あらすじ
現代の中高生は成功へのかつてないプレッシャーにさらされており、アメリカの成績優秀校では、不安症や自傷行為の割合が急増している。なぜ彼らは目標達成を渇望し、それに満たないと自身には価値がないと思うのか。現代社会に潜む「有害な達成文化」を明かす。
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Posted by ブクログ
記事をまとめたような本なので、読み応えはあるけれど、すっきりとまとまっているわけではなく、自分の中で消化するのに時間が必要でした。
著者は米国アッパーミドル層の子どもと保護者を調査し、その危機的状況を明らかにするとともに、各所での取り組みや近年の心理学的知見から、処方箋を導き出しています。
主な関心は、どうしたら子どもたちを潰さずに成功に導くことができるかにあります。
過酷な競争を勝ち抜いて成功するには、心身の健やかさが必要で、そのためには保護者も心のバランスを保つだけでなく、学校も含めた周囲の大人たちがゼロサム思考を否定し、子どもたちに「自分は無条件に価値がある存在だ」という認識を持たせてあげるべきだ。といった内容でした。
何を今さらと思うような話でしたが、競争社会の価値観から抜け出す困難さと不安は、子を持つ親として理解できます。
大切さ(mattering)の素晴らしさを華々しく語る終わり部分には鼻白んでしまいましたが、引用されている保護者たちの心情には共感できることも多くありました。
子どもたちのスケジュール管理に忙しい親を「ハムスターの車輪のような役目」と書いていますが、ポケモントレーナーという呼び方を思い出しました。
ポケモンにされてしまった子どもたちは、自我を形成する思春期に危機を迎えます。
危機的状況に陥る前に、当たり前にあるはずの価値を見直し、言葉と態度で伝えていく必要はあるのだと思いました。
~引用~
p.27
本来ならストレスを解消するはずの楽しい課外活動も、人生の経歴書を埋めるための手段になってしまった。
p.31
名門大学からの関心を得るために、自分ではない何者かになって熱意があるふりをしなければならない
p.41
高い目標に向けた健全な期待と過剰なプレッシャーとを区切るあやふやな線はどこにあるのか?
p.48
もし『ステータスなんて気にしない』という者を部屋に集めたならば、たちまち『どれくらいステータスを気にしないか』という尺度でその場の序列ができあがるだろう
p.58
私たちは猛スピードで上昇するエレベーターを目の前にした心持ちに襲われている。子どもが乗り遅れると、永遠に地べたに取り残されてしまうのだ。
p.216
謙虚であれー一自分を卑下してはいけないが、自分のことばかり考えてもいけない