【感想・ネタバレ】NHK「100分de名著」ブックス ドラッカー マネジメントのレビュー

あらすじ

経営学書として異例の100万部を突破した『マネジメント[エッセンシャル版]』。事業とマネジメントにおける目的の本質を捉え、人と人とが働くことの真髄を訴えかけるドラッカーの「基本と原則」は、多くの人の感動を呼び続ける。ドラッカー経営学の集大成から、いま私たちに求められる資質を学ぶ。NHK放送で大好評を博したテキスト2011年度シリーズを単行本化! 本文、詳細な注釈に加え、番組4回で放送されたゲストとの対論、読書案内などを新たに収載した完全保存版。

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ドラッカーの著作の翻訳を手掛ける上田による、ドラッカー『マネジメント』のNHK100分で名著の公式テキスト。『マネジメント』の概要、これに関わるドラッカーの人生や社会の歴史的背景、その他の著作の位置付け、ドラッカーの思想の普遍的・現代的な意義などを描いている。本テキストを読むことで、ドラッカーが書いた本作品は単なる高収益企業の経営論のような狭量なものではなく、人が生き生きと働きより良い社会づくりに貢献できる理想的な社会を目指したとき、組織はどうあるべきか、その中で中心的な役割を果たす「マネジメント」はどんな力を発揮すべきか、を語った懐の深いものであるということがわかる。また、その目的、背景を理解した上で概要を知ることができるため、非常に本作『マネジメント』の理解が深まる。

『もしドラ』が有名なのでもう一度読んでみたくなった。
印象的だったのは、「会社は社会のために存在し、利益のためではなく、人間を幸せに導くために存在する」という箇所。今となっては当たり前だと思うし、著名な経営者の同様の発言も多いので真新しいわけではないのだが、1973年に出版された本作でも同様に主張され、またこれが古典になっていることを考えるともっともっとこの主張について真剣に捉えていかなければならないと強く感じた。自社のビジネスも当然社会的意義を掲げているが、どうしても日々追うのは利益や売上であるし、社会的意義のために本当のところ必要な利益は一体どのくらいが適切で、どこまでいけば過剰なのか、このあたりまで考えきれていないので考えたいと思った。

また、「そもそも利潤動機なるものが、我々の心のなかに存在するのかどうかが疑わしい」という指摘も鋭い。利益を上げ続けたいというその一点が企業の目的ではなく、むしろその利益を手段としてなんらかの目的を達成しようとしているという話で、これも当たり前だが、真剣に捉えたいと思った。日々の業務の中だとここでいう手段の目的化が起こっている部分は大いにあり、倒錯しないように気をつけなければと思わされた。

来年からマネジメント業務が増えるので、『マネジメント』を時々参考にしながら頑張りたい。

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2023年11月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ビジネス経営学における現代の孫子の兵法。孫子の兵法が数多の戦略家の基礎となった様に、現代のビジネスマンの基礎となり得るだろう。

その一つにマネージャー職に就く前からでも、セルフマネジメントをする事は重要であると説かれているからだ。マネジメント職に就いてから、一般職に就くと視界が広がるのだ。これは間違えない。私もプレーヤー目線からマネジメント目線で組織を見た際に視界が変わり、この組織に何をもたらせれば良い方向に向かえるのか、と自然に考える様になった。この様に組織マネジメントも、そして部下世代からセルフマネジメントも推奨するのが本書であり私を含めた部下にも読んでもらいたい作品である。

マネジメントがもたらすもの、それは働く人間の充実感であり、それをもたらすのは顧客の満足度に注視して働く事。単に金稼ぎではない心の満足度を上げる事である。
マネジメントの役割は大きく以下の3個
1⃣自らの組織に必要な役割 使命を果たす。→やるべき事を明確にし実行できる様に作戦を構築しする。
マーケティングをし分析をし顧客の満足できるイノベーションを起こす。経営資源を潤滑にし、生産性を求める事、
2⃣仕事を通じて働く人たちを活かす。→人こそ資産。金稼ぎ・生産性だけではいつか倒れる。
経営資源を円滑にし肉体労働が得意な人間に知識労働をさせない適材適所を行う。
3⃣社会の問題について貢献する。→社会のニーズを追求し応える事。一人勝ちではないwinwinの関係を築く。
営利目的だけでない社会的目的を果たす事が肝要である。利益は妥当性の尺度であって、意思決定の理由や原因根拠ではない。

