あらすじ
「自己肯定感」育て、「成長」の希求、「ウェルビーイング」や自発的「リスキリング」の勧め、「自立」の推進、「自分の機嫌」のとり方、「つぶしが利く」能力……。社会でもてはやされる「よりよい生き方」を疑い、軽やかに解きほぐす。
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Posted by ブクログ
能力主義にまつわるエッセイ集。能力主義を起点として、世の中で良いとされているもの(自立、自己肯定感、成長、コミュ力など)について懐疑的な立場から考えを深めていく。
何度も頷くような、これまで自分でも考えてきたようなことが語られている。新しい考え方を得て知見の広がりを感じたというよりも、同じ考えの仲間を見つけた嬉しさを感じた。
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小さな違和感の積み重ねで、違和感がなかったことになっていたり、いつの間にか当たり前になっていたりする。このことに違和感を感じる。この感覚に拘泥していたい。簡単に分かったことにしたくない。
20の概念を問い直すことによって、「自分」を生きる。
1「分ける、分かる、分け合う」
2 「格」
3「能力」
4「自己肯定感」
5「矛盾」
6「ガチャ」
7「つぶしが利く」
8「自立」
9「覚悟」
10「成長」
11「自己責任」
12「リスキング」
13「タイパ」
14「本当に困っている人」
15「対話」
16「人となり」
17「ウェルビーイング」
18「赦す」
19「メリット」
20「躊躇」
・違和感をなかったことにしないこと
・未来の希望のために、現状を問い直すこと
・それを発信し、議論すること
・それが仮にもできるなら、その特権性に自覚的であること
・一連の恩恵を、口を塞がれ、光が当たらない人のために還元すること
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世の中には何か言葉にならない違和感を感じながらも「そういうものだから」と明確な理由もなく受け入れてしまっているものがたくさんある。
人々が無自覚かつ盲目的に正しいと信じ、世間で広まっていくもの、意味が不明瞭もしくは非常に限定的な意味で流布されていく言葉、そのようなものに違和感を感じたら迷いなく立ち止まり、自身の違和感のもと、そしてその問題の奥の奥まで思考を重ねて行きたいと思わせてくれる素敵な本でした。
Posted by ブクログ
優秀で尖った人材をほしがる割に、採用したら組織文化に染まることを強要しその中で尖った成果も求める、みたいな、組織が多いと思うのだけど、組織の問題を個人の能力のせいにしている能力主義のあれこれにそもそも問題はそこですか?という問いを投げかけてくれる本。自分も流してるような事象にあらためて向き合いたい20の問いでした
Posted by ブクログ
言われてみれば、格差の「格」って何だろう?!
小さな違和感に立ち止まり、考えてみる。
最近、能力主義が気になる!
多様性、ウェルビーイング、幸せという言葉に感じてきた小さな小さな違和感。違和感をなかったことにせず、立ち止まって「分け」ずに、その違和感が何なのか考えてみる。
躊躇うことを躊躇わない。
私も大切にします。
Posted by ブクログ
それぞれの章のキーワードとそれに対する筆者の違和感のすべてに同意できるわけではありませんでしたし、どうしてそんなに面倒に考えるのだろう?と思う章もちらほらありましたが、それでも筆者の問題提起=言葉の多義性を無視し、物事を単純化された一元的な正しさに閉じ込め、分けて、分かった気になる世の中に対する問題提起、はとても大事な視座だと思います。
二項対立的に良し悪しを捉える事を疑う思考や、例えば限られた人しか救えないなど、問題の設定そのものを疑ってみる思考は、仕事で追われる日々の生活の中ではとても注意力と労力のいる事だと思いますし、もしかしたら生きづらくなるかな?とも思いますが、ここが岐路ではないか?となるべく立ち止まれるようにしたいと思いました。
多様などと呼ぶまでもなく我々は多様と言う言葉がありましたが、我々日本人が持ちがちな平等観とは異なり、少し宗教的だなと印象的でした。
Posted by ブクログ
「よりよい社会」といいながら実際は排他的だったり、選別的だったり、能力主義やら自己責任やら、よく言われる正論に対するもやもやや「それって?」と立ち止まりたくなること。
組織開発専門家の著者が、そんないろいろに立ち止まり、それってどうなの?と向き合っている20の問い。
なんとなく社会の風潮に合わせて頑張らなきゃ、できないと自己責任って言われちゃう、学び続けて自分をアップデートし続けなきゃ、と追われるように日々過ごしていたけれど、立ち止まって、疑問を投げかけていいんだと思えました。
もやもやをこうして明確に言葉にしたり、ときほぐして考えられるってすごいな。
Posted by ブクログ
p. 57 自己肯定感に問題がある、とうたったところで、自己肯定感を遮二無二いじっても、十中八九徒労に終わる。なぜなら、自分を好きになれない構造が必ずそこにはあるはずだからである。(中略)事実は一つではないし、正義も一つではない。複雑な背景、その人その人なりの合理性が絡み合っている。まずはそのことを紐解くのが、筋ってものではないか。つまり、自己肯定感なるものを上げたいのならば、なぜ自分を好きになれなくなってしまったのか。きっかけは?日々強化されるのはどんな場面で?
