あらすじ
鬼才・朱雀門出が採話した奇絶怪絶な体験談の数々を
描きおろしの怪画と文で綴る魅惑の闇世界。
「人魚に殺(ころ)まされるからな」
盆の海に男が三人。
「××のようにならなければいいだけ」
おまえは何を撫でている……?
脳がザワツク奇怪な怪異蒐集録!
怖い話、幽霊の話に収まらぬ奇怪な体験談を取材し続ける朱雀門出の最新怪異録。
盆に船を出してはならない禁忌を好奇心で破った男が語る不気味な海の記憶…「妹が死んだ時の海亀」
夜の散歩で見かけた焚き火を囲む壺のようなもの。壺はぶつぶつと何かを喋り…「焚き火を囲む首」
姪がおじちゃんと呼ぶ視えない人。いつしか自分にも視えだしたソレが口にする不穏な言葉とは…「子供のお漬物」
幼い頃にさせられた異様な作業の記憶。箱にミニチュアの父母を詰めるというのだが…「報い箱」
ほか、全話に著者の怪画付き。
得体の知れない奇怪さに本能が舌なめずりをし、問答無用で惹きずりこまれる怪楽の65話収録!
平和な日常生活に飛び込んでくる、耳を疑う言葉。
思考を停止させるような異物感。
「人形の材料にイヌは適してないよ」
「鬼にワザマられやすいから」
「俺の〝水なんとか〟を掘り出せ」
「子供のお漬物がへれめてる」
「オヤコタワケめ!」
「蛇が喋るまで待ってくださいね」
奇妙な言葉の数々の裏に潜む不穏すぎる何か。
それが見えた時、恐怖はあぶくの如く弾けだす……
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
とにかく表題作がめちゃくちゃ面白い!
『妹が死んだ時の海亀』凄いの一言。異界へつながるはなしはよだれ出る笑
人魚に殺まされるって意味不明すぎて怖い。
実際にリアル友だちは舟に一緒に乗っていてとかなるとほんまに御盆に海に出るのは危険ってことだと思う。
あと『顔面扉』もかなり好み。異界へ行って戻ってきたけどそこも(本当の世界)なのかどうかわからない。
『P山』は一も二も異界からの干渉としか思えない。『カエルの荷台と口のないケモノの頭』『人攫いはリアカーで』妖しさ満載すぎる。『気付かぬクズ手袋』軍手は落ちていても絶対拾ってはいけません。前に読んだ実話怪談ととてもリンクする。『石という模様がある石』これも昔から石は拾ったらあかんってなんとなく思っていることと重なるなぁと思う。『ポケット』誰もいない何もない部屋に貼られた紙に書かれたポケットと言う文字に符合してポケットのなかに入っていたビー玉を管理人さんに渡すとその次の日からその管理人さんは連絡がつかなくなったということは異界に連れ去られたのか。ビー玉は目印なのか?
本当に世界は創らなくたってフシギに溢れてる。
Posted by ブクログ
薄気味悪さのレベルが高い。
隣に座った知り合いに「怖いってほどじゃないんだけど、変な話ある?」となにげなく聞いたら、相手が思い出したように答えてくれた雰囲気がある。
しかも思いがけず気味が悪い。
実際に怖い話といっても、創作のような怖い話はなかなか存在しない。
その隙間をつく、妙にリアルな話ばかりが集められている。
実話怪談のなかでもレベルが高い。
いい作者を見つけた。
Posted by ブクログ
わかりました。これ、この怖いというよりは不気味で、底のない穴に砂が落ち続けるみたいな心許なさがある読み心地。既視感があるなあと思っていたが、平山夢明の顳顬草子だ。あの違和感がもっとフィクショナルになっている感じ。
怖いと馬鹿馬鹿しいの境界線で、ギリギリ恐怖心が勝つ絶妙な塩梅。は?気持ちわる......と思わず眉を顰めたくなる小噺の集合体。
この方向性の怪談本が出るのは素直に嬉しい。
各話のタイトルもいい。
シリーズ化してほしいな。
Posted by ブクログ
「なんだこれは?!」と戸惑い衝撃を受ける1冊。
実話怪談特有の「オチの無さ」が極まった印象を受けるが決して不快ではなく、実際に起こったからこそ不可解で奇妙キテレツなのだろうと納得してしまう。
人におすすめするのは難しいが好きな本になった。
「おやこたわけ」に出てくる訳のわからない守ったくれたものがとても好き
Posted by ブクログ
夜の墓場で米津玄師のLemon歌う話が入ってて「なんでや」になったけどしっかりオチは怖かった。どの話もあまり他の怪談本ではなかなか味わえないようなユーモアと狂気があってかなりよかった。
Posted by ブクログ
松原タニシさんのラジオに朱雀門さんが出られていたのをきっかけにこちらの本を手に取りました!
どれも『え、、これ実話なの?』という不気味な話の連続で、あっという間に読んでしまいました。
語り口が淡々としていることもあり、怪異は日常の中にふっと紛れているのだなと感じました。一方でラジオの中でもおっしゃっられていましたが、当事者が抱える精神的な不安もかなり影響しているように感じました。
本を閉じた後、後ろを振り返ったらそこには何かが…読後に思わず身震いしてしまうような1冊です。
Posted by ブクログ
小説が小説であるために削ぎ落とし穴を埋め整えざる得ない、世界にある歪みや傷、答えの出ないわからなさ不条理、あるいは“間違い”、そういうものをそのまま描く、描けるのが実話怪談、というような気がしている。小説でも、稀に垣間見れるそれらに出逢うと嬉しくなってしまうけれど、ここにはそれだけが淡々と静かにただあって、居心地が悪いしやっぱり怖い。それでも読んでしまう。読みたくなる。文章で表現するアートで今いちばん面白いのは実話怪談だ、と言い切るには色々と読んでいないものが多いけれど、それでもこれはとても魅力的な言語によるアートだと思う。めちゃくちゃおもしろい。
Posted by ブクログ
怪奇な体験談を取材し続ける朱雀門出の最新怪異録。
盆に船を出してはならない禁忌を好奇心で破った男が語る海の記憶『妹が死んだ時の海亀』他、怪談を65話収録。
不気味なホラー短編集。初読の作家さんなんですが、実話怪談のジャンルになるのかな。
バン! と派手に怖いというよりは、正体がわからない不気味さがずっと続く感じです。久々に会った友人に、最近なんかあった? とか聞いたら聞かせてくれそうな、不思議でちょっと嫌なリアリティ。
登場人物の仮名が、あいうえお順で機械的に名付けられているのも無機質でなんか不気味でした。
個人的には、表題作の『妹が死んだ時の海亀』と、『ハカデウタエ』『呪った帰りだったので』という話が、そわっと不安な気持ちになって好きです。
唐突に下ネタっぽい話もあったりするので、そこはちょっと注意。