マネジメントに必要なスキル
①意思決定 多様な意見を徴収し、いくつかの判断の中から意思決定は可能。何もしない、も行動の一つ。
②コミュニケーション 人を動かせるか。自分が所属する組織に何を貢献できるか。お互いに理解を共有し合えるのがコミュニケーション。
③管理 いかに管理するかではない、この組織で何を管理するのかが重要。管理する事自体は大した問題ではない?
④経営科学 経営科学を使えば組織に貢献できる。

これらは経営者だけでない。労働者にこそあるべきスキルだとも記載がある。
全員が社長の様に働かなければ成功は難しい。全体像を見ながらすれば自ずと動き方が見えてくるという事だ。

マネジメントは今後の人生に大きな影響を与えそうだ。

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2022年04月21日

Posted by ブクログ

紹介されて読みましたが、1~2時間で読めるドラッカーの入門書としては最適ではないかと思います。
『マネジメント』の解説から入るのではなく、ドラッカーという人の生涯や時代背景を説明しているところがありがたいです。

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2022年02月14日

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ネタバレ

「マネジメント」のエッセンシャル版と「もしドラ」を読んだ状態で読んだ。「マネジメント」の内容がわかりやすく説明されていて読んでいて参考になった。「マネジメント」の内容を知りたかったら、この本から読んでもいいと思う。人に薦めたくなる本。

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2019年05月08日

Posted by ブクログ

「もしドラ」は流行りすぎたし、ドラッカーの本は多いし重そうだし…という人におすすめ。
とにかくドラッカーの“はじめ”の部分だけを書いてくれている。

これをきっかけにもしドラもマネジメントも読んでみようと思う。

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2024年10月04日

Posted by ブクログ

世界的な名著と知りつつも未だに読めていなかったドラッカーのマネジメント。
それを100分程度で読めるよう分かりやすく纏めた一冊。
経営者でなくても読むべしと言われる理由がよく分かる。
彼の人を大事にする考え方や積極的に学ぼうとする姿勢は見習わなければ。
ハウツー本ではなく人生訓の宝庫のような本だったな。

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2023年10月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ドラッカーの翻訳者として第一人者である上田惇生氏によるドラッカー著「マネジメント」の解説書。

ドラッカーの生い立ちや社会的出来事を追って各時代の著書の要旨に触れます。
「マネジメント論」のエッセンスが分かりやすくまとまっています。
含蓄に溢れた一冊。


■「マネジメント」が感動を与えるわけ

ラッカーのマネジメント論をひと言でいえば「人と人とが成果を上げるために工夫すること」
お金儲けのための方法ではなく、人と人が一緒に働きながら、真っ当な社会をつくっていくための方法が書かれています。

根底には「人間の本当の幸せとは何か?」という大きな命題が横たわっています。

「お金を儲けるためにやってくるお客を相手にしてはいけません」
証券会社の役割は、世の中が必要としている「財・サービス」を提供することであり、お金が貯まり運用したいと考えているお客から集めて、資金を必要としている企業に提供することであり、儲けさせることが目的であってはならないのです。


■第一章 社会のためのマネジメント

●「傍らに立って見る者」であり続けたドラッカー

自然生態学者はジャングルを見て生態変化を伝えますが、こうすべきとは言いません。
ドラッカーは自らを社会に起こっていることを見て伝える社会生態学者と語ります。
自分は人の先頭に立って歩く者ではなく、その有り様を人に伝えるべき者であり、得意とするものではないかと思い至ったそうです。
−マネジメント論の大家と言われるドラッカーは、得手に帆を揚げて突き詰めた人物だったことが分かります。


●すでに起こった未来を見る

ドラッカーは、ヒトラーが本気で「世直し」のためにドイツを、ひいてはヨーロッパを支配しようとしていることを知ったとき、ナチスが力を得て、ヨーロッパ全土を支配する絵がはっきり見えたと言います。

