析システム(RESAS)」など、
多数の新規事業のクリエイティブ・マネージャーを担当してきた著者の柴田さんが、
20年以上にわたって現場で実践したきた経験を型化したフレームワークです。

具体的には、新規事業開発チームが全員で新規ビジネスのアイデアの「種」を蓄積し、
アイデアを生み出すところから、ニーズ検証、経営陣の承認を得て世に出すまでの一連の流れを型化しています。

そして、それは次の5つのプロセスから成り立っています。

①情報の集積
②アイデアを妄想
③ひらめき
④ニーズ検証
⑤事業計画

①~⑤の各フェーズにおいて、アート思考、デザイン思考、ロジカル思考を駆使しながら、徐々に新規ビジネスを開発していきます。

本書では、「クリエイティブ・マネジメント」の基本的な考え方と実践方法を具体例を交えながらわかりやすく解説します。

新規事業開発に積極的に取り組みたい方、自分で新しいビジネスを立ち上げたい方、
そしてビジネスをもっとクリエイティブにしたい方というは、ぜひ本書をご一読ください。

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Posted by ブクログ

『クリエイティブ・マネジメント』は、イノベーションについて書かれた本ではあるが、単なるチーム・マネジメントやクリエイティブの現場のための本ではない。「新しい社会の見え方をつくるための哲学書」であり、そして「問いを起点に再構築していく実践書」である。

この本の軸は、本文にも記載のある「新規事業とは、社会の再構築である」という本質にあると感じた。イノベーションは、プロダクトを作ることでも、サービスを運営することでもない。今ある社会の文脈に“疑問を投げかけ”、そこに新しい意味や選択肢を埋め込む営みこそが、創造の起点であり、マネジメントの役割だ。

本書が描くクリエイティブ・マネジメントとは、“つくること(新規事業)”と“まもること(既存事業)”のはざまで揺れる人々に、「意味のつくりかた」を届ける営みだ。それは、計画や仕様ではなく、見えない関係性や語られていない感情を耕すことで、創造の余白を生み出す仕事である。

何かを“決める”ことではなく、何かが“芽吹く”ように場を整え、関係性を編集し、問いを持ち続けることこそが、マネージャーの真価である。指示を出すのではなく、状況を“整える”。評価を下すのではなく、関係性を“耕す”。進捗を管理するのではなく、信頼を“育む”。そんな“見えない仕事”こそが、マネジメントの仕事である。

クリエイティブの現場において、問題はいつも曖昧で、解は途中で変わり、誰もが不安を抱えている。その中で、マネージャーの役割とは「決める人」ではなく「問い続ける人」であり、そして「編集し続ける人」である。言葉にできないものを信じる力。未完成なものに伴走する覚悟。プロセスをともに設計する対話。そうした一つひとつのマネジメントの行為が、創造の余白をつくり、人と組織の“意味の総量”を増幅させていく。それはもはや、「人を動かす技術」ではなく「人と生きる思想」だ。

そして、これまでのルールや構造に対して、「このままでいいのか?」と静かに問い直す。そこにこそ、事業が生まれる余白がある。著者が刻む「“正しさ”ではなく“らしさ”を育む」「個ではなく関係を見る」「問いかけで場の空気を変える」など、どれも実務に根差した強い言葉たち。それらが机上の理想論ではなく、「具体的な問いと行動」として提示してくれている。

この本は、イノベーションに挑む人たちにとっての、特に破壊的イノベーションに挑む全ての人人たちにとっての「思想書」として、一番最初に読むべきといえる。“人とともに、まだ見ぬ世界をつくる”ための、静かで力強い道しるべとなる。読み終えたとき、頭の中に残るのはただの“納得感”ではない。実際の自分のプロジェクトで試してみたいと思えるはずだ。

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2025年07月26日

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