あらすじ
楓はお腹の子の父親である先生と、その妻・野ゆりと暮らし始めるが、先生が姿を消してしまう。二人の同居生活はうまく回りそうにも思えたが、楓には秘密があり、やがて限界が訪れて……。「こんな生活、いますぐぶっこわしたほうがいい」「ぶっこわして、それからどうするつもりなの?」しなやかで爽やかなスタートの物語。
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Posted by ブクログ
形式や型にこだわらない家族の在り方は分からなくもないが、一夫多妻あるいはその逆を受け入れている人は、どんな思いなのだろう?
正妻である野ゆりも、愛人である楓も、パートナーとの関係を考えていないわけではないが、それを越えた先の人生や自分らしく生きることを考え、追い求めているような気がした。だからと言って、正妻と身重の愛人が同居する心理が理解できた訳ではないが、こうした感覚をもつ人が実在するかもという気がした。
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可哀想とか、なんか可愛いとか、守ってあげなくちゃなどと思わせる男。
そういう男って、はたから見たらどうしようもない奴でも、かかわると変な魔法にかかったようになってしまうのかも。
よく分からないけど。
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とても複雑な関係での同居…
作家先生の子どもを妊娠した楓は、先生の実家がある岐阜に引っ越してきた。
先生の妻・野ゆりと3人で暮らそうとするのだが、先生は執筆の関係で、すぐにひとり東京へ。
楓が妊娠するまでのことや妻である野ゆりのこれまでのこと、そして先生の生い立ちや先生の母の死などが、ぎゅっと詰め込まれている。
ありえないことかも…だが、普通であっても普通じゃない家族はそこら辺にいる。
そう思うと変であっても特別に変だと感じなくなる神経に驚きながら納得していることに笑えた。
ふわふわとした考えのない先生こそが、要らない存在となるのか…。
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もうほとんど最後まで自己中の夫太陽にイライラしていたが、さいごの愛人、妻二人の決断、あるいは咄嗟の思いつきに快哉です。
タイトルと表紙の絵から想像した話とは違ったけと、なかなか良かったです。
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タイトルからして変わっているけれど、中身も変わっています。複雑な人間関係だけれど、でも、どこかすっきりとしていて面白いです。先生がつくづくひどい。大地と楓と妻さんがこの後幸せに暮らせますように。
Posted by ブクログ
やっぱり吉川さんの作品大好き! 「私とお腹の子とその妻」という聞いたこともない同居生活の行く末に、私=楓とその妻=野ゆりの境遇にと、ぐいぐい引き付けられるままにほぼ一気に読んでしまった。なにもかもがむちゃくちゃだけど、それはその状況を受け入れられるだけ自由ということなのだという気もして、その懐の大きさがちょっとうらやましくなった。
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妊娠してる愛人を妻のいる岐阜の田舎に連れて帰ったら……というお話なんだけど、吉川トリコらしいゆるりと雰囲気が心地よい。イマドキこんなに稼いでる作家先生って少ないよね。家族ごっこに執着しちゃうのって分かるよ。
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小説家の先生の子供を身籠った女、楓が、小説家の母が住む岐阜の田舎で、その小説家の妻、野ゆりと二人暮らしをすることになるという、ちょっとどうかしている設定。徐々に明らかになっていく楓の過去。若気のいたりで結婚したものの、夫がマルチに嵌って借金まみれで飛んだ。次のパートは野ゆりの章。楓から見たら、田舎で先生の言いなりに、愛人の世話を焼かされている哀れな「妻さん」にも、自分が特別な人生を歩んでいるのだと信じていた時代があった。そしてラスト。子供が生まれ、先生の母親を看取ったのち、二人の選んだ結末は。
先生は都合が悪くなると、女二人を置いて東京へ帰ってしまう。財力があったら、こんなことが許されるのかと腹立たしいが、どうも憎めない人らしい。先生の祖父もまた女にだらしなく、それが許される人間だったらしく、あちこちの女に手を出していたことが、公然の秘密として共有されている、そんな狭い田舎の話。先生の母親も、父親と結婚するより先に、その祖父の愛人だったという過去が明かされる。秘密といえば、楓の妊娠の秘密も最後の最後に明かされる。「お嫁さん」になるために育てられた女たちの、思い込まされている正しさを問う小説か。
楓のパート。恵まれない環境で育った若い女の、何にも期待せずに生きている感覚がとても上手い。
「明日どうなってるかもわからないから今日のうちに楽しんでおかなくちゃという気分があって、だからみんな先のことなんか考えずにその日暮らしでいきあたりばったり、楽しそうな飲み会に誘われたらバイトをドタキャンし、ホストに入れあげて出稼ぎ風俗や立ちんぼで荒稼ぎし、ぜったいにやばいってわかってるのに町で声をかけてきた悪そうな男についていく。より楽しそうなほうへ、より気がまぎれるほうへと流れ流されて、若さを浪費していた。」
野ゆりのパート。平成初期のサブカル少女感が、苦しくなるほどリアル。大学には量産型のつまんない子しかいなくて、酒場で鮮烈な出会いをした「自分を持っている」美大生と、面白おかしい日々を過ごした。40代になった野ゆりは、帰省した際、その過去を懐古する。
「なんだかこの家で暮らしていたころに戻ったみたいだ。世の中のことなどなにも知らず、だれかに深く傷つけられたこともなければ身を引き裂かれるような別れを経験したこともなく、愛するものに拒否されることなんかあろうはずもないと信じて疑っていなかった、幸福で甘えきった子どものころに。」
野ゆりは自分を大事だと思っている。一方、楓は、どこか投げやり。育った環境のせいだろうか。二人とも、母親の干渉から逃れて、必死で自分が生きていく足場をつくってきたのだけど。
大人の野ゆりが、夕陽を見ながら「帰りたい」と思うシーン。どこに帰りたいのかはわからないが、遠い昔に別れてしまった友人に、心の中、ずいぶん遠くにきちゃったねと語りかける。わかる。わかるなあ。
Posted by ブクログ
小説家太陽の妻野ゆり、太陽の子を身ごもった楓に時々太陽の同居生活の物語。
妊娠した愛人を妻と同居させ、面倒な事態になると東京へ戻っていく不誠実でしかない太陽。
愛人である楓を嫌うでもなく、淡々と世話を焼く野ゆり。
太陽の子を身ごもりながらも、正妻の世話になる楓。
サラッと描かれているものの、夫婦+妊娠中の愛人で同居というシチュエーションを何事もないように過ごす3人とも大分キテレツである。
楓と野ゆりの最後の選択にはスカッと爽快な気分になった。
Posted by ブクログ
作家である先生の子どもを妊娠している楓は
本宅のある岐阜で先生の妻・野ゆりと同居を始める。
優しい妻さん。
でも、本当の姿はわからないまま。
第二章は野ゆりのエピソード。
透明で謎の多い妻さんの姿がうっすらと輪郭を持ってきた。
楓と野ゆりが先生のいない時間を楽しく過ごす。
それぞれが迷いながら、もがきながら生き抜いている。
ラスト、そうきたか!!
吉川トリコさんの作品らしい終わり方だと思う。
妻さんに惹かれる。