【感想・ネタバレ】「憲政常道」の近代日本 戦前の民主化を問うのレビュー

あらすじ

現代の出発点は1920年代にあった

東京都知事選や米大統領選など、政党の存在意義がわからなくなるようなケースが増えてきた。一方、政党支持率が落ちても政党の存在を前提とした政治システム自体はびくともしない。なぜか? その理由を、ちょうど100年前のデモクラシー成立の経緯に焦点を当てて説くのが本書である。1924年の加藤高明内閣に「政党政治の確立」を見て、そこに至る過程で「民主政=政党政治」が渇望されていたこと、1932年の5・15事件以後も「政党政治への復帰」が目指されたこと、戦後の「民主化」が言わばその復活強化であったことを明らかにし、「戦前日本=軍国主義」というイメージを吹き飛ばす。「目から鱗」の日本近代史!

【内容(仮)】
序 政党政治のアーキテクチャ:第一次世界大戦後の政治改革
一章 立憲政治の中に育まれる民主政治:日本の民主化と第一次憲政擁護運動
二章 原内閣と憲政会の苦節十年:政党内閣制の準備 1918-24年
三章 護憲三派内閣の矜恃と男子普通選挙制の実現:政党内閣制の成立 1924-27年
四章 大政党内閣とマルチ制度ミックスの変容:政党内閣制の展開 1927-32年
五章 危機の時代の非常時暫定内閣:政党内閣制の崩壊 1932-36年
六章 政党政治家の苦節十年と占領下の再建
結 自由と多様性の基盤を育む:近代日本の民主政治と現在

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Posted by ブクログ

現在の日本の民主政治は1945年の敗戦・占領によって米国から与えられたものという通俗的理解に対し、日本において第一次世界大戦後に確立した政党政治は立憲政治の中に育まれた民主政治であり、現在の日本の民主政治にもつながっているという理解の下、史料を重視する実証研究の成果を基に、主に1918年の原敬内閣から1936年の2.26事件までの政党内閣制の成立・展開・崩壊の過程の総合的な全体像を明らかにしている。
重厚な記述で、なかなか読み進めるのがたいへんだったが、戦前の政党政治の来歴、その意義について理解が深まった。前から関心を持っていた最後の元老・西園寺公望や昭和天皇の人物像についても、本書により、解像度が高まったように思う。
ただ、1920年代以降の日本では政党政治が確立・定着しており、戦後の民主政治にもつながったということはよく理解できたのだが、「日本の軍部が台頭したのは政党が腐敗していたから」という従来の言説に対する批判としては十分に応えられていない部分もあるように思った。形としての政党政治は確立していたとしても、戦前の政党政治が民意を糾合し、社会を統合するという機能をちゃんと果たしていたのかという実質面の分析がやや薄いようには感じた。

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2025年04月19日

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