そう考えたとき、学校で「自分がもっと頑張れる事は何か?」と宣言させられるようなことが、そのくじかれた自分を信じる気持ちを復活させるものには…なり得ないことに気づくだろう。
p. 173 正当性の香りを醸すものこそ、私は疑うようにしている。
p. 175 包摂に向かわない選別は、果たして誰得なのか?
p. 199 あの人の/自分の、どこがダメか?を見ることが、巷で必要とされる「批判的思考」ではあるまい。それは空しいほどの単なる非難であり、その先に待ち受けるのは排除と拒絶である。
包摂を前提に、批判的思考を真にするならば、次の問いこそが有効と考える。
・聖人君子を求めすぎていないか
・揺らぎある人間に、恒常的に一貫性を求めすぎていないか
Posted by ブクログ
“美しく生きよう! と思うのは、素敵なことだ。しかしそれが目指せることは、社会構造的にすでに特権的であるかもしれない。だから本当の意味で「よりよい社会」 を目指すのならば、とってつけたように、「自己肯定感」を上げようとか、「文化」を変えましょうとか、「美しく」ありましょうとか、そんな話に拘泥していては、芯を食うことはない。”(p.61)
“汎用を脱すると「問題」のある個人、逸脱し
た個人として、排除というリスクにさらされる。学校は、みんながやることに「乗らない」選択肢がほぼない、汎用的人間養成所なのだ。これは、さもないと排除、をちらつかせている時点で、ありがたき教訓のような体をしながら、ほぼ呪いである。”(p.81)
“赦しだか、寛容性だか、広い心がないからこの社会が生きづらいのではなくて、誰かが許容した人しか生きてはいけないかの窮屈さがしんどいのではないか。
ここにいていい人、ダメな人
ここで発言していい人、ダメな人
が選定、選別されていることそのものが、根本的な問題なのだ。”(p.194)
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いやー、面白かったです。
様々な「岐路」がありますが、改めて世の中から求められていることや暗黙の了解みたいなものを一旦立ち止まって考えることは必要だと感じました。
Posted by ブクログ
オーディブルにて。
ガン患者であり、人生の残り時間を実感している著者だからなのか、舌鋒鋭く世の中のモヤモヤに切り込んでいく。特に採用に関する内容が面白い。「プラチナ住所」なる高級住宅街が実家住所の学生を獲る、というのは苦笑した。また、面接時の学生の態度が気になるのであれば、本人のためにその場でアドバイスすべきという意見には大きく頷いた。
Posted by ブクログ
タイトルにある格差の「格」をはじめとして、「能力」「ガチャ」「ウェルビーイング」等の20の概念を軸に、現在の日本が抱える問題点とその背景について、著者の見解を述べている本。
著者は本書の中で、「包摂」という言葉をたびたび用いて、物事の一面だけを捉えるのではなく、幅広い意味合いついて考えを巡らせることの重要性について述べている。わかりやすい「正解不正解」や「善悪」を求めがちな現代においては、広い視野を持ち、受容性を高く持つことこそが、生きやすさにつながるのではないかと、本書を読んで感じた。
Posted by ブクログ
会社の方に勧めていただいた一冊です。
格差、自己肯定感、ガチャ、自己責任、
リスキリング、タイパ、ウェルビーイング…
どの言葉もよく目にも耳にもしますが、
それって本当はどういうこと??
