あらすじ
尖閣、竹島、北方四島――どう守り、返還させるか? 威勢のいい言葉だけでは進展はない。解決策は「歴史」の中に書かれている! 明治維新時の領土と、その後の戦争による拡大。敗戦での急激な縮小と、戦後の枠組み。それらの歴史の裏側までを厳正に検証する。21世紀の視点に立った日本の主張!
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Posted by ブクログ
千島列島をめぐる日露問題は歴史の観点、竹島をめぐる日韓問題は条約の解釈、尖閣をめぐる日中問題は資源と経済、それぞれの見方を提示してくれている。一緒くたにナショナリズムに訴えるよりは遙かに説得力がある。
国家を超えたレベルで経済活動が世界を覆っているこの時代、領土を主張することにいかほどの意味があるのかと考える。国家の威信なんてものより、実利をとる方が利口ではないか。そのためにも、それぞれの歴史的経緯の冷静で正確な把握が大事なことを改めて確認した。
Posted by ブクログ
ロシア、韓国、中国と抱える領土問題を歴史を紐解きつつ、著者は昭和18年の日本が高揚している時期の日本地図を度々引用しながら、領土とは何かを冷静に考えさせてくれる好著である。ソ連、中国の強かさだけではなく、ヤルタ会談以降、サンフランシスコ講和条約、沖縄返還に至るまでの米国の政治的な思惑が曖昧さをあえて残したということで、現在の日本と3国の対立の芽を残したという考え方はもの凄いですが、事実なのでしょう。著者によれば、ソ連はSF講和条約を拒否しており、日本は千島全体の領有を主張しても可笑しくないというのは、決して国粋主義的な考えというわけでなく、素直に結論できるということが理解できます。逆に1880年には琉球処分にあたり、「宮古島・八重山群島を中国領土とする」と清国に伝えたというのは皮肉なことであり、領土問題がその時代の政治的思惑に左右されていたという奥の深さを感じる本でした。竹島も島を発見したというフランスが領有権を主張していたら・・・考えるのも楽しいものです。
Posted by ブクログ
・ノンフィクション作家保坂正康氏が、「帝国主義的感情」を捨てて、冷徹な歴史的論理の中において領土問題を考えるよう主張して書かれた作品。
・尖閣諸島、北方領土、竹島という現在領土問題でホットなエリアを取り上げ、露中韓との間での歴史的事実を決してヒステリックにならず丁寧に淡々と記載している。
・サンフランシスコ講和会議における吉田首相(当時)による演説は気骨のあるものであり、きちんと歴史に刻み込まれていかねばならないと感じた。
・我々は敗戦体験を通じて学んだ以下のことに改めて思いを至らせるべきである。
①他国の領土を奪うことによる損と得を計測してみるべきである。(歴史)
②自国の文化や文明が唯一絶対と考えたときにそこに生まれる独善を考える必要がある。(文明)
③国境とは何かを改めて私の問題として捉えなければならない。(国家)
④不当に奪われた自国の領土はどれだけの時間を経ても、その正当性を主張し続けなければならない。(権利)
⑤領土空間の拡大は必ずしも国民の幸福や充足を生むとは限らない。(教訓)