あらすじ
某市立高校の芸術棟にはフルートを吹く幽霊が出るらしい――。吹奏楽部は来る送別演奏会のための練習を行わなくてはならないのだが、幽霊の噂に怯えた部員が練習に来なくなってしまった。かくなる上は幽霊など出ないことを立証するため、部長は部員の秋野麻衣とともに夜の芸術棟を見張ることを決意。しかし自分たちだけでは信憑性に欠ける、正しいことを証明するには第三者の立ち合いが必要だ。……かくして第三者として白羽の矢を立てられた葉山君は夜の芸術棟へと足を運ぶが、予想に反して幽霊は本当に現れた! にわか高校生探偵団が解明した幽霊騒ぎの真相とは? 第16回鮎川哲也賞に佳作入選したコミカルなミステリ。
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Posted by ブクログ
学園モノって個人的に好きな部類。巻き込まれ体質な主人公と空気読めない系の探偵役と個性的な文化系部活の面々。すごい王道な枠組みなんだけども、ついつい読んでしまう。
ただ、ミステリーとしてはちょっと弱いだろうか。助けた人が実が善人ではなかったとか、その人の物語でミスリードを狙ったとか、全体としての展開はあるんだけども、1つ1つの謎が少しばかり弱いのかなぁ。ちょっとずつ盛り上がっていくところなんだけども、ホップ・ステップ・ジャンプになりきらず、もったいない感じ。特に首なしの遺体がでてきた部分が蛇足に見えてしまう。伏線としての埋め込みがもちっと欲しかったなぁ。
Posted by ブクログ
各キャラの個性が強く、把握する前にどんどん話が進んでいってしまう印象。
ただの都市伝説、幽霊騒ぎがまさか犯罪絡みの事件に発展するとは…
犯人が捕まり一安心、事件も一件落着。
となった次の瞬間、またもやどんでん返しが起こると言う展開。
終わりは少し物悲しい感じがしたけど、都市伝説が完全な都市伝説じゃなかったと言うオチが面白かった。
Posted by ブクログ
2021/3/8
名前が!名前が覚えられません!
特に女の子。
いやぁ老いた。戻って確認しようとさえしないのが老いた。
文芸部先輩が好きなタイプなんだろうけどちょっと物足りぬ。
みんなかわいいけど若い子区別つかないよ~っていうオッサンオバハンの心境。
いやオバハンやから仕方ないのか…
Posted by ブクログ
〇 概要
丘の上にある某私立高校には,文化部が集まる「芸術棟」と呼ばれる校舎がある。その校舎には,フルートを吹く幽霊が出るらしい。幽霊の噂に怯えた部員が練習に来なくなってしまったので,幽霊を否定する必要に迫られた吹奏楽部部長に協力を求められ,主人公,美術部の葉山は演劇部の三野とともに,芸術棟に足を運ぶ。予想に反して,幽霊が本当に現れてしまい…文芸部の伊神は真相を究明するために捜査を始める。にわか高校生探偵団が解明した幽霊騒ぎの真相とは?
〇 総合評価 ★★★☆☆
青春ミステリ。殺人は起こらず,芸術棟という文化部が集まっている校舎での幽霊騒ぎが中心。そこに「立花」という学生の失踪と,消費者金融からお金を借り,自殺を偽装しているという「豊中浩一」という男を絡ませ,ほどよく読者をだます構成になっている。
学校を舞台とした青春ミステリといえば,「文化祭オクロック」や「体育館の殺人」など,いくつか読んでいるが,その肌触りに近い。社会人になって10年以上経ってから,学校を舞台にしたミステリを読むと,もはやファンタジーというか,リアリティを感じない。なんとなく,懐かしい感じはある。
ミステリとしては,幽霊騒動のトリックが物理トリックで,「ふーん」としか感じられないのがマイナス。立花さんがちょい役と思っていた美術部講師の百目鬼と結婚するというくだりや,三野が幽霊騒ぎまで起こして匿っていた豊中浩一が,実は犯罪者だったというオチはなかなか驚ける。しかし,伏線がそれほど張られていないので,やられたとまでは思わない。
全体の雰囲気と読みやすさは評価できるので,佳作という感じ。似鳥鶏の作品らしい作品といえると思う。
〇 サプライズ ★★★☆☆
幽霊騒ぎは,影絵とプロジェクターという物理トリック。サプライズといえば,美術部顧問の百目鬼と妊娠して学校を辞めていた立花との恋と,三野がかくまっていた豊中浩一が,いい人ではなく犯罪者だったという部分。いずれも,それなりのサプライズはあるが,そもそもサプライズを狙った作品ではないし,伏線も,それほどない。★3かな。
〇 熱中度 ★★★☆☆
デビュー作らしい無駄のない作りで,中だるみはない。ただし,出てくる事件が幽霊騒ぎで,謎にそれほど魅力がない。熱中度も普通か。
