【感想・ネタバレ】森岡毅 必勝の法則 逆境を突破する異能集団「刀」の実像のレビュー

あらすじ

再生の旗手、希代のマーケターとして知られる森岡毅氏の強さの根源を日経ビジネス記者が徹底解剖!
大きな挫折を経験した森岡氏はどのようにして立ち直ったのか。
快進撃の背景にある、森岡氏率いる100人の異能集団「刀」とは?
リスクを取り、新たなビジネスモデルを生み続ける森岡氏と仲間たちによる挑戦の物語。
マーケティングだけでなく、森岡流の組織論やリーダー論も学べる1冊!

あらゆるテーマパークの再生から、食品や外食の既存市場の成長など、マーケティングで結果を出し続ける森岡氏だが、そのすべてを一人で担っているわけではない。
森岡氏率いる精鋭集団「刀」の存在が背景にある。森岡氏は仲間とどのような言葉を交わし、様々なプロジェクトで結果を残してきたのか。
その息づかいを表現することで、森岡氏や彼が創った刀という組織の実態に迫ったのが本書だ。
一度挫折したプロジェクトも、停滞市場の事業だとしても、刀は諦めない。
最後までやり切るための思考と独自の「数学マーケティング」で道を切り拓く。

そして、自らをでこぼこな性格という森岡氏の組織づくりは強みを生かす。
「その物件、その人、その文脈、すべての事象には特徴がある」(森岡氏)
あらゆるものから強みを見いだし、組み合わせ、最強組織をつくる森岡流の組織論とは。
事例を通して森岡イズムを体得できる1冊。
これを読めば、あなたもきっと前を向ける!
すべてのビジネスパーソンに贈る勇気の書!

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Posted by ブクログ

マーケティングの考え方だけでなく、
森岡さんが考える今後の、会社「刀」としての
成長戦略を知ることができる。

マーケティングの思考を学べるだけでなく
森岡さんが考える日本を成長させたいという
熱い想いが伝わる1冊だと思う。

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2025年11月03日

Posted by ブクログ

7月の沖縄県ジャングリア開業でいやがおうにも注目を集める森岡毅。そして株式会社刀。
この本は、まだ小さな会社だった「刀」を日経ビジネスで巻頭特集した記者の取材でできている。

私も既に森岡さんの本は何冊も読んでいるが、より彼の特徴を表しているのがこの本。
その一番の特徴は「少ない投資で成功する」ことにあると私は読んだ。
瀕死のUSJで、投資する資金のない中、知恵を絞ってジェットコースターの逆回転など、
おカネをかけずに話題を集める施策を繰り出したことは有名な話。
そこでお金ができてから、ハリーポッターにどんと設備投資し、大成功を収めたのだ。
友人がUSJに勤めていたのでそのご縁で少し中を見せてもらったが、
少なくとも私はTDSより好きだな。大人相手、という気がする。

緻密な予測計算で、彼の企画はまず外れない。
ジャングリアも、当初はUSJでやるはずだったが、
USJの成功で、投資家が売却してしまい、新しく買った先が沖縄にストップをかけたと。
しかし沖縄でできる!と踏んだ森岡はそれを捨てきれず、自ら会社を興して、
立ち上げに成功したと。
広大な敷地はオリオンビールのゴルフ場だったと初めて知った。

実はこの11月社員旅行で沖縄に行く。目玉はジャングリア。ひめゆりの塔にも行くが。
森岡さんの成果を見せてもらおうと思う。
楽しみ。

プロローグ 挫折からの再始動 悲願のジャングリア
第1章 全国で巻き起こす旋風
第2章 人生を変える唯一無二の武器
第3章 異端の経営者 森岡毅の月旦評
第4章 これが本当の消費者理解
第5章 マーケティングで日本企業を変える
第6章 最大の敵は「投資」
第7章 最強組織は個人の可視化でつくる
第8章 バタフライエフェクトを起こす
第9章 森岡毅が見る未来
おわりに

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2025年07月28日

Posted by ブクログ

森岡さんのお話にはいつも勇気を貰えます。徹底した数学マーケティング、難易度は高そうですが仕事に意識して取り入れていきたいと思いました。ジャングリア沖縄開園に向けての紆余曲折もグッときます。

