あらすじ
小学校に通わせてもらえず、食事もままならない生活を送る優真。母親の亜紀は子供を放置し、同棲相手の男に媚びてばかりだ。最悪な環境のなか、優真への虐待を疑い、手を差し伸べるコンビニ店主が現れる。社会の分断を体現する少年の魂はどこに向かうのか。《解説・杉山春》
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Posted by ブクログ
単行本で既読。優真と篤人が生きてて良かった、と思えない。子どもの頃からの教育というレベルでない生活の常識がわからない事を想像できなかった。クリスマスやお正月が特別な日、お風呂に入り歯磨きをする、それを中学生になった優真に一つづつ教えるのは単なる里親を超えている。どんな親の元に産まれるか自分で決められないのに、親の顔が見てみたいと言われる理不尽。最後の目加田の『わからない』、本当にそうだ。正解は無いんだろうけど親の責任が無い親にどう対応するべきなんだろう。里親をして刺された洋子の気持ちが伝わらないのが悲しい。ヘビーな内容だけど素晴らしい作品。
Posted by ブクログ
ラスト1ページ、唐突な終わり方。
涙が止まらなかった。
養母洋子のすべてを受け止める覚悟と真っ直ぐな包容力。
優真の初めて見せる涙と「どうしたら良いのか分からない」という言葉。
健全な親子関係を知らない彼が、初めて親に甘えることが出来た瞬間。
それに応える、養父目加田の「ごめん、お父さんも分からないよ。」という言葉。
ようやくここで心を通わせる会話が出来た2人に、一筋の光をみた。
流石、桐野夏生。
Posted by ブクログ
心優しいコンビニ店員の日加田、実の母とその交際相手から虐待を受ける優真、優真の実の母亜紀、優真が心を寄せる同級生花梨の視点を行き来しながら物語が進んでいく。
紆余曲折あり日加田と彼の妻洋子は里親として優真を迎え入れることになる。優真は中学生になるが、なかなかクラスに馴染めず、問題行動を起こして孤立していく。
でもこれ読者からすると優真くん自身は全然悪くないように思う。彼の行いには問題があるけれど、それはきっと全て彼の成育環境に起因するものだからである。
普通の、一般的な環境で育った人たちは無意識に世渡りの術、社会で生きていく上でのマナーのようなものを習得する。しかし本当の意味で社会というものに触れた期間が足りなかったのだろう、優真にはこれが致命的に欠如している。
また先述したようなものはコミュニケーションを成立させるための最低限の価値観の共有とも同義だ。不適切な距離感や女性に対する歪んだ理想像など、彼の価値観は一般的には受け入れられないものがあった。優真は花梨らクラスメイトと距離を縮めようとするが、どうしようもない。
そう、読者側的には優真くんは頑張っている。えらい。しかし花梨たちにとってはそうはいかない。彼女らも彼のバックグラウンドの一部を知っており、配慮する必要性があることは認識しながらも率直に優真を気味悪がっている。現実に彼のような人がいたら私自身も、おそらくほぼ全員が距離を置こうとするだろう。でもどうしろと? 彼に、彼らに何をすれば、どんな態度を取れば良かったのか? 読み終わってからしばらくするけど全く答えが出せそうにない…。
これが貧すれば鈍する、てことなのかな。でもそれって酷くない? なんかその時々の求められたファッション? 精神性? に適合できないからって集団から弾かれて置いていかれちゃう。それが絶対的なものでもないのに。すごい嫌だ。「普通って何だよ」優真くんの声が痛切すぎる。
わ、もうタイトル回収が秀逸。この言い表せないどうしようもなさを持つ社会からみた優真くんの姿の比喩かな? 私はそう解釈しました。
でもああやって涙を流せるきみはきっともう大丈夫です。他の方の感想を読んでいると救いのないバッドエンドに感じた人が多かったみたいだけど、私はふわっとこれからの優真くんの可能性を暗示してくれる優しさがその涙にちょっとだけ含まれているほんのりと明るいラストに感じました。
文章は読みやすく、人物の心情を丁寧に伝えてくれて感情移入しやすい。それなりの分厚さだったけどすらすら読めた(内容的にすらすら読めるかはともかく)。
本当に考えさせられる一冊でした。読んで良かった。
Posted by ブクログ
優真の境遇に同情し、味方でいたいと思って読んでいたのだけど、彼の行動がどんどん危うくなっていく描写は、リアルすぎて共感もできず、もう優真が分からなくなっていた。
でも最後、洋子に泣きながら抱きしめられた時、優真も自然と涙が出て、やはりずっと親に抱きしめて欲しかったのではと思った。
ここから目加田夫婦と一緒に不器用でも生きていく道を見つけられたら。
Posted by ブクログ
どういう気持ちで読んだらいいか分からなかった。途中からそう思っていたら、主人公のラストの言葉と重なって、そうだよな、そうなるよな、と思った。結局対話でしか解決しないことがあるから対話すべきなんだけど、対話の仕方も分からない、そういう状況。本人にとっては、地獄。
Posted by ブクログ
リーマンショック後の2010年頃、シングルマザーのネグレクトによって子どもが死亡する事件が頻発していた。日本は完全な格差社会になったという認識が一般的になった中、このような事案は今も身の回りで起きているかもしれない。幼少期の経験は人生に大きな影響を与える。この期間で培った価値観は容易には変えられない。最も基礎となる土台の部分が脆いと、その後どう軌道修正しようともいづれ崩壊してしまう。社会の外で生まれ育った人間が、青年期から社会に溶け込むというのはそれほどまでに危うい行為だと理解した。しかし、容易ではないが不可能ではないと信じたい。この書籍の結末では最悪の事態になりかけていたが、それと同時に一筋光が見え、これからの希望の兆しを感じたような気がした。崩壊しても何度でも一緒に積み直してあげる。そんな洋子のような接し方が必要なのかもしれない。