あらすじ
100円ショップ最大手チェーンを黎明期から支え、出資も受けていた「近畿用品製造」。大量発注を受け、「絶対に潰れることのない会社」と言われていた。タイに自社工場を構え、タイ、ベトナム、インドネシアなどの工場から商品を仕入れるなど業容を拡大していく。
しかし製造コストがジワジワと上昇、同社の経営基盤を蝕んでいた。表向き好調な決算を装いながら、実際には3種類の決算書をつくる粉飾決算に手を染めていた――。
東工大を卒業、DeNAを経て起業した若手社長は、電力自由化の波に乗り、電力の供給をAIで分析するクラウドシステムをつくったと発表し、多額の出資を集めたが、同社が開発したとしていたシステムにはまともなプログラム言語が使われておらず、その実効性が疑われるものだった――。
その他、会社名義のクレジットカードで旅行やブランド品の購入など多額の支出をし、夜の繁華街で豪遊していた社長。
90歳を超えるまで自分が実質創業した会社の経営権を手放そうとせず、趣味の美術品を買いつづけた社長など、「倒産」の背景には様々な人間ドラマがある。
新型コロナウイルスの感染蔓延に対し、政府は担保なし、金利なしの「ゼロゼロ融資」によって資金を供給し、その間企業の倒産は急減した。しかしそんな「あぶく銭」はいつまでも続かない。
時代の変化に応じてビジネスモデルを変えられなかった企業は、円安、資源高、人件費の高騰などに見舞われ、たちまち資金繰りに窮することになった。そしていままた、会社清算、会社更生法・民事再生法適用など様々な形での倒産が急増している。
60年にわたって「倒産」の現実を取材・分析しつづけてきた日本最高のエキスパート集団が、2021~2024年の細心の倒産事例をレポートする。産」の現実を取材・分析しつづけてきたエキスパート集団が、2021~2024年の細心の倒産事例をレポートする。
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Posted by ブクログ
コロナや人材不足が倒産に拍車をかけている。
本書を読むと、上記の認識があらためて強まってくる。 中にはコロナ禍で受注増えたという会社もあるが、結局人材不足で質が低下したコンサル会社の例が印象的だった。他にも、外部環境の変化に耐えられない(業態転換できず、補助を受けたばかりにズルズルと)も、この時代は変化が早いので厳しいのだと感じた。
一方、長きに渡る粉飾決算の果てに…という会社もちょくちょく出てきて、そんなにいるもの、そして意外と気づかないことが多いのだと驚いた。
Posted by ブクログ
倒産した企業たちの経緯や理由が描かれている。
やはり自分をよく見せようと、身の丈以上の投資を行ったり、粉飾で誤魔化したりすると、行く末は倒産なのだろう。
タイトルの運命の分かれ道というよりは必然。
Posted by ブクログ
国内最大手の信用調査会社として、直近の倒産事例を取り上げている。
事業環境の変化への不適合や、不正、経営の失敗など事例はあるものの振り返ればどこにもターニングポイントはある。
その当時に気付けないのは仕方ないものの白井松器械の粉飾を他の関係者よりも一歩早く突き止め回収を図った銀行員のようにアンテナ高く、察知できるような人でありたいと思う。
Posted by ブクログ
パネイル=期待のユニコーン候補。中身は単に新電力だった。実態が伴わず、期待が大きすぎた。全自動衣類折りたたみ機のセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズも同じ。
SD21ヨシダ=粉飾決算。1台の複合機販売で2重リース契約を結んだ。仕入れがなく粗利が高くなり決算書の内容がよくなって、金融機関も騙された。詐欺罪で実刑判決。
p30
Posted by ブクログ
タイトル なぜ倒産 運命の分かれ道
著者 帝国データバンク情報統括部
発行 2025年1月15日第一刷発行
仕事柄、与信管理や経営分析には興味がある。倒産した企業の背景を学ぶと得るものは大きい。内容の割にかなり軽いタッチで描かれていてサクサク読める。
この本はコロナ禍発生の後に倒産した企業にフォーカス。読んでいてわかるのは、コロナ禍による経営環境変化は、倒産を加速しているだけで、本質は別にあるということ。決算書粉飾や循環取引など、古典的な手段が現代でも脈々と使われ続けていること、根本的な経営課題への対応を先送りする体質など、コロナ禍とはおよそ無縁な背景が大本にはある。