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2025年07月26日

Posted by ブクログ

今月オープンする沖縄県のアミューズメント施設「ジャングリア」。訪れる前に読んでみたかった一冊。森岡さんのマーケッターとしての実績は素晴らしいものがあり、その上でジャングリアにかける思いはすごいものがある。沖縄の未来にすごい夢を見たような気がした。

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2025年07月21日

Posted by ブクログ

これまで森岡さんがどのようにしてキャリアを歩んできたかがよくわかった。
取材形式で書かれており、読みやすい。

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2025年06月27日

Posted by ブクログ

第三者目線で森岡毅さんと株式会社刀を描いた一冊。新たな視点で純粋に面白かったです。客観的に描かれることで、森岡さんの「凄さ」が際立ちます。また、今まで読んだ森岡さんの書籍の内容がハイライト的にでてきて、良い復習の機会にもなりました。

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2025年05月29日

Posted by ブクログ

USJを立て直したことで有名な元P&G出身の日本を代表するマーケターの森岡氏率いる「刀」の話が多く書かれたこの書籍。全てのことを理性的に数値に基づいて決断する森岡氏の強みが改めてよくわかった。私も会社を経営している1人として「日本を元気にする」という使命を改めて感じることができた。

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2025年01月15日

Posted by ブクログ

やはり森岡さんの本は心を熱くさせるものがあるな

特によかったのは最後の言葉

【目の前に、世界的に評価の高いアニメやゲームなど日本の大きな可能性がある。
そこに私がたまたま通りかかった。
これまで得たノウハウを使えばなんとかできると思えているのに、それを助けずして通り過ぎた先に納得して死ねる人生が待っているとは思えません。】
この言葉の表現力が、本当素敵。
ノウハウと実力があるからこそ、言えることだろうし、本当に豊かな日本にしたいのが分かる。
沖縄パークもどうしても実現したかった
沖縄の可能性を広げたかった
それが伝わってくる。

そして徹底的に顧客目線で身銭を切ってでもまずは体験して見ること。
それがマーケターとして大事なのだと理解ができた。
良い本だな。
そして応援してます。

・ネクストアクション
体験に価値を払って自分も試す。ユーザーがどう感じてるかを肌で感じる。
ありがとうございました。

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2025年09月21日

Posted by ブクログ

刀という会社について第三者が書かれた本。客観的なので森岡さんを知らなかった層にもフラットにオススメしやすい。早速同僚に貸して欲しいといわれました。

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2025年06月08日

Posted by ブクログ

低迷していたUSJをV字回復させたことで一躍有名になった森岡毅氏を取材対象として経済記者の方が書いたノンフィクションです。

森岡さんは私と同じ兵庫県の東部地域の出身地ということもあり何となく親近感もあります。
彼の著作「苦しかったときの話をしようか」を以前に興味深く読ませてもらいました。

森岡氏がプロデュースした沖縄のテーマパークが来月(2025年7月)、ついに開幕します。
その名も“ジャングリア”!! 
ジャングリアのコンセプト「Power Vacance!!」 は、世界自然遺産「やんばる」から連なる大自然で体験する、ここにしかない本物のクオリティと興奮を味わえることだそうです。

本書を読むと、森岡氏がどれだけの思いで沖縄のテーマパーク構想の実現を目指してきたかがよくわかります。まさに苦しかったときを乗り越えての悲願の実現といったところでしょう。

ジャングリアに遊びに行く人はこの作品を読んでから行くとより深く楽しめると思いますよ~。
私的にはジャングリア前の必読の書です!





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2025年06月08日

Posted by ブクログ

マーケティングのプロ集団「刀」の動向を知りたいと思って購入。
森岡氏の著書を読み、以前から尊敬すべき人物だと思っていたが、記者目線の本書を読んでその印象は確信に変わった。
株主資本主義が暴走し、手段であるはずの利益獲得が目的化している経営者が目立つ昨今、森岡氏は資本主義を前提としながらも「志」が先行する本物の国士だと思う。「刀」が上場したら株主になって応援したい。