〇 インパクト ★★☆☆☆
とって付けたような,豊中浩一の存在くらいしかインパクトに残らない。幽霊騒ぎのトリックが物理トリックなのもマイナス。登場人物も,学園ミステリではありがちなキャラばかり。ということでインパクトは薄い。
〇 読後感 ★★☆☆☆
ややビター。三野は豊中に騙されていたわけだし,秋野も東に遊ばれていた感じ。死体が発見されて芸術棟は使えなくなっている。立花も,百目鬼と結婚する予定とはいえ,実の父ではないわけで…。作品全体の雰囲気は軽めの文体なのだが,あらすじはビターという感じ。
〇 キャラクター ★★☆☆☆
主人公は,ありがちな等身大で特に才能はないけど,妙に女性に好かれる文化部(美術部)員。探偵役は物知りの先輩。友達役のややひょうきんな演劇部員が,幽霊騒動の黒幕で,おとなしい同級生の女性,そのカレシのちょっと悪い先輩と,どこにでもありそうな青春モノ・学園モノのキャラクターがてんこもり。それなりに個性はあるが,まさに,ステレオタイプ。入り込みやすくはあるが,この作品ならではの魅力的なキャラクターとはいいがたい。
〇 希少価値
「戦力外捜査官」がテレビドラマ化されるなど,著者の似鳥鶏が割と人気作家になったので,希少価値はあまりない。仮に,似鳥鶏の人気が落ち着いても,創元推理文庫なので,手に入らなくなる可能性は低そう。
〇 メモ
〇 プロローグ
消費者金融から金を借り,返せなくなって自殺を考えている男の手記
〇 一日目の幽霊
「壁男」と立花さんの幽霊が出るという噂により,練習ができなくなった吹奏楽部のために,高島(吹奏楽部長),秋野(吹奏楽部),葉山(美術部),三野(演劇部)の四人は,夜,芸術棟に忍び込む。実際に幽霊のような存在を目撃する。
〇 二日目の幽霊
一日目の幽霊を,伊神(文芸部長)と葉山が捜査する。邦楽部の捜査,演劇部の捜査,吹奏楽部の捜査を経て,伊神は謎をとき,一日目の幽霊が「影絵」のトリックであったことを見抜く。しかし,トリックを見抜いたのもつかの間,裏方として幽霊のトリックをしこんでいた三野が,別の幽霊を目撃したという。
〇 三日目の幽霊
三野がCAI室で幽霊を目撃したので,そのトリックを暴くために,伊神,高島,東,秋野,葉山は,CAI室に忍び込む。この日はCAI室ではなく,芸術棟に「壁男」の幽霊が出る。伊神,葉山が芸術棟に行くと,そこには演劇部の柳瀬がいた。芸術棟には何もなかった。その日は,警備員に見つかるが,柳瀬の演技により,警備員をごまかし,六人は無事帰宅する。
〇 幕間
「豊中浩一」という男が入水自殺をしたという情報
〇 四日目の幽霊
伊神は「ウイリアム・ジェームズの法則」を引き合いにだし,前日の幽霊もトリックだと主張する。葉山は柳瀬のお見舞いにいく(このとき,伊神は葉山に花束を持たせる。花はアネモネ(=君を愛す),リンゴ(=誘惑),キンギョソウ(=欲望),アイリス(=私は燃えている),折れているアザリア(自制心)というもの。柳瀬は,偽のメール(送り主が葉山だと思った)により,芸術棟に呼び出されていた。
〇 五日目の幽霊
東が幽霊騒ぎの犯人の1人だと推理した伊神は,東を呼び出し,自白を迫る。東は壁男の幽霊の共犯者だった。東は立花が好きだったので,急に行方不明になったことを疑問に思い,居場所を知るために「立花が壁男に殺されて幽霊になった」との噂を広めていた。
立花が登場する。立花は妊娠し,学校を辞めていた。立花は美術部の顧問の百目鬼と結婚するという(立花の子どもの父親は百目鬼ではない。)。
伊神は壁男の幽霊のトリックを解く。これはプロジェクターの映像だった。プロジェクターの映像を,スモークマシンの煙に映していたのだ。煙はエアコンで排気した(エアコンが急に作動し,死亡したゴキブリの脚から推理)。
三野が見た幽霊はトリックではない。ここから三野は嘘をついており,真犯人は三野だということが分かる。
三野は,消費者金融から身を隠すために自殺したことになっていた男に寝る場所として芸術棟を貸していた。そしてそのことがばれないように,幽霊の噂を流していた。
伊神は,人を遠ざけるには怪談にとどめておくべきで,怪奇現象にしてしまったのが間違いだったと指摘する。
芸術棟にいたのは「豊中浩一」だった。しかし,豊中は嘘をついていた。豊中は業務上横領及び詐欺未遂の容疑で逮捕される。
プロローグや幕間を使ったミスディレクションで,三野だけでなく読者までだますトリック
エピローグでは,芸術棟から白骨死体が発見され,芸術棟が使えなくなるというオチ