あらすじ
某市立高校の芸術棟にはフルートを吹く幽霊が出るらしい――。吹奏楽部は来る送別演奏会のための練習を行わなくてはならないのだが、幽霊の噂に怯えた部員が練習に来なくなってしまった。かくなる上は幽霊など出ないことを立証するため、部長は部員の秋野麻衣とともに夜の芸術棟を見張ることを決意。しかし自分たちだけでは信憑性に欠ける、正しいことを証明するには第三者の立ち合いが必要だ。……かくして第三者として白羽の矢を立てられた葉山君は夜の芸術棟へと足を運ぶが、予想に反して幽霊は本当に現れた! にわか高校生探偵団が解明した幽霊騒ぎの真相とは? 第16回鮎川哲也賞に佳作入選したコミカルなミステリ。
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Posted by ブクログ
私に本を読むという文化がなく、10年ぶりくらいに読みましたが、非常に面白く、読みやすかったです。
高校を舞台にした推理小説で、高校生ならではの青春を感じられてとても気持ちが良い作品でした。
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幽霊騒ぎを高校生の素人探偵団が解決していく話で、全体的にコミカルな雰囲気や変人の探偵にワトソン役の主人公といったかんじで『小市民』シリーズや『マツリカ』シリーズが好きな人(僕みたいな)にお勧めしたい作品だった。
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第16回鮎川哲也賞佳作入選デビュー作。連作短編のような体であるが、実は一つ一つは本当には完結しておらず、最後まで読んで初めて完結するうまい構成の作品だった。
相前後して読んだ相沢沙呼と類似点が多く、鮎川賞デビュー作、学園もの、ワトソン役は平凡な男子高校生、日常の謎、とかなり共通しているのだが、語り口がこちらの方が好みである。語り手にも美術部員というキャラ設定がちゃんとあり、それを反映した地の文になっているのが読みやすいのだと思われる。冬に「出る」ものの正体が二転三転する終盤は見事。
でも実はあとがきが一番面白かった。ということでこれはホクホクと続編を読むことにしました。
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似鳥鶏さんといえばこの青春ミステリだよなという思い込みはあるものの、数多くの探偵を描く作家さんだ。都市伝説からの犯罪、さらにどんでん返しという現代ミステリの定型でくる。デビュー作にして賞もとったみんな大好き青春×ミステリ。
最近この手のもの読み過ぎだ。
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少し分かりにくい所はあったがテンポ良く進み読みやすかったのでよかった。一番最後ご少し悲しい終わり方ではあったが一番雰囲気などの描写が魅力的だったのでよかった。
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この方の作品を読むのは2回目。しかもこちらはデビュー作なのですね。文章は濃くて少し読みにくく、キャラも誰だっけ?とかあったりしましたが、楽しく読めました。それはさておき、後書きの機械オンチのくだりは全部ネタなのか、事実なのか。
Posted by ブクログ
似鳥鶏さんの何ともとぼけた味わいのユーモアで読ませる学園ミステリーのデビュー作。本書のメインの謎は2つで、フルートを吹く女高生の幽霊は横溝正史の「悪魔が来りて笛を吹く」を思わせますし、壁男は大分古いですが怪奇大作戦の「壁ぬけ男」を思い出しましたね。どちらも機械トリックなのが致し方ないとは言え少し残念でした。やはり一番気になったのは有栖川有栖さんの名探偵・江神とアリスの関係性と本書の伊神先輩と葉山との類似で「神」の字の共通は偶然ではなく著者が意識されての事でしょうね。最後の意外なオチもショッキングでしたね。
Posted by ブクログ
記念すべき市立高校シリーズの始まりと、似鳥鶏さんのデビュー作。
10年以上前に読んでから、何度も読み返す一冊。
登場人物がちょっと変わっているのに、どこかにいるような気にさせてくれるのがこの作家さんのいちばんの強みだと思う。
