あらすじ
エリートが組織の「犬」になった瞬間!
最高裁に逆らったら法曹界追放、原発差し止めで出世は絶望、警察リークにのせられて冤罪……。正義の神でもなければ、AIでも六法全書でもない。隠されてきた「ナマ臭い」裁判官の素顔を暴き出す傑作ノンフィクション!
原発再稼働の可否を決め、死刑宣告をし、「一票の格差」について判断を下す――裁判官は、普通の人には想像できないほどの重責を負う。その重圧に苦悩する裁判官もいれば、個人的な出世や組織の防衛を優先する裁判官もいる。絶大な権力を持つ「特別なエリート」は何を考え、裁いているのか?
出世欲、プライド、正義感、情熱…生々しい感情が渦巻く裁判官の世界。これまで堅く閉ざされていたその扉を、粘り強い取材が、初めてこじ開けた。「週刊現代」連載時から大きな反響を呼んだノンフィクションが文庫化!
日本エッセイスト・クラブ賞受賞。
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Posted by ブクログ
2025.03.23
司法、裁判所を取り巻く荒涼とした日本の断面を描いた好著。読む価値あり。文庫化されたものであり、文庫版あとがきがとても良い。
だからこそあえて苦言を呈したい。
第9章と第10章の冤罪に係る部分は「裁判所」にあるいは「裁判官」にその責任を帰するのは少々行き過ぎだと思う。
逆に第11章と第12章に述べられている「司法」と「政治」の関わりや暗闘については物足りない。
冤罪よりこちらを優先して書いて欲しかった。
再度触れる。
文庫版あとがきにある「弾劾裁判所」についてはさらっと紙幅の都合もあるのかもしれないが物足りないし、大問題を含んでいることへの言及が及んでいない。
一気読みの好著であり、続編を待つ甲斐があることを再度強調する。
Posted by ブクログ
残酷な犯罪を扱う刑事裁判や、昨今では飲酒運転での死亡事故などの裁判など新聞紙面で裁判の事を目にする機会は多いです。裁判で判決を書く裁判官とはどのような行動規範を持ち、日々の裁判と向き合っているのか、最高裁判所を頂点とする組織はどのようなヒエラルキーを持つ組織なのか、これらを数多くの裁判官への取材をもとに明らかにしています。
原発の運転可否、一票の格差等々、国の方針が関わる裁判では、最高裁で出された”原発運転認可”や”格差合憲”判決を覆す判決を書いた裁判官は、ほぼ出世の目がなくなるとの事。
1960年代、若手裁判官を中心に「青年法律家協会」という勉強会があったのですが、そこに在籍した裁判官の多くが、出世が遅れ、結果として”上役に物申す”事が憚られる空気に支配されてしまった事。
自身の良心と、出世欲との間の葛藤に晒され、前者を選択した裁判官は冷や飯を食わされる処遇に遭わされ、後者を選択した裁判官が栄達する、民間企業でも役所でもよくある話ではあると思います。それが裁判所も例外ではないという事実を本書は描いています。
死刑判決を巡る章では、死刑判決を言い渡した裁判官の述懐が印象的でした。法律に従い、熟慮を重ねて出した死刑判決について「死刑を宣告する日は朝から極度の神経が張り詰め法廷に入るドアノブに手を掛けた時は、出来るなら逃げ出しもしたかった」との証言や、死刑判決を起案する過程で精神を病んでしまった裁判官の例なども紹介されていて、死刑を宣告することの”重み”を再認識させられました(死刑制度の是非に関する議論は本書ではほとんど触れられていません)。
法曹界の人でなければ普段はほとんど直接関りを持つ事のない”裁判官”という職に就いている人たちついて、本書の内容が全てではないにせよ、様々な葛藤や悩み、人間のドロドロした感情などを抱えながら裁判に向き合っている、という事が伝わるノンフィクションでした。
Posted by ブクログ
裁判官も結局はサラリーマンであり、出世のためには上(最高裁)に阿る必要があるという話
「裁判官は自分と同じ人間である」という当たり前のことを自分自身が意識したことがなかったなと気づいた
原爆に関わる裁判の話はとても面白かった
これを読んでから気になった判決の裁判官の経歴を調べるようになるなど