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2025年05月31日

Posted by ブクログ

森岡さんの思いに共感した人たちが集まってすごい熱量を持って仕事してるな。こういう人達と仕事したいな。と思えるが、ほぼ抽象論なのは物足りない。予測精度が高いモデルの中身を説明してほしい。

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2025年05月28日

Posted by ブクログ

日経の記者の方が著書のインタビュー本、刀のマーケティングの強さ、それをどのように生かしてエンタメコンテンツを生み出しているのか、すごい会社、がわかる本。ジャングリア、いってみたいなぁー

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2025年04月10日

Posted by ブクログ

森岡さんに著者が魅了されているのがわかる。彼の挫折(?)から今のビジネスモデルを見つけ出すにいたるまで、また将来のビジョンについても分かりやすい。読んでいて一緒にワクワクし、考え方に共感する時が多かった。礼賛ばかりがたまに傷だが、それが刀の実力なのかも。

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2025年03月10日

Posted by ブクログ

USJを再生させ、ジャングリアのオープンをする森岡氏のメソッドが書かれた本。さすがに統計資料の分析のエッセンスは書かれていなかったが、端々に仕事に対する向き合い方が書かれていて、あらためて自分の仕事に置き換えて考えるいい機会になりました。

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2025年02月24日

Posted by ブクログ

"消費者の購買行動には一定の法則がある。つまり、消費者の一人ひとりの消費の選択は一定の確率でランダムに起きるー.
「アレンバーグ氏は、私が気付く十数年前にこの法則に気付いていた。彼の論文に巡り合ったときは大きな感動を覚えた」
その後、アレンバーグを通じて知ることになったのが、森岡と年齢の近いオーストラリアの経営学者、バイロン・シャープだ。”
シャープはコトラーの手法に異論を唱えた。
森岡や刀の「数学マーケティング」はアレンバーググとシャープの考え方に近い。
「我々の需要予測が精緻なのは、時間と距離抵抗を読むからだ」と明言する。
千差万別の距離への抵抗感ー。
「これを数学的に計算するのは不可能だといわれてきたが、統計学的に処理してしまう方法を彼は思いついたんですよ。」”

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2025年01月13日

Posted by ブクログ

アンチ森岡さんが増えるなかで、今まで結果が出てたからよかった。結果がでなくなると状況は厳しくなるものだ。ジャングリヤは楽しそうだけど、映像だけみても少し恐竜がしょぼく感じるのは自分だけ?

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2025年07月27日

Posted by ブクログ

【星:3.5】
USJ再建で天才マーケターとして名を馳せた森岡氏を記者である著者が取材し、その内容を書籍化したものである。

森岡氏自身の著者は比較的読んだのだが、第三者から見た森岡氏の本というのは初めてであった。

森岡氏はUSJを離れて、自ら「株式会社刀」を立ち上げてたのだが、刀での森岡氏の取り組みがよく分かる内容だと思う。
そして、森岡が掲げる「マーケティングとエンターテイメントで日本を元気に」というミッションが、思っていた以上に壮大なものだということが理解できた。

これからも森岡氏の動きには目が離せない。

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2025年07月04日

Posted by ブクログ

 何が違うのか。消費者の行動を左右する要素は様々だが、「絞り込むと本質的には3つしか残らない」と、 刀の最高インテリジェンス責任者(CIO)、今西聖貴は言い切る。
 最も重視すべき点は「プレファレンス(相対的好意度)」。次にどれだけ知ってもらえているかの「認知」。最後に、消費財であれば製品の手に取りやすさを示す 「配荷」が続き、テーマパークなら、ここはパークまでの「距離」になる。刀には、独自の消費者調査も織り交ぜ、この3要素を精緻に数値化し、高い精度で確率をはじき出すノウハウがある。だから未来の需要を見通せるのだ。
 日本企業は品質や技術力といったパフォーマンスを重視し、優先順位を高くしがち。だが、刀の考えではその優先順位は高くない。インテリジェンスチームの河合桃子は「新機能を搭載しただけでは、消費者に響かない」と明言する。相対的好意度、認知、配荷のどれかが足りないと、どんなにいい製品でパフォーマンスを示しても、埋もれてしまうというわけだ。