ドラッカーは現在起こっていることを見るとともに、その先に起こる未来をいつも見ています。

ドラッカーは未来について確実に言えることは2つしかないとくどいほど言います。
ひとつは「未来は分からない」ということ、ふたつめは「未来は現在とは違う」ということです。
しかし分からないながらも、未来を知る方法も2つあると続けます。
ひとつめは「すでに起こった未来を見ること」。
たとえば今年の出生数が減れば6年後、学校では教室や教員があまる。つまりすでに起こったことを観察すれば、その先の変化もおのずと見えてくるというわけです。
もうひとつの未来を知る方法は「自分で未来をつくること」です。
難しいようですが誰にでもできることです。子供を一人つくれば、人口は一人増えます。たとえ小さな事業でも起こせば、財・サービスと雇用を生み出します。
歴史はビジョンをもつ一人一人の人間がつくっていくものだとも、ドラッカーは言っています。


●資本主義も社会主義も同じ穴のムジナだ

資本主義も社会主義も人間を幸せにしえなかった理由は「どちらの社会システムも『経済至上主義(金を中心とした世界)』を基本にしていたからだ。」
どちらにも失望したヨーロッパの人々に用意されていた「脱経済至上主義」は「ファシズム全体主義」しかなかった。民主主義を市民自ら獲得した国はファシズムに抵抗し、そうでない国はファシズムへ走っていったのです。
−ドラッカーは人間を幸せにする答えを考えます。


●マネジメントが人間に幸せをもたらす

すべての財とサービスが組織で生みだされ、すべての人が組織で働いているとするならば、組織をより良いものにしていけば、組織の集まりである社会もよくなるはずだ。
資本主義や社会主義などの「イズム」に代わるものとしての、組織の運営の仕方(=マネジメント)にこそ注目すべきではないか。

儲けるための組織運営ではなく、あくまで中心に「人」がいる組織であり社会です。人と人が一緒に働きながら、それぞれが幸せになるためには、いかなる組織運営を行っていくか。


●経営三部作、そして「マネジメント」へ

「経営に絶対はない。絶対というものはこの世に存在しない。すべては変わっていくものだ。」これは日本人の諸行無常の思想に通じています。

「仕事のことを一番良くわかっているのは現場である。彼らの考えを経営に取り入れるべきだ」

「世の中のことをもっと考えなければいけない」


●文明の運命を握るものとしてのマネジメント

人間を幸せにする社会とはなんだろう?と考えた末に、最終的にたどり着いたのが「マネジメント」という方法論だったのです。

組織の中で人と人は、それぞれの理想を抱きつつ、いろんな工夫をしながら仕事をしていく。「そうしたものの蓄積こそが文明である。」


■第二章 人こそ、最大の資産

●「マネジメント」と他の経営学の本との違い

経営学の本というとノウハウが書かれたものをイメージしがちです。
ドラッカーの「マネジメント」では「なぜマネジメントを行うのか?」つまりマネジメントの目的や役割、企業の存在理由などが最初に詳しく触れられているのです。その後に「方法」と「戦略」が語られます。

●その事業にドキドキワクワクしているか

マネジメントの役割のひとつは「本業を定め、真剣に取り組み、世の中に求められる役目を果たす」

世界で一位か二位になるつもりの事業だけを残しなさい。
あなたの会社のやっている仕事は、すべてワクワクドキドキするものばかりですか?
なかには淡々とやっているものもある。
本気で取り組む仕事は、ワクワクしていてしかるべきであって、そうでないものには取り組むべきではない。
そうでないものは思い切って止めてしまうか、その仕事を熱意を持ってやるところとコラボレーションしたほうがいい。

喜びを感じながらやる仕事を本業とすべき

●「人」こそが企業の財産である

現代社会においては、ほとんどの人がなんらかの組織に属しながら働いています。企業は、個人が仕事の中で自己実現を果たせるような仕組みをつくることが必要になってくる。
顧客が何を求めているかを知り、それを提供することが企業がなすべきことだ。
そしてもうひとつ正社員以外の人々も含めて働く人々が仕事に生きがいや幸せを見出せてこそ、会社としての存在意義がある。

●社会のニーズに応えることが社会貢献である

会社は誰のために存在していますか?
答えは、「会社は社会のためにある」です。
会社とは社会から人材や資源をあずかり、社会に必要とされるものを提供する役割を果たすものである。
会社は、社会に悪い影響を与えないようにして、社会に貢献することを考えなければいけない。