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学校の離れの文化系の部室の集まった芸術棟。そこで夜中に首のない壁男といういう幽霊が出ること、吹奏楽部の立花先輩がその幽霊に捕まって、行方不明となり、本人も幽霊になって夜な夜なフルートを吹くという噂が広まっていた。美術部の葉山は、文芸部の同級生に付き合って、幽霊の謎を解明する。
似鳥鶏らしい、サブカル知識を詰め込んでくるタイプの、ちょっと斜に構えたミステリ。突然、ネッシーの死骸のネタがでてきたり、チームNACSが出てきたりと面白いといえば面白いのだが、そのたびにストーリから俯瞰する読者目線に引き戻されるので、なかなか集中できない。
また、プロローグで出てきた人が葉山くんなの?というなんだかよくわからない状況が引っかかってしまったり、文章も主語がわからない状況説明みたいな話が多いので、集中できない。
中盤に差し込まれる間奏的な2ページあたりになると、もうどっちの話だったかどうでもいいなと思い始めるし、なんか違うなと感じ始めるあたりで頭が完全に切り替わる。
後半にはそれまでの話の種明かし、トリックの解明などが次々とあっさりされていく。トリックの詳細などの描写はあんまり重要視はされていなかったということなのだろうな。
あとがきも含め、斜に構えたのがこの人の持ち味といえばそうなんだけど、筒井康隆的や小松左京的なドンと追い込まれる作風もあるので、別作品のほうがおすすめかも。
表紙は同様にアニメっぽい絵だけど、サムネイルとは違う。2010年版。
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学園ミステリ。舞台は放課後の、芸術棟と呼ばれる、文化系の部活や同好会の部室が並ぶ四階建て。主人公は美術部の少年。ある事件が起こり、吹奏楽部や演劇部、文芸部の少年少女が次々と登場して、事件を解決しようとする。学園ものが好きだ。特に文化系の連中がわちゃわちゃするものが好きだ。それは、自分がそうであったからでもある。もっとも、自分が学生の頃は、フィクションの中の連中がやたら眩しくみえ、それに比べて現実のなんと味気ないこと、と思いながら読んでいた。いまは、そうでもない。あの頃の自分たちも、それなりに眩しく振り返ることができる。自分たちはとっくの昔に大人になったが、あの頃読んだフィクションの中の連中は、閉じられたページの隙間でわちゃわちゃやり続けているだろう。永遠に。
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学校の別館にある怪談話が怪奇現象となって現れる。この現象の謎を解き明かす為に右往左往する高校生の話。怪奇現象の裏には色々な人間模様があり最後はスッキリする。
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葉山くんのツッコミが面白いミステリー。というより青春モノと言ったほうがしっくりきます。
現時点で全8冊出てるシリーズ。手軽に読めるし、読書に疲れたら読むのにいいかも。
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学園モノって個人的に好きな部類。巻き込まれ体質な主人公と空気読めない系の探偵役と個性的な文化系部活の面々。すごい王道な枠組みなんだけども、ついつい読んでしまう。
ただ、ミステリーとしてはちょっと弱いだろうか。助けた人が実が善人ではなかったとか、その人の物語でミスリードを狙ったとか、全体としての展開はあるんだけども、1つ1つの謎が少しばかり弱いのかなぁ。ちょっとずつ盛り上がっていくところなんだけども、ホップ・ステップ・ジャンプになりきらず、もったいない感じ。特に首なしの遺体がでてきた部分が蛇足に見えてしまう。伏線としての埋め込みがもちっと欲しかったなぁ。
Posted by ブクログ
「市立高校シリーズ」というらしい。
確かに「冬」に「出た」。
高校で人ならざらぬ者が出るという噂。芸術棟で、行方不明になった先輩が出る?そんな噂が吹奏楽部をはじめひそかに広がった。そこに妖怪の話が絡んでややこしいことに。
伊神先輩は、我関せずというか周りに踊らされることなく、飄々と謎解き。
Posted by ブクログ
はじめて読むし、デビュー作を…と手に取った本。
描写を(事件に関するものも、その舞台である学校の部活棟についても、キャラクターも、会話も)盛りだくさんに書き込む作家さんだという印象。「語りたい」人だ!サービス精神がすごい。