 森岡は、自身が在籍していた頃のUSJについて、こう証言する。USJがオリエンタルランドに比べて高い利益率を出せたのは、需要予測の精度が高かったからだ。森岡がいた頃のUSJの需要予測の精度は約70%。オリエンタルランドだけでなく、「米国のユニバーサル・スタジオも、これほどの精度はなかった」と森岡は自負する。
 需要予測が正しければ事業の効率化が図れ、コスト削減につながる。利益率が高められるのは、無駄を極限まで省けるからだ。正しい需要予測ができると、パーク内に配置すべきスタッフの数をはじき出せる。過剰に配置する必要がなくなり、人件費を抑えられる。飲食店や土産店も同様だ。用意するメニューの数や陳列すべき商品数を過不足なく用意できる。「品切れによる販売機会ロスだけでなく、在庫リスクが小さくなる。需要に費用をぴったり合わせることができる」と森岡は語る。
 刀が誇るインテリジェンスチームが正しいデータを導き出すとともに、意思決定や事業の見通しが本当に正しいかを客観的に判断する。「『真実の番人』であることが私たちの役割」と同チームに属する河合桃子は言う。
 では、はじき出した数字をどう活用するのか。
 そこに、刀の強みであるチーム力が発揮されている。刀では、事業を担当するマーケターが、需要予測をするインテリジェンスチームと密に意思疎通をして戦略を練る。
「このエリアからの客数をあと1000人増やすためには認知をどれだけ増やせばいいですか」
「このイベントに追加投資したら、客数はどれだけ伸びますか」―――。
 各担当がインテリジェンスの担当に尋ねるのは日常茶飯事だ。インテリジェンスチームの担当者は「そこまで投資しても客数増は見込めない」とブレーキをかけることも多い。予測を基に、その判断が正しいかどうかを問う。
 よくありがちな、「(ハードやソフトを)つくって終わり」、「プロモーションを打って終わり」は、この場には存在しない。予測が外れれば、すぐに要因を分析する。刀が運営するテーマパーク「イマーシブ・フォート東京」の週間入場客数は、予測が外れると、 翌週にはインテリジェンスチームがその分析を出してくる。その分析でも、真実の番人である担当者とマーケターが議論を深めて検証し、翌日以降の予測やイベント・プロモーションなどに反映させて、より精度を高めていくのだ。



ー消費者の心を動かす本質的価値をつかみ、掘り下げていくのは多くのマーケターが意識していると思います。そこに数理モデルを掛け合わせるのが、森岡さんの独自性でしょうか。
 まさに、そこが森岡さんの独自価値で、彼の強みの一つだと思いますね。数学だけだと、本質にはなかなかたどり着けない。だって、数学的に考えても、粉からお店でうどんをつくることが価値の源泉であるなんて、導けないじゃないですか。現場に行って分かったということでしょう。
 そういう「真実の瞬間」というものをきちんと捉えながら、裏でそれをビジネスモデルに昇華するときに、彼は数学を使うんですよ。USJの入場客数予測も、様々なパラメーターを持っていて、条件を全部入れていくと、このぐらい人が来るはずだ、と。実際、結構当たっていましたよね。


「どういうものをつくればいいかの戦略は私たちマーケターが絶対に間違わずにつくります。だから、その戦略を信じて、自身がこれだと思うものを、自信を持ってつくってください。それで失敗したら、責任はすべて私が取る」
 津野は当時、マーケティング部長だった森岡に言われたこの言葉が今でも頭の中を幾度となくよぎる。自分への絶大な信頼を感じるとともに大きなプレッシャーが押し寄せた。「これほどうれしくて恐ろしい言葉は今までにない」と津野は振り返る。
 ここで同時に渡されたのが、1、2枚の紙にまとめられた「クリエイティブ・ブリーフ」と呼ばれる体験やプロダクト開発の設計図。クリエイティブ・ブリーフについて、津野は「ほぼ答えのようなヒントが詰まった宝箱」と説明する。
 そこには、このショーを見るのは「どんな人」で、その人たちがショーを見て「どんな感情」になるかが非常に分かりやすく書いてあるという。例えば、ハロウィーンイベントなら、絶叫させた後、すっきりした気分にさせる。クリスマスイベントなら、親子が涙するくらい感動させる、といった感じだ。刀では新たなショーやアトラクション、 広告を打ち出す際には毎回、クリエイティブ・ブリーフを作成する。
  刀CMOの森本は「(クリエイティブ・ブリーフによって)マーケターは、こっちにボールを飛ばせば消費者に刺さって売れる、といった方向性を示す」と話す。そして、 「それを受けて、ゼロから1を生み出す僕たちの作業が始まる」(津野)。ただし、受け取ったら終わりではない。その方向性を互いによく理解するため、両者が何度も議論をする。
 クリエイターが迷ったときにヒントもくれるのがクリエイティブ・ブリーフ。衣装の色は何色か。流す音楽はロックかジャズか。ショーの適切な時間はどれくらいか。「どんな人」に「どんな感情」をもたらすのかが書かれたクリエイティブ・ブリーフに立ち返ると、正解はおのずと見えてくるという。


