【感想・ネタバレ】標本画家、虫を描く――小さなからだの大宇宙のレビュー

あらすじ

◤点と線、ペン先でとらえる生命(いのち)の形◢

師匠はいない。相棒は顕微鏡と製図用ペン。
描くのは体長数ミリの昆虫たち。
来る日も来る日も、ただひたすらに虫を描いてきた。
孤高の標本画家・川島逸郎が自らの半生と仕事を語る。

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《 標本画100点収録!》

体長が数ミリほどの昆虫を緻密な線と点で描き、第一線で活躍する専門家たちからも一目置かれる、標本画家・川島逸郎。経験と知識に裏打ちされたテクニックを駆使し、私たちの小さき隣人たちの姿を描き出す。五〇年を経てなお続く試行錯誤の日々を、自ら手がけた標本画とともに語る。

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【目次】
■まえがき
■虫たちの記憶
■あらためて、カブトムシに向き合い直す単なる写生にあらず
■異次元のミクロワールド
■「描くため」の備え──描画以前
■前処理 正確に描き、示すために「線引き」の高いかべ
■シンプルな線画でこそ伝わることとは?ひたすら点を置き続ける
■光をとらえる
■数える毛と数えない毛
■鱗粉に隠された真の姿 チョウの体
■修正は徹底的に
■忘れられない失敗
■スケッチを通して、アリの体を学ぶ
■無理難題の依頼
■窮余の策? 『完訳 ファーブル昆虫記』図版制作の舞台裏前例のない絵
■蜻蛉の尻尾を描き続けた日々
■小さな蜂と、先人の仕事とに挑む
■ナナホシテントウを描く
■なめる口とかじる口 カナブンとアオドウガネ
■忌み嫌われる虫 クロゴキブリを描く
■うとまれる虫に秘められた美しさ
■勇み足はご法度
■ひとつの主題に挑む ホタル科幼虫を描くまで
■蟷螂の斧 カマキリと私と
■あとがき

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Posted by ブクログ

2024年出版。タイトル通りだが、精緻な標本画がとても多い。神が作った昆虫という微細なプラモを更にパーツに戻すが如く、外骨格の虫はパーツ分解が可能なのだと知った。で、そのパーツ毎に、線と点だけで立体として描く技。単純に「正確に書けば良い」等という認識は吹っ飛んだ。好きでなければ不可能、気が狂うだろう…。出版時で筆者は55歳だが、未だ技術を極める途上であるとの事。いやはや…。
自分は特に昆虫好きという訳では無いが、科学全般は好き。「描く為には科学的視点と分析・知識が必須」という点から、面白かった。
正直、最初の1ページを読んだ時、「うわ、これは読むの辛いかも…」と感じたのが誤りで良かった。「読み物」として面白さを求めると、かなり限定的な手応えになるかと。

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2024年12月08日

Posted by ブクログ

標本画100点を収録。
小さな昆虫を緻密な線と点で描く標本作家の、
昆虫への思いと作画への経験と技巧についてを綴り、
そしてなお、試行錯誤する日々を描いた、エッセイ。

幼少の頃から昆虫を描き始めて50年。
大学の昆虫研究室で学んだ知識が基盤となる、数々の標本画。
学術論文での標本画も担当している。
顕微鏡での観察と製図ペンと丸ペンを駆使した絵の緻密なこと。
線を引くことの難しさ。いかにシンプルで単純化するか。
点描の繊細さは、点を打つのではなく、置くこと。
修正はペンナイフや白絵具で。失敗したときの対処も。
標本画は絵画ではない。形態的にも解剖学的にも正確さを追求。
無理難題の依頼はヒアリ。更に「完訳ファーブル昆虫記」の話も。
先人の仕事を超えたいと描いてきた人生の奥深さに感嘆しました
そして何と言ってもモノクロの標本画が素晴らしかったです。
カブトムシ、トンボ、ハチ、ナナホシテントウムシの
精巧なこと。全体像だけでなく、学術的にも必要な部分さえも
詳細に描いています。クロゴキブリすら美しく感じてしまう。
この本には掲載されていませんが、カラーの標本画もステキです。

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2024年10月01日

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