組織は自らの「強み」を用いて、社会の問題に貢献せよ。
社会のニーズに応える事業を行えば、それはすべて社会への貢献になるのです。

●マーケティングとイノベーション

企業側が「何を売りたいか」ではなく、顧客が「何を欲しているか」−それを考えるのがマーケティングです。
マーケティングの目標は市場における「シェア」です。
世の中の変化を見ながら、企業自体も変わっていかねばなりません。
イノベーションとは単なる技術革新ではありません。物事の新しい切り口、新しい捉え方、新しい活用法を創造する行為のことを指します。

イノベーションの機会はいくつかあります。
一番目が「予期せぬ成功・失敗」です。
想定していなかった人たちが商品を買うことがあります。想定していなかった使われ方をすることがあります。その顧客の存在に気づき、求めに応じ開発して急成長を遂げることがあります。
また予期せぬ失敗から市場の変化に気づき、固定観念を改め大成功に繋げることがあります。
二番目の種が「ギャップ」です。
「なんか変だな、おかしいぞ?」とギャップを感じるところにも機会は潜んでいます。
髭剃り不要の人たちに、髭剃りを省いた安い価格で成功したクイック床屋は好例です。
三番目は「ニーズ」。
今までにないものが必要になったときです。
電話が普及しはじめた頃、電話交換手が不足して、自動交換機が大成功をおさめました。
四番目が「産業構造の変化」。
IT社会が到来し、新しい切り口、捉え方、活用法が生まれました。
五番目が「人口の変化」。
例えばダイバーシティ問題です。高齢者や女性が新たなターゲットになり、働き手として捉える時代がきて、イノベーションの機会が生まれました。
六番目が「認識の変化」。
例えば健康ブーム。かつては具合が悪くなったら病院に行くのが当たり前でした。いつしか自分で健康を管理するように意識が変わりました。DHC(大学翻訳センター)はサプリメント事業に手を出し成長しました。
最後の七番目が「発明・発見」です。
説明の必要はありませんが、最後に位置付けられているように成功率は低いです。打率の悪いホームランバッターです。

◆イノベーションとは、意識的かつ組織的に変化を探すこと。それらの変化が提供する経済的・社会的イノベーションの機会を体系的に分析することである。

◆イノベーションとは、理論的な分析であるとともに、知覚的な認識である。イノベーションを行うにあたっては、外に出、見、問い、聞かなければならない。

●経営資源・生産性・社会的責任

マーケティング、イノベーションに続く、企業の目標の三つめが「経営資源」です。
モノ・ヒト・カネが潤沢であることが経営にとって望ましいのは当然です。

四つめは「生産性」。
肉体労働、サービス労働、知的労働の生産性をそれぞれ向上させていく工夫が必要です。
サービス労働はサービス自体を本業とするところへ外注すべきです。たとえば病院の正社員はゴミを拾っても直接給与は上がりません。
知的労働はやらないでいい仕事はやらせなければ生産性は向上するはずです。聞いていない会議、読まない報告書です。

最後の五つめは「社会的責任」です。
第一に世の中に害を与えない。
第二に得意分野で何らかの形で社会に貢献することに目標を設定する。

以上が、企業が良い仕事をしているかどうかの五つのモノサシ、目標です。

◆組織が自らの使命を果たすための五つの目標

・マーケティング

マーケティングは顧客からスタートする。顧客の現実、欲求、価値からスタートする。「我々の製品やサービスにできることはこれである」ではなく、「顧客が価値ありとし、必要とし、求めている満足はこれである」

・イノベーション

予期せぬこと、ギャップ、ニーズ、構造の変化、人口の変化、認識の変化、新知識の獲得、これら七つの機会すべてを分析することが必要である。油断なく気を配るだけでは十分ではない。分析を体系的に行わなければならない。機会を体系的に探さなければならない。

・経営資源

マネジメントとは、人にかかわるものである。その機能は人が共同して成果をあげることを可能とし、強みを発揮させ、弱みを無意味なものにすることである。

・生産性

知識労働者に生産性を要求するのであれば、成果を上げることのできる部署に配置しなければならない。いかに懸命に働こうとも知識や技能が成果に結びつきようのない部署に配置してはならない。