矮小化して、簡略化して、わかった気になっていない?
そこに潜むモヤモヤや違和感について、
問いから始めようという感じでした。
(著者の意向を100%キャッチできてる自信ないです苦笑)
本書ではインタビューなどで交わした言葉や、
その方への解釈?コメント?についても
話が及んでいる箇所があり、
私もここに書いていることが
的外れだったら…という不安が。苦笑
分けること。分かること。分け合うこと。
問題設定は本当に正しいのか?
同一化するのではなく、
それぞれの凸凹を活かして、
どんなものを作るのか。
日々の仕事に追い立てられると、
視野が狭くなり、
相手に対しても要求ばかりして、
自分の都合で話をしてしまうことがあり、
本書を読みながら、
そんな自分を振り返りながら、
視野を少し元に戻してもらったような気がします。
Posted by ブクログ
色々な世の中にあるべき論などの、絶対正義的な顔をしている価値観たちに疲れてしまっている人たちにとって、救いになるような一冊。
何か正しいとされている価値観を見直すような姿勢を持つことを意識させられました。
Posted by ブクログ
耳ざわりよい言葉で分かった気になって、限られた原資を分けることに違和感を感じなくなっている。「分け合う」と「分断」の掛け違い、組織問題の個人能力へのすり替え、頭では理解できても流されがち…課題認識し、疑いの心を忘れない人でありたい。
Posted by ブクログ
面白かった。
より良い社会を目指す先にある、タイパ・自己肯定感・成長・能力等など,,の言葉に疑問を投げかけている本。
問題を見つけた時に何かしてないと落ち着かないから、
表層的な回答に飛びついて、解決した気になっている状況ってよくあるよなと思った。
なぜそうなっているのかや構造上の問題をとらえないと本質的な解決はしない。
でも一周回って、
社会を前に進めてる多くの人は本質的な解決なんて求めていないんじゃないかなと思う。
何から行動して解決した気になれて、周りも「あの人は行動した、よくやった」って評価されるし、自分も「これだけやった」って納得できる。
本質をとらえようと時間をかける方が「スピードが遅い」「愚かだ」と捉えられるし。
何かしら動けたらそれでいいんじゃないかな。
それでよくない人って社会的弱者だったりが多いけど、わざわざそこに目を向ける人って少数なんだろうな。
そんなに急いで前に進んで、どこに行くんだろう
私は前に進むためではなく、より多くの人が幸せになれる世界を創るために動きたいと思っていたけど、この社会だとよっぽど権力持たないと無理だなと思っちゃった。
Posted by ブクログ
LEGOの由来が、leg godt(デンマーク語でよくあそべ)だが、本来は、「実験的にやってみる」だが「とりあえずやる」事だと知った。たくさん持っていたのに初耳だったな。
リスキリング、ガチャ、リスク回避、タイパ、ウェルビーイングなどに疲れつつある私。
Posted by ブクログ
より良く生きていくには?というお題を与えられた時に、当たり前の前提としていたこと。それって、自分できちんと考えたことだったのかと言われると、答えは間違いなくNO。
著者の言うように、無自覚のうちに思い込みがあったなと思う。
この本の中では20の問いが投げかけられている。
どれも興味深かったけど、特に印象的だったのは「自己肯定感」について。
日本人は自己肯定感が低いとよく言われる。そこで、自信を持てるように頑張ろう!と。
もっと努力しないと得られないのが自己肯定感かというと、それは違うとはずなのに…
存在そのもので感じられるはずのものが、知らず知らずのうちに努力前提になっている怖さ。
前提から疑ってみることが大事なんだと気づかせてもらった。
Posted by ブクログ
【目次】
プロローグ――岐路に立つ人へ
立ち止まれない人々/擬態する岐路/岐路に気づき、「自分」を生きる20の問い
第1章 分ける、分かる、分け合う――違和感との出会い
ご意見番現る?/ファスト化する「わかる」/「分断」と紙一重/問い尽くしているか?