「『狂人』と『凡人』に憑依して、2つをつなぎ合わせたベクトルの上に解を見つける」 (森岡)
 山の中で自然を相手に体験する際の「狂人」は猟師。一方、ネスタリゾート神戸がターゲットとするのは「狂人」でなく、たまの休日を山で遊びたい消費者たちだ。こういった消費者の気持ちは同じベクトル上にある「狂人」の気持ちを理解すれば分かると森岡は考える。森岡流の消費者を理解する1つの術だ。この猟師経験は、沖縄の自然を体験できる25年開業のジャングリアにも生かされるに違いない。


「1つの事業において、辻つまが合うパターンは多くても3つしかない」
 森岡はそう強調する。消費者を本質的に理解し、新たに始めようとする事業でどう成長させるのか。刀独自の成功の条件に当てはめると2つか3つしかないという意味だ。 そして、刀は、それを綿密な仮説を立てることによって探し当てる。
 刀は、会社や事業推進のためには4つの不可欠な力があると考える。①市場構造を分析して勝ち筋を見極めた上で、②プロダクトを創り、③その価値を伝え、さらに④これらを全体として推進していく力だ。刀は、①のプロセスで、成功する事業の仮説をつくる。


消費者が頭で考える市場はもっと広い
 世の中に既に存在する変えがたい原則を重視するのは、「こうした構造を理解すれば、 自分たちに有利に活用できるから」と刀のインテリジェンスチームの河合桃子は話す。
「逆に、何かを成し遂げようとするとき、構造に逆らうと時間とお金がかかる」。水を低いところから高いところに移動させるにはポンプが必要だ。動力や機械が必要になり効悪い。原則に従えば、効率的に目標に到達できる。
 目指す事業のポジションの捉え方にもこだわりがある。ポイントは、「広く」捉えること。「時間や空間を拡張する」と河合は言う。先ほどの小売業界の変遷は、時間軸を延ばすことで構造が見えた。歴史を遡れば、将来の姿が想像しやすい。別の国や地域、事業を参考にして空間を広げることも有効だ。 目指す事業のカテゴリーは狭すぎてもいけない。例えば、新しくハンバーガーショップを展開するとしよう。マクドナルドやモスバーガーとの比較で価格優位性があっても、定食チェーンやうどんチェーンと比べれば優位性はなくなる恐れがある。そしてここでも人間の脳の構造を利かせるのだ。
 消費者が頭で考える市場はもっと広い。河合は「もし、その業態がなかったら消費者は何を代替にするのかを考えると分かりやすい」と話す。
 あらゆる視点から分析を重ねれば、今度は勝てる市場を検討する。目指すのは、対競合で継続的に構造的に優位を保てるポジション。
 刀はこういった市場を「ハイグラウンド」と呼ぶ。
 上の図を見てほしい。「消費者が購入を決める重要な要素」と「強みになり得る自社の特徴」「競合が構造的に取りにくい要素」が重なった部分がハイグラウンドだ。前出の刀の新事業、オンライン診療の高血圧イーメディカルを例に見てみよう。
 オンラインでいつでも診察を受けられ、専門医療チームが備わる。これは、購入の重要要素になる。競合の既存医療機関にとって、事業形態の大転換が必要になるオンライン診療への参入は困難だ。さらに、刀が強みであるマーケティングを生かして、高血圧の改善につながる継続診療に貢献できる。同事業は3つの要素を兼ね備える。


