あらすじ
「日本人が知らない日本語」再発見エッセイ。
日本語を学ぶ人は全世界で400万人にのぼり、今や空前の日本語ブーム。来日した留学生たちを指導する日本語教師の北村さんはこう綴ります。
<文法の教え方に悩み、説明し過ぎたと落ち込み、今日はまあまあうまくいったかなとちいさく自分を励ます、そんなことを繰り返している。あるときから、心の中にひとつの疑問が居座るようになった。
――どうやったら「その先」に行けるんだろう?
継続して勉強していれば確実にうまくはなる。意思を伝えられるようになり、生活上の不自由はある程度なくなる。わたしが知りたいのは、その先だ。自分を表現できていると、どうしたら思えるのか、母語ではない日本語を「操っている」という感覚はどうやったら得られるのか。>(「はじめに」より)
流暢な日本語で活躍する外国出身者9名に根掘り葉掘り聞いていくと、「語彙も文法もひたすら耳から覚える」「単語を“採取”して調べてストック」「1年かけて稲盛和夫の著作を読む」など、独自の言語習得法が続々登場。さらに「汚い言葉が少ない」「『いいえ』は日常で使わない」など日本語の意外な一面も――。
言語を学ぶことの本質に迫る奇跡のダイヤローグ。
(底本 2025年1月発売作品)
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Posted by ブクログ
そういえば昔教える話があったなあ、と思いながら読んだ。興味の持ち方も学び方もいろいろあって興味深かった。インタビューって難しいだろうにすごい観察力。
Posted by ブクログ
私も非常勤講師として、専門学校で留学生たちの授業を担当しています。
もう、数年経ちますが、なかなか思うように、伝えられていません。パソコン用語などでも日本語化しているものもあり、一苦労。
英語もできないので、日本語英語の発音を留学生たちに笑われたりしています。
そんなわけで、少しでも参考になればと思い手にしました。
9カ国9名の日本で活躍する外国人が登場。
日本語教師でもある著者が、それぞれの日本語との出会いや勉強方法をインタビューしています。
日本語の何に戸惑うか、日本語の教育や教材について、日本語とそれぞれの母語の違いについて、という「言語」としての日本語についての気づきも多くありました。
しかし、私が一番、この本で学べたのは、日本語を学ぶ外国人との接し方です。
フィンランド出身のラウラ・コピロウさんは、高校で日本に留学した時のホストファミリーが「(前略)『おはよう』って言うと『〈おはようございます〉だよ』というような感じで、面倒くさがらず指摘してくれました。『いいよいいよ、外国人だから』みたいに扱われなくてほんとうに良かった。いいご家族に恵まれました。(後略)」(126p)
中国料理の大家、孫成順は「(前略)(日本に来て) 3年くらい経って、東京に来てからですね、大変だった。まだ言葉が出来ないから、分からない時に『すみません』って聞くでしょ。東京の人、逃げるんですよ。残念でした」(43p)
著者も書いているが、わざわざ日本に来て、学び、働く人たちには尊敬しかない。
私も日本語しか話せない、異国の地で母国語ではなく、その地の言葉で生活していくことがいかに大変か。二カ国語を話せるという、私よりもずっと能力の高い人たちに教えているなんて。
この本に登場する人たちはいわゆる成功者。しかし、私たちが普段接する、日本で働く人たちはより苦労が多いはず。私の接する留学生たちも、アルバイトに追われ、がんばって生活している。
そんな彼・彼女らに寄り添って接してくれる人々が増えることを願う。
Posted by ブクログ
「イタリア語では言えないけど日本語では言えることもあるし、その逆もある。パターンをたくさん知ると、自分の世界が内側からどんどん広がっていくし、心も豊かになるような気がします」
「…表現が増えると感情も増える。言葉と感情は連動しているからだ。逆に同じ言葉ばかり使っていると、気持ちも単純になるし、表現も平らになる」
留学などで、初歩の英語のみが伝達手段であるとき、思考も単純化してしまうというような記事を新聞で読んだことがあり、驚いたのですが、上記のふたつも同じようなことを言っているのだと非常に興味深く読みました。
それは外国語と母語で起きるだけでなく、母語のなかだけでも起きることだと思います。
本をたくさん読んで、使える表現のパータンを増やし、より複雑な思考ができるようになりたいと思いました。
外国語に関しては、なかなか学習が続かないのですが、思考をより深く複雑なものにするためという動機に基づいて学んでいく方式をとれば、私のようなタイプは長続きするのではないかと思いました。