・社会的責任

社会や経済は、いかなる企業をも一夜にして消滅させる。企業は、社会や経済の許しがあって存在しているのであり、有用かつ生産的な仕事をしていると見なされるかぎりにおいて、存続を許されているに過ぎない。

◆企業は利潤を目的にしてはならない

利益が重要でないということではない。利益は企業や事業の目的ではなく、事業継続の条件である。利益は、事業における意思決定の理由や原因や根拠ではなく、妥当性の尺度である。

●知りながら害をなすな

企業の目的の定義はただひとつ「顧客を創造すること」
企業は、この社会で暮らすみんなに、便利さや快適、喜びを届け、それによってよりよい社会がつくられていく。
利益は企業が社会に対する役目をちゃんと果たしているかのモノサシ。
そしてもうひとつ企業に不可欠なのは「プロフェッショナルとしての倫理」です。
プロたるものは知りながら害をなすことはないと、顧客が信じられなければならない。

■第三章 誰もがマネージャーになれる

●マネージャーとは、オーケストラの指揮者である

仕事は分業化・細分化・専門化しています。
こうした専門家たちが一緒に働くようになったのが組織社会です。
それぞれの専門家たちの知識や能力をうまく繋げて、組織全体の「成果」に結びつけていくのが、マネージャーの仕事です。
そうして、投入した資源よりも大きなものを産み出すことがマネージャーの仕事です。
全体が目指すべき方向性を示し、各々の優れた部分を引き出すことを常に考えるのです。
各々の強みを引き出すことで各々の弱みを打ち消します。
マネージャーにもっとも必要とされるのは才能ではなく、「真摯さ」です。
マネジメントスキルは学べる。人材開発は制度を通じて講じられる。
自分自身にも厳しく、仕事や人に対して誠実でまっすぐな人物−そういう人こそマネージャーになる資格がある。

◆マネジメントに必要な四つのスキル

・的確な意思決定

単に「決めること」ではない。起こっている「問題」を明確にすることが重要。
「行動するか否か」という問いかけがあって然るべき。

マネジメントの行う意志決定は、全会一致によってなしうるものではない。対立する見解が衝突し、異なる見解が対話し、いくつかの判断のなかから選択が行われて初めてなしうるものである。したがって、意思決定における第一の原則は、意見の対立を見ないときには決定を行わないことである。

・コミュニケーション力

コミュニケーションは人を動かす手段だ。
受け手が期待していること、関心を持っていること、理解できる言葉で語ることが大切である。
自分が組織に対してどんな貢献をなすべきかをハッキリさせておくことが必要。
上司と部下、他組織同士での認識の違い、考え方の相違をお互いに知ることこそが、組織におけるコミュニケーションの基本。

コミュニケーションは、私からあなたへ伝達するものではない。それは、我々のなかの一人から、我々のなかのもう一人へ伝達するものである。組織において、コミュニケーションは手段ではない。組織のあり方そのものである。

・管理能力

成果とは無関係の事柄を測定するのは止めるべきだ。
「いかに」管理するかではなく、「なにを」管理するかが重要。
人は組織の目的や、自らの位置付けと役割を、賞罰という評価で学ぶことになるので、仕事の成果の測定結果による賞罰には大きな意味がある。

管理のための測定を行うとき、測定される対象も測定する者も変化する。測定の対象は新たな意味と新たな価値を賦与される。したがって管理に関わる根本の問題は、いかに管理するかではなく何を測定するかにある。

・経営科学の活用

経営科学がリスクを減らすことばかりに偏重していることは批判されるべきだが、道具としてうまく使えば組織運営にも貢献を果たすはずだ。

経営学者の目的は、あくまでも診断を助けることにある。経営科学は、万能薬でないことはもちろん、処方薬でもない。それは、問題に対する洞察でなければならない。

マネジメントは組織で働くすべての人が学ぶべきもの。
組織のメンバー全員が、自らを律する帝王学を身につけて、全員がトップのように働かなければ、組織の成功、ひいては社会の反映はない。

成果をあげる人とあげない人の差は、才能ではない。
いくつかの習慣的な姿勢と、基礎的な方法を身につけているかどうかの問題である。しかし、組織というものが最近の発明であるために、人はまだこれらのことに優れるに至っていない。

●成果をあげるための5つの方法・能力