Posted by ブクログ
コミカルなミステリーでした。
舞台が学校ということもあり、なかなか楽しめました。
トリックは最後でやっとわかりましたし、最後の一波乱もなるほどここにつながっていたのかと満足しました。
内容
某市立高校の芸術棟にはフルートを吹く幽霊が出るらしい――。吹奏楽部は来る送別演奏会のための練習を行わなくてはならないのだが、幽霊の噂に怯えた部員が練習に来なくなってしまった。かくなる上は幽霊など出ないことを立証するため、部長は部員の秋野麻衣とともに夜の芸術棟を見張ることを決意。しかし自分たちだけでは信憑性に欠ける、正しいことを証明するには第三者の立ち合いが必要だ。……かくして第三者として白羽の矢を立てられた葉山君は夜の芸術棟へと足を運ぶが、予想に反して幽霊は本当に現れた! にわか高校生探偵団が解明した幽霊騒ぎの真相とは? 第16回鮎川哲也賞に佳作入選したコミカルなミステリ。
Posted by ブクログ
長編好きだけどちょっと長がったなぁ。
トリック解明にページをさきすぎた感がわたしにはしてしまった。
でもラストはうわ!というか、びっくり。
そっちの事件の方が気になる
Posted by ブクログ
各キャラの個性が強く、把握する前にどんどん話が進んでいってしまう印象。
ただの都市伝説、幽霊騒ぎがまさか犯罪絡みの事件に発展するとは…
犯人が捕まり一安心、事件も一件落着。
となった次の瞬間、またもやどんでん返しが起こると言う展開。
終わりは少し物悲しい感じがしたけど、都市伝説が完全な都市伝説じゃなかったと言うオチが面白かった。
Posted by ブクログ
幽霊騒ぎの真相を追う主人公葉山くんと変人伊神さんの学園ミステリー。バタバタと新キャラが登場するのでイマイチ把握しきれなかった。こっちにキャラの位置付けが伝わる前に次々進んでしまうカンジで。でも話全体の流れはテンポもよくて結構おもしろかった。
Posted by ブクログ
【感想】
・ミステリとしてよりも高校生の青春モノとして読んだ感じ。続編あるなら彼らとまた出会いたくはある。
・表紙カバーのイラストぼくが読んだのは古いバージョンのようです。前のはちょっと不気味な感じで、今のは軽い感じ。全体の印象がけっこうイラストに引きずられそう。
【一行目】
物語だとしたら、最初の一ページはどのシーンから始めるべきでしょうか。
【内容】
・市立高校で噂される怪談。
・フルートで「シランクス」を奏でる美人幽霊。
・壁に埋め込まれた首なし死体の「壁男」が襲ってくるらしい。
▼芸術棟についての簡単なメモ
【秋野麻衣/あきの・まい】吹奏楽部。
【東雅彦/あずま・まさひこ】吹奏楽部員。秋野の彼氏。185センチの長身。チャラい格好だがなぜかさわやかに見える。
【アツシ】柳瀬さんちの犬。足と首のまわりだけ黒であとは象牙色というカラーリング。とてもひとなつっこそうだ。アイヌ語の命令しか聞かない。
【伊神】文芸部部長。物識り。探偵役。
【壁男】芸術棟に出るらしい幽霊。首を斬られ壁に埋められている。顔がないので手当たり次第に襲い壁の中に連れ込もうとするが人間を連れ込むことは難しくつぶれてしまう。
【芸術棟】古く芸術性などカケラもなく愛想のない建物に文科系の部を全部放り込んで芸術棟と称している余り物の建物。音楽系の部のせいで常にやかましく全体の半分はガラクタが詰まっている。
【シランクス】立花の幽霊がフルートで吹いているらしい曲。
【高島ひかる】吹奏楽部部長。「吹奏楽部のがんばりママ」と呼ばれる。
【立花久美子】吹奏楽部。フルート。美人。行方不明。
【田村】生物科教諭。芸術棟地下の実験室で改造人間を作っている。
【百目鬼悟】美術部顧問。仕事のためではなく創作のために学校に来ているフシがある。自分のアトリエ欲しさに芸術棟にアトリエを作り美術部とした。
【豊中浩一】自殺したと思われる男。
【豊中正子】浩一の妻。
【梨本】体育科教諭。田村教諭の作った改造人間で冷蔵庫型でしゃべらず無表情。
【葉山】主人公の「僕」。美術部員。
【美術部】芸術棟三階にある。
【マヤ】邦楽部員。
【三野小次郎】演劇部。他人の内緒話に出くわす男。葉山とは中学時代から親しい。
【柳瀬】たぶんさおりという名前。演劇部長。どうやら葉山に気があるらしい。
Posted by ブクログ
2021/3/8
名前が!名前が覚えられません!