仮説を見つけるために調査すべからず
 マーケターはそれまでの分析とこのフレームに当てはまるかどうかを行ったり来たりして、成功する事業の仮説をつくる。「つくったアイデアをチェックして、3つの円の中でここが弱いとなると、再考する」(河合)。精鋭が集まる刀でさえ、容易にここにはたどり着かない。高血圧イーメディカルの担当者は、競合が取りにくい要素について、 「(競合になる医療機関は)参入が難しいからこの領域で戦っていないのか、参入はできるけどスイートスポットが空いているのか、相当な時間をかけて検証した」と振り返る。
 分析から始めてハイグラウンドを見つけるまでかける期間は半年から1年。ここまで来ると、目指す事業は、2つか3つのパターンに絞られる。「成功確率の高さを重視すれば、そんなに数は出てこない」とCIOの今西は言う。この時点でかなり的が絞られているイメージだ。ここまでのプロセスが、刀にとって「仮説を立てる」作業。この後に、本格的な調査をかけ、十分な市場規模があるかを確認する。
 世の多くの企業も市場調査をかけているが、それらと刀の調査ではいったい何が違うのか。河合はこう説明する。
「仮説を見つけるために調査をするケースが少なくない。仮説があってこそ、深い調査も可能になる。刀は本格調査をする前に、既に仮説を持っている。そこの違いは大きい」
 手当たり次第、やみくもに調査をして仮説を立てるようでは手間がかかる。調査前からどんな結果が出るかを想定していれば、次にどういうアクションを起こすかも決まってくる。そうすれば他社よりも早く手を打つことができる。
 世間のビジネスでは、ハイグラウンドを外している例も多い。CIOの今西は「当初は自社の強みを生かして成長していたが、事業が拡大する過程で自社の強みを見失っている例は多い。やはり、強みを最大限に出さなければ勝てない」と指摘する。強みがない分野に出ればリソースの負担も大きくなるため、優位性は保てないという。
 刀によると、世の中で成功している事業はハイグラウンドの条件を満たしている。ただ、その会社がなぜそれが成功したのかの理由が分かっていないケースは多く、その場合、再現性がないという。刀が数々の事業で成功を収められるのは、成功する理由を分かっているから。再現できるノウハウが刀にはあるのだ。


――――刀ではどのようにして、その理由を解き明かしていくのでしょう。
 消費者が買わない理由を、私たちは「バリア」と呼んでいます。
 バリアでよくあるのが、消費者が「信じていない」。これは、世の中の商品が売れない理由の大部分を占めます。宣伝では良いことを言っているけれど、本当にあなたのブランドがそれをできるの? と消費者が思っている。「既に手に入れている」という人が持つバリアには、本当にあなたは理想のレベルに達していますか、現状でよいですか、と揺さぶりをかける必要がある。
 どんなバリアがあるかを見つけ出した上で、それぞれに対応したインサイトを発掘していきます。


消費者はインサイトを言えない
―「顧客の声をうのみにするのではなく、顧客さえ気付いていない需要を創造する」 というのは、ビジネスをする際の理想としてよく言われます。消費者インタビューの際には、そもそもインサイトは表出しないと認識しておくことは重要なのでしょうか。
 言うと恥ずかしい、言ったら悪い、発言すると負け組になるのではないか――。いろいろな感情があって消費者は大声で言えないのです。ですので、消費者が声に出せない悩みや望みは何か、丁寧に観察しなければなりません。
 例えば、インタビューの中で一緒にスーパーに行った際、消費者が食品のパッケージの裏を見たとすると、「なぜ裏を見たのですか」と尋ねる。すると、「実は子供がアレルギーで」と消費者が答え、新たな事実が分かることもあります。
 どうすれば消費者はより幸せな暮らしができるかといった大きな視点を持ちながら、 なぜ消費者は買わないのか、なぜそう言ったのかなどに注目して深層心理を理解することがインサイト発掘のヒントになるでしょう。

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2025年04月26日

Posted by ブクログ

丹念な取材をされているが、性質上提灯記事にならざるをえなかった印象。刀の弱点は何か?失敗例はないのか?良いところしか書いていないので勘繰ってしまう。

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2025年03月15日

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