あらすじ
身ひとつで飛び込んだ米国から、第二の故郷ともなるパリへ。欧州各地、ショービジネスの本場ニューヨーク、革命前の狂騒のキューバまで――。大きく変貌してゆく時代と社会のなかで、戦後の占領下に日本を飛び出し、日本人歌手として女ひとりで異国に暮らし、生きるために歌い、契約書一枚で世界を三周した八年間の移動と闘いの日々の記録。
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Posted by ブクログ
京都のすてきな本屋さんで平積みされていて手にとってみた、恥ずかしながら初めての石井好子さんの作品。そういえば母親の本棚で見かけたことのあるお名前。
語り口は淡々としていながらも情景が鮮やかに見えるようで。(特に人物!魅力的な人達が沢山で、まるで映画を観ているような錯覚に陥った)とても惹き込まれた。戦後の暗い時代をつまずきながらも体当たりで生き抜いていく石井さんの姿、とにかくかっこいいです。
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「生活」で面白かったです。1950年代の8年間、欧米で一人で生きるバイタリティーに圧倒されました。
表現が率直過ぎる…と思ったところも、石井好子さんの周りの人々がリアルに浮かび上がってきて面白いです。周りのショービジネス界に生きる方々もそれぞれバイタリティー溢れている。華やかだけどシビアで、キラキラばかりじゃないところも好きでした。
一章しか割かれてないけどキューバは衝撃…マリアもたいへん濃い人物ではありましたが。
藤田嗣治とアルベルト・ジャコメッティ…凄い。。
欧米とひとくくりにしてしまっていますが、フランス、スペイン、再びフランス、キューバ、アメリカ、最後にまたフランス…なんとなく、パリで1番生き生きとされてる印象です。日本でさえちょっと居心地悪そう。
好子さん、かなり客観的というか第三者目線なところが凄いバランス感覚だなぁと思います。でもそんなところも、好子さんにとってはあとがきに書かれてたような心持ちになるのかもしれません。
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石井好子さんの海外での暮らしのエッセイ。
女ひとり〜ではナチュリストでの一年を中心に書いていたけど、こちらはアメリカやヨーロッパ巡業の思い出も盛り沢山。
その分一つ一つのエピソードはサラッとしてるかも。
異国の地で物怖じせず、その地に馴染む姿に憧れる。
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外国を旅した人たちのエッセイなり随筆なり旅行記なりを読みたくて、贔屓の河出書房から何かないかと探して最初に見つけたのがこの本でした。
物悲しさが全体に漂っていて、読んでいて楽しくなるような本ではないのですが、素直に書かれた文章で全く飽きずに読めました。
私も感じたことが書かれていた解説が気に入りました。
須賀敦子さんのユルスナールの靴の方はイタリア舞台なので全体的に明るいです。
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『女ひとりの巴里ぐらし』同様に、あくまで淡々とした描写から戦後フランスの市井の人々の息づかいが聞こえてくる様が素晴らしかった。
年表からは知り得ない「時代」。
しかも、今から半世紀以上も前に日本人女性が単身異国で生計を立てつつ経験した「時代」であり、密度が違う。
『女ひとりのー』では「ナチュリスト」での1年間について描かれていたが、『いつも異国のー』はその前後関係までがつまびらかになる。
実に8年間世界3周の記録。
彼女の鋭い観察眼は時に自分自身にも向けられており、彼女のエッセイストとしてのすごさはそこにあると思う。
当時の自身のことを「三十を過ぎた、一度結婚にもやぶれた女性」と突き放す一方で、フランスでの日々を「私の力で克ち取ったもので、非常に高価なものであったような気がしていた」と肯定する強さも持っている。
こんな強さ・・・矜持が自分の中にはあるのか、と問いたくなる。
ーそれにしてもフランスでの交遊関係が豪華すぎ。
朝吹登水子、藤田嗣治、ジャコメッティ、ジャン・ジュネ・・・。