特に女の子。
いやぁ老いた。戻って確認しようとさえしないのが老いた。
文芸部先輩が好きなタイプなんだろうけどちょっと物足りぬ。
みんなかわいいけど若い子区別つかないよ~っていうオッサンオバハンの心境。
いやオバハンやから仕方ないのか…
Posted by ブクログ
本の感想には作品を読んだ順番も関係するということを常々実感している。
学園物ミステリというとどうしても米澤穂信の古典部シリーズが頭に浮かんで比較対象にしてしまっていた。
本作は文章が好きではないくらいで、あとは普通に面白い、けどだからこそ人物造形などについては「もっとこうだったら」という欲が出てしまうところが多かった。
似鳥鶏は以前アンソロジーの収録作を読んでいまいちだったのは何となく記憶していたのだが、本作のあとがきをまず読んでみて、「ああ、文章がくどかったからだ」というのを思い出した。
味のある文章というのは難しい。
森見登美彦のように話が脇道に逸れながらもそれが作品の世界観を表現していてかつおもしろいというような文章は個人的には一つの理想だが、一歩間違えれば読みづらくなるだけの無駄だ。
似鳥鶏は不必要な話の逸れ方をするのと、注釈でメタ視点的なボケをかますので物語への没入感が弱かった。
物語は高校を舞台にしたミステリだが、連日夜中に複数の不良でもない生徒が市立高校に集まったりしていて、昼間の主人公たちの高校生活も見えない。
高校で事件が起こるというよりは、ミステリのための舞台として高校がある感じ。
もう少し高校生らしい感情とか人間味が見えるとよかった。
主人公たちの生活が見えないのと同様に、登場人物が多いせいでキャラの内面があまり見えないのももったいない。
しかもこの一巻に限れば、一番いらないキャラクターは探偵の助手役である主人公だ。
ミステリでは探偵役が目立つし、本作の探偵である伊神はキャラが立っていてかっこいいのでどうしても隠れてしまう。
奇抜で個性的な探偵にはできない人間的なつながりで解決策を見出すとか、優秀な探偵にはない凡人の発想で謎を解くとか、助手にしかできない役割がもっとあるとよかった。
キャラでいえば、学園モノだしもう少しわかりやすいヒロインがいてもいい。
事件を持ち掛けてきた女生徒がヒロインかと思えばそうではないし、主人公に対して同じような関係性のラインに吹奏楽部の部長と演劇部の部長もいる。
本作はシリーズものなので、この先特定の人物に焦点があって内面が描かれていくのだろうか。
ミステリとしては、建物の平面図もあり、そこに無理がないようなトリックになっていてよくできていると思う。
推理の方法も、犯人がこれを実行するにはその前にこうするしかない、という風に論理的に順序立っていてわかりやすい。
ただ、物珍しさがなかったのが惜しい。
それと、最後に超常現象のまま解決せず投げ出している出来事があって残念だった。
こういうのは物語に不思議な余韻を残すのにはいい効果を示すが、一方ですべての超常現象を人間の仕業として論理的に解明することを期待して読んでいる読者が離れるきっかけにもなってしまう。
多くの作品に触れていくと、あの作品のいいところ、この作品のいいところ、という風に頭の中に比較対象が蓄積していってどんどんわがままになっていくなあ。
Posted by ブクログ
母校が舞台と聞いて手に取ってみた。若者受けしそうな冗長な文章は正直好きではなかったが、話は面白いかったし母校のあるあるがたくさん出てきて懐かしかったので、長いシリーズになると嬉しい。ただ実際はそんな物騒な学校ではない。
Posted by ブクログ
鮎川哲也賞に佳作入選した、似鳥鶏さんのデビュー作です。
タイトルの響きが良いですね。
上手く表現出来ないけれど、惹かれるものがありました。
高校を舞台にした、日常の謎系のミステリなので、コミカルな作風が合っています。
もちろん、ただ楽しいだけではなく、真相には苦さや切なさもあるのですが、全体的には穏やかでほのぼのとした雰囲気が感じられました。
登場人物も数が多いながら、それぞれ魅力的なのが良いですね。続編への期待が高まります。
楽しみなシリーズが、また一つ増えました。
Posted by ブクログ
前にこの作者の事をオススメしてもらった事があって、どれ読もうかと思ってた時に自分が一番好きな学園ミステリから選んで読んでみたんだが、なかなかに面白かった!トリックはわりとわかったのだけれどそれが他とどう繋がっていくのかまでの細部はわからなかったなぁ。人物の描写とかも魅力的だったしこの作者の他の作品も読もうと思う。
Posted by ブクログ
〇 概要
丘の上にある某私立高校には,文化部が集まる「芸術棟」と呼ばれる校舎がある。その校舎には,フルートを吹く幽霊が出るらしい。幽霊の噂に怯えた部員が練習に来なくなってしまったので,幽霊を否定する必要に迫られた吹奏楽部部長に協力を求められ,主人公,美術部の葉山は演劇部の三野とともに,芸術棟に足を運ぶ。予想に反して,幽霊が本当に現れてしまい…文芸部の伊神は真相を究明するために捜査を始める。にわか高校生探偵団が解明した幽霊騒ぎの真相とは?