第2章 格――の差?
「格」が気になる私たち/階級と無縁と思われた日本社会の盲点/耳目を集めてこその社会運動/だからと言ってこれからも「格差」でいいのか?/各々から成る木
第3章 能力――二の句が継げない「カルチャーフィット」
「できる人」の目印?/「プラチナ住所」/恣意的な「能力」評価/やさしいようでやさしくないことばたち
第4章 自己肯定感――自信を持てるように頑張ろう?
「これからの時代」に「求められる人材像」/破綻寸前の自己肯定感/もっと頑張る、もっと努力する前提/組織文化を変える、の真意/「美しく生きる」の舞台裏
第5章 矛盾――ヒューマニティを取っ払う先
矛盾を検知? AI面接/コンビニおでん売り上げ日本一の人間味/矛盾なき人が集まって作る組織の行方/整合性のために自分を裏切る/凹凸を組み合わせてチームを作る
第6章 ガチャ――確約は正義なのか?
「将来の不安」の特効薬?/不確実性が直ちに問題なのではない/職場の個人の不運は、組織の問題
第7章 つぶしが利く――汎用化が孕む凡庸化リスク
「若者のリスク回避志向」強まる!?/飛んで火(競争)に入る人々?/汎用性と凡庸化/「無能化」のコスパを選ばないといいが
第8章 自立――した人間とは?
半チャンラーメンのありがたみ/ひとりでできるようにならないと「苦労するのはこの子」/未熟上等/持ちつ持たれつ、組み合わせてこそ
第9章 覚悟――結果論かつ強者の論理
「その程度の覚悟なら」/後付け、強者の論理/線虫と覚悟/「覚悟」の前に「弱さ」を認めること
第10章 成長――後退、停止、逡巡の価値
「成長」という宿命/「成長」がない、とはどういうことか/無視された多義性/二元論、断定を超えて
第11章 自己責任――応答からはじめる関係性
賛否ある「自己責任」に必要な問い/私が悪いんです/「自己責任」の現在地/応答しつづけること/ケア対象を絞る逃げ口上
第12章 リスキング――「生き残り」をかけるのは誰?
「リスキングしないと生き残れないよ」/ねじれた日本版「リスキング」/抜け落ちた「成果」の議論
第13章 タイパ――納得した感
「タイパ」という人生戦略/急がば回れ、誰よりも速く?/自作自演の納得感
第14章 本当に困っている人――絶望選手権と化す裏の顔
人を助けるとはどういうことか/助けなくていい、もっともらしい理由/「大変な人」優先/絶望までも競り合う/かけ合いからはじめる
第15章 対話――見え透ける特権性
「鼻クソ」ラジオと福祉/〈居場所〉だなんて思ってない/コモディティー化する〈対話〉/権力勾配や情報格差ありきの「闊達」な議論/〈対話〉の特権性
第16章 人となり――組織の問題を個人化する装置
「ウホウホ」と選抜/放置される就活茶番と問題の個人化/〈見極める〉のではなく組み合わせを考える/一枚上手の「マウントフルネス」
第17章 ウェルビーイング――連帯のかけ声になりにくい理由
渇望される「しあわせ」/「健康」から「健全」へ/個人のしあわせ論に回帰してないか/希望の前に絶望を見よ
第18章 赦す――広い心と笑顔があればいいのに?
「これからん社会に必要なこと」言説/神じゃあるまいし/すでに在る、有る/赦せない、不機嫌な人?/壮大すぎる人間観/武装解除でつながる/はいダメ―の前に
第19章 メリット――という気まぐれ
「暑すぎる!」の10分後/気まぐれな日常/「メリット」という快不快と少子化問題/既知のものしか「メリット」にならない
第20章 躊躇――躊躇うことを躊躇わない実践者であるために
正論が飛び交うコーヒーショップ/よくしようとして、悪くなっていないか?/全体性を探して/言い淀み、二の足を踏みながら
エピローグ
ってことですよね構文/「ものわかりの悪いコンサル」/能力主義の無力さ――構文再び!/岐路に立ち、弱いまま生きる