ジャン・ジュネの名前を見つけて、読みかけになっている『花のノートルダム』を読まねばと思いました。
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石井さんのエッセイは、「巴里の空の下オムレツのにおいは流れる」以来。
この本は、戦後まもなく単身でアメリカに渡り、その後パリ、欧州、キューバ、ニューヨークとシャンソン歌手として活躍されていた頃の話。
この度胸の良さを私にも分けて欲しい。
いろんな著名人との交流も軽妙にさらりと書かれていいるけけれど、社交的で華のある方だったんだろうなと思う。
読み終えて石井さんの歌声を聴いてみた。力強さの中に包み込むような深みのある声だった。
Posted by ブクログ
終戦間もない昭和25年異国に旅立ち、日本人歌手として海外を回った石井好子さんの約8年間を綴ったエッセイ。
出国当初は会話にも不自由する中全く知らない土地で女ひとり生活出来る所、行動力と社交性の高さを感じ、自発性に乏しい自分と比較して感服しきり。
文庫になる前の本は1959年に発行されたものだそうですが、飾らない素直な言葉で綴られていて、今読んでも鮮やかです。一歩間違えたら悪口? というような友人たちへの評価も、きっと本当に彼ら、彼女らが大切で心配していたからこそ書いたのかなという気がします。
そんな現地の友人との交流などが密に描かれていますが、日本や第二の故郷であるパリへの郷愁が本を通じて伝わってきて、どこか物悲しさも漂う一冊。
石井さんの他のエッセイを読んでいると内容的にかぶっている所もありますが、何処で何をし、何を思い誰と仲良くなったのか等が掘り下げられていて、その時代にこんなに活動的な女性がいたのかと驚くとともに、当時の日本・海外を知る意味でも興味深い。
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昭和のセレブリティシリーズ第二弾。料理の鉄人に審査員でよく出てた女性ですね。高名な政治家の娘で、戦後すぐ離婚(!)してアメリカに留学、その後パリでシャンソン歌手として身を立てた、時代背景を考えてもモノ凄い人。パリのナイトクラブなんて当時から、ドラッグあり・男女のもつれありでかなりアングラな世界。そんななかを、持ち前の社交性と機転、日本女性ならではの気高さで乗り切っていく姿は圧巻。エッセイストとしての力量もかなりのもんです。
Posted by ブクログ
あとがきにあったとおり、やっぱりこの人はお嬢様だったんだなーと思う。
一人で大変な思いをして海外に出て、自分の実力だけでのりきってきたというのは本当のことだと思うけれど、その一方で、なにかというとお金や地位のある人を頼ることができたのがずいぶん支えになっていただろうし、そう言う意味ではすごく恵まれた環境にいた人なんだなーと、辛かったエピソードを読んでもちょっと冷めた目で見てしまう。
お金も衣装もなかったけど夢があったパリ行き、お金も衣装もあるけど夢がなかったパリ行き、そのことを書いてあるところがすごくリアルで良かった。
Posted by ブクログ
石井さんのお料理エッセイを買った時に隣にたまたま並んでいて、
こちらも面白そうだったから一緒に買っていたのを読み終った。
こちらは彼女の歩んできた道、シャンソン歌手として彼女が経験してきたことが語られている。
彼女が海外に飛び立ったのは、昭和25年。
終戦からまだそんなに時が経っていない時に彼女はサンフランシスコへ向かった。
いまの時代だから留学なんて珍しいことでもないけど
この当時、きっと彼女のように女が独り海外へ出て行くなんてとても珍しいことだったんだろうな。
サンフランシスコ、NY、パリ、ドイツ、スイスにキューバ。
彼女が旅した国は数多く、その都度彼女が感じたことがとても素直に書かれている。
彼女の書くエッセイが面白いなと思うのは、決して気取ってはいないこと。
見たものを見たままに、感じたことを感じたままに書かれてるような気がするから
なんだかすっと入っていける。
あまり知りえないこの時代の各国の芸能事情(歌手としての生き方)。
それにあわせて、ところどころからその時代の時代背景もみえてくる。
読みながら、やっぱりこの石井さんって人は
なんともバイタリティーある人だったんだな、と感じた。
ひとりの女性の歩んできた道として、読んでいてなかなか面白かったです。