〇 総合評価 ★★★☆☆
青春ミステリ。殺人は起こらず,芸術棟という文化部が集まっている校舎での幽霊騒ぎが中心。そこに「立花」という学生の失踪と,消費者金融からお金を借り,自殺を偽装しているという「豊中浩一」という男を絡ませ,ほどよく読者をだます構成になっている。
学校を舞台とした青春ミステリといえば,「文化祭オクロック」や「体育館の殺人」など,いくつか読んでいるが,その肌触りに近い。社会人になって10年以上経ってから,学校を舞台にしたミステリを読むと,もはやファンタジーというか,リアリティを感じない。なんとなく,懐かしい感じはある。
ミステリとしては,幽霊騒動のトリックが物理トリックで,「ふーん」としか感じられないのがマイナス。立花さんがちょい役と思っていた美術部講師の百目鬼と結婚するというくだりや,三野が幽霊騒ぎまで起こして匿っていた豊中浩一が,実は犯罪者だったというオチはなかなか驚ける。しかし,伏線がそれほど張られていないので,やられたとまでは思わない。
全体の雰囲気と読みやすさは評価できるので,佳作という感じ。似鳥鶏の作品らしい作品といえると思う。
〇 サプライズ ★★★☆☆
幽霊騒ぎは,影絵とプロジェクターという物理トリック。サプライズといえば,美術部顧問の百目鬼と妊娠して学校を辞めていた立花との恋と,三野がかくまっていた豊中浩一が,いい人ではなく犯罪者だったという部分。いずれも,それなりのサプライズはあるが,そもそもサプライズを狙った作品ではないし,伏線も,それほどない。★3かな。
〇 熱中度 ★★★☆☆
デビュー作らしい無駄のない作りで,中だるみはない。ただし,出てくる事件が幽霊騒ぎで,謎にそれほど魅力がない。熱中度も普通か。
〇 インパクト ★★☆☆☆
とって付けたような,豊中浩一の存在くらいしかインパクトに残らない。幽霊騒ぎのトリックが物理トリックなのもマイナス。登場人物も,学園ミステリではありがちなキャラばかり。ということでインパクトは薄い。
〇 読後感 ★★☆☆☆
ややビター。三野は豊中に騙されていたわけだし,秋野も東に遊ばれていた感じ。死体が発見されて芸術棟は使えなくなっている。立花も,百目鬼と結婚する予定とはいえ,実の父ではないわけで…。作品全体の雰囲気は軽めの文体なのだが,あらすじはビターという感じ。
〇 キャラクター ★★☆☆☆
主人公は,ありがちな等身大で特に才能はないけど,妙に女性に好かれる文化部(美術部)員。探偵役は物知りの先輩。友達役のややひょうきんな演劇部員が,幽霊騒動の黒幕で,おとなしい同級生の女性,そのカレシのちょっと悪い先輩と,どこにでもありそうな青春モノ・学園モノのキャラクターがてんこもり。それなりに個性はあるが,まさに,ステレオタイプ。入り込みやすくはあるが,この作品ならではの魅力的なキャラクターとはいいがたい。
〇 希少価値
「戦力外捜査官」がテレビドラマ化されるなど,著者の似鳥鶏が割と人気作家になったので,希少価値はあまりない。仮に,似鳥鶏の人気が落ち着いても,創元推理文庫なので,手に入らなくなる可能性は低そう。
〇 メモ
〇 プロローグ
消費者金融から金を借り,返せなくなって自殺を考えている男の手記
〇 一日目の幽霊
「壁男」と立花さんの幽霊が出るという噂により,練習ができなくなった吹奏楽部のために,高島(吹奏楽部長),秋野(吹奏楽部),葉山(美術部),三野(演劇部)の四人は,夜,芸術棟に忍び込む。実際に幽霊のような存在を目撃する。
〇 二日目の幽霊
一日目の幽霊を,伊神(文芸部長)と葉山が捜査する。邦楽部の捜査,演劇部の捜査,吹奏楽部の捜査を経て,伊神は謎をとき,一日目の幽霊が「影絵」のトリックであったことを見抜く。しかし,トリックを見抜いたのもつかの間,裏方として幽霊のトリックをしこんでいた三野が,別の幽霊を目撃したという。
〇 三日目の幽霊
