【感想・ネタバレ】水ビジネス ──110兆円水市場の攻防のレビュー

あらすじ

地球上の水のうち、人類が使用できるのはわずか0.01%。しかし牛丼1杯作るのに2000リットルもの水がいる! 水をめぐる問題を多角的に解説。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

私は学生で就職活動の一環として本書を読んでみましたが日本の現状から海外の現状まで幅広くまとめられており非常に勉強になりました。
以下に自分のアウトプットとして簡単にまとめを書かせてもらいます。

全人類が例外なく必要とする水。
その8人に1人は安全な水を飲めない。
サダム・フセインは「石油と水は国家なり」と言い、イラン・イラク戦争の発端も水であったと言える。
今後水ビジネス市場は110兆円市場になると言われており、世界各国でこの大型市場の争奪戦が起きているが、日本の企業は出遅れている。
というのも海水淡水化技術では日本が優れているが、110兆円のうち100兆円は管理・運営であり日本の上下水道の管理・運営は地方行政がになっているからである。
ただし漏洩率をみると日本の平均は7%であるのに対しロンドン26%香港26%韓国20~40%と誇るべき素晴らしい技術を持っているといえる。
このような技術を海外に売り込むためには日本政府の支援も必要になる。

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2011年12月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

仕事で上下水道セクターを担当するようになり手に取った本。著者の吉村氏は水分野では有名な方であり、水ビジネスのニュースではよく拝見する。国連テクニカルアドバイザーや「水の安全保障戦略機構」技術普及委員長などを務める。水分野の最近の潮流を知るにはとても良い。(但し、これまでのODAが著者の言うとおり悪い側面(「海外の水企業を利するもの」)のみを持っていたわけではないだろう。)出典があまり詳しく書いていない点は気になる。

第1部 世界中で足りない水
 第1章 世界を襲う「ウォーター・クライシス」
 第2章 「ヴァーチャル・ウォーター」―水輸入大国・日本
 第3章 地球温暖化が水資源の枯渇をもたらす
第2部 水が引き起こす戦争
 第4章 イラク戦争は「水戦争」だった
 第5章 世界は水をめぐる紛争・問題に溢れている
第3部 巨大「水マーケット」をめぐる攻防
 第6章 IBMが水ビジネスに乗り出した意味
 第7章 水不足に商機を見出す海外「水メジャー」
 第8章 新興国も参入する「110兆円水市場」
 第9章 日本の上下水道の現状と課題
 第10章 動き出した日本の産・官・学

・水ストレスの定義は「需給バランスが崩れ、必要量を賄えない状態」
・日本の水道法では「安全な水」とは、蛇口での遊離残留塩素濃度を、0.1mg/L以上に保持することを定めている。

・日本の平均漏水率は7%、東京都はわずか3.6%

・その国であるモノの製造に使われた水資源を現実水(リアル・ウォーター)、輸入国が、その輸入されたモノを国内で作ったら必要になるであろう水資源が、仮想水(バーチャル・ウォーター)。

・海水の淡水化には2つの方法がある。1つは熱を遣って水を蒸発させて、冷やしながらとる方法、もう1つは膜を使って回収する方法。(p50)

・既に国連は2050年頃、約40億人が水不足に直面するという報告を行っている。(p101)

・水メジャーの説明。ウォーターバロン(ヴェオリア社、GDFスエズ社、テムズ・ウォーター社)(p105)

・日本のODA経由の水関係ビジネスは、浄水場や下水処理場のハコモノ建設に限られ、日本が建設した後は、フランス系の企業が管理運営している例が多い。極端にいうと日本のODAは海外の水企業を利するために活用されているとも言える。つまりは「露払い」というわけだ。今後日本は、ハコモノだけではなく、人材育成や維持管理をも含むODAをするべきであろう。(p118)

・ダボス会議の2009年年次報告書では「人類がこれまでとおなじように水資源を使い続けると、世界はこの先20年以内に水資源破産の苦境に立ち、今以上に深刻な経済崩壊を迎えるであろう」という重大な警告を発していた(p120)

・2025年には世界の水ビジネスは約110兆円規模になるとも言われているが、その内訳は、日本が得意とする海水淡水化の膜などの素材分野が約1兆円、エンジニアリング、調達、建設などが約10兆円、そして残り約100兆円は施設管理や運営業務と言われている。(p130)

・その(=海水淡水化)の代替案ともいえるのが、膜を使った下水の再生利用である。従来型の活性汚泥法に膜処理を組み合わせて、水資源を創出するMBR(膜式活性汚泥法)である。(p133)

・日本人がどれくらい汚水処理の恩恵を受けているかを示す汚水処理人口普及率は86%。この数字は下水道、農村集落排水、合併浄化槽を含む、汚水全体の処理率である。(下水道単独では約72%)さらに下水を処理したときに発生する下水汚泥の資源化率は70%に達する。資源化された物質は、主に建設材料や、セメントの材料、最近では炭化した下水汚泥は発電などにも使われる。(p141)

・世界銀行や、アジア開発銀行、諸外国が提示する上下水道事業の民営化に関する国際入札参加資格(PQ)が日本企業にはないのだ。(p143)⇒ODA資金を活用して日本企業にPQをつけるべき。

・我が国には世界屈指の高い水に関するテクノロジーがある。例えば、膜処理技術(海水淡水化、下水再処理膜)、水管理技術、遠方監視技術、微量分析技術、合併浄化槽技術、運転管理技術、維持管理ノウハウ、災害予測、災害復旧、不断水工法・・・そしてもうひとつ、・・・日本が培ってきたローテク。例えば水道の漏水発見、防止技術。(p147)

・自民党の「水の安全保障研究会」。(p158)

・「水の安全保障戦略機構」(発起人は、森善朗、御手洗冨士夫、丹保憲仁(北海道大学/放送大学名誉教授))

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2010年12月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

日本を代表する水専門家が、地球の水不足事情とそこから派生するビジネスについて説明された。

日本で生活していると、世界の水不足なんて想像もつかないことであるが、これはひとえに上下水道技術で日本は世界のトップクラスにあることの恩恵を受けているからであると述べられてる。また、日本の周辺諸国の水利用環境が改善されたのも、我が国から贈られた政府開発援助に拠るところが大きいと述べられている。

しかしこうした技術を持ちながら、水ビジネスの世界で日本は遅れをとっています。なぜなら、こうしたハコモノを建てた後のメンテナンスを日本の民間企業が行っていないため、海外の民間企業に先を行かれているのである。ODAによって途上国に建てられたハコモノの技術は確かに世界ではトップクラスにあるが、それも海外の民間企業にリードを保てる余裕はない。また、ハコモノの技術も既に追いつかれ始めている。

これらの現状を踏まえ、日本の意思決定のトップである政治家たちに協力して、日本から取り組む水不足対策が思案し続けてきたが、政局の流れにより立ち消えになってしまったのは勿体無い。
故・中川昭一氏がこの問題に関心が高く、積極的に取り組む意志を示されていたことを知り、日本は大変重要な政治家を失ったことを改めて思い知らされた。

民主党政権に変わって再び自民党が政権を奪還したが、日本は世界の水ビジネスにおける遅れを取り戻すことができたのであろうか。

本書の初版発行は2009年である。

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2013年05月10日

Posted by ブクログ

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地球上の使える水は存外少ないこと。イラク戦争の実相は水争奪戦争であったこと。水処理技術の進展が世界の水問題に光明をもたらし、世界の成長に大いに寄与する可能性を秘めているということ。110兆円水市場に世界の耳目が集まっている

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2012年07月01日

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