三野がCAI室で幽霊を目撃したので,そのトリックを暴くために,伊神,高島,東,秋野,葉山は,CAI室に忍び込む。この日はCAI室ではなく,芸術棟に「壁男」の幽霊が出る。伊神,葉山が芸術棟に行くと,そこには演劇部の柳瀬がいた。芸術棟には何もなかった。その日は,警備員に見つかるが,柳瀬の演技により,警備員をごまかし,六人は無事帰宅する。
〇 幕間
「豊中浩一」という男が入水自殺をしたという情報
〇 四日目の幽霊
伊神は「ウイリアム・ジェームズの法則」を引き合いにだし,前日の幽霊もトリックだと主張する。葉山は柳瀬のお見舞いにいく(このとき,伊神は葉山に花束を持たせる。花はアネモネ(=君を愛す),リンゴ(=誘惑),キンギョソウ(=欲望),アイリス(=私は燃えている),折れているアザリア(自制心)というもの。柳瀬は,偽のメール(送り主が葉山だと思った)により,芸術棟に呼び出されていた。
〇 五日目の幽霊
東が幽霊騒ぎの犯人の1人だと推理した伊神は,東を呼び出し,自白を迫る。東は壁男の幽霊の共犯者だった。東は立花が好きだったので,急に行方不明になったことを疑問に思い,居場所を知るために「立花が壁男に殺されて幽霊になった」との噂を広めていた。
立花が登場する。立花は妊娠し,学校を辞めていた。立花は美術部の顧問の百目鬼と結婚するという(立花の子どもの父親は百目鬼ではない。)。
伊神は壁男の幽霊のトリックを解く。これはプロジェクターの映像だった。プロジェクターの映像を,スモークマシンの煙に映していたのだ。煙はエアコンで排気した(エアコンが急に作動し,死亡したゴキブリの脚から推理)。
三野が見た幽霊はトリックではない。ここから三野は嘘をついており,真犯人は三野だということが分かる。
三野は,消費者金融から身を隠すために自殺したことになっていた男に寝る場所として芸術棟を貸していた。そしてそのことがばれないように,幽霊の噂を流していた。
伊神は,人を遠ざけるには怪談にとどめておくべきで,怪奇現象にしてしまったのが間違いだったと指摘する。
芸術棟にいたのは「豊中浩一」だった。しかし,豊中は嘘をついていた。豊中は業務上横領及び詐欺未遂の容疑で逮捕される。
プロローグや幕間を使ったミスディレクションで,三野だけでなく読者までだますトリック
エピローグでは,芸術棟から白骨死体が発見され,芸術棟が使えなくなるというオチ
Posted by ブクログ
出ないはずの幽霊、いないはずのお化け。
にわか高校生探偵団シリーズ第1弾。
デビュー作なんですね。
よくまとまってるしうまいけど、もう少し欲しいかなあ…。
今後に期待。
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ひさびさに再読。
Posted by 読むコレ
軽快かつポップな感覚の学園ものミステリー。殺人事件など
おきずに高校生活における「怪談」「都市伝説」くらいの
事件、謎ってのが好ましいですねー。
主人公と探偵役の関係性も微笑ましくて、好感の持てる
作品でした。
こういう重くないって事も重要ですよね。
ユーモアもポップに散りばめており、この路線は
結構人気でるんじゃないでしょうかね?
まぁ...ミステリ部分のトリック自体は...ご愛嬌ってことでね。
Posted by ブクログ
3+ → 3+
第一章冒頭から延々と慎重とも取れるような丁寧さで舞台説明がなされる。ちょっとクドいかなと思われたところに、会話文が織り込まれるとコミカルな調子が出てきて、ようやく地の文とのバランスも良くなってくる。主人公1人称の地の文も終止穏やかな語り口で心地良い。物語の謎そのもより、やはり登場人物のやり取りが面白い。地の文での極短いツッコミにセンスが光る。少し物足りないか、と思わせる本編終了後のエピローグで、また一波乱ある構成も良い。読む前に抱いていた漠然とした印象としてはあまり期待していなかったが、なかなか面白かった。で、表紙の女の子は誰ですか?
―――――
2019.2.25-3.1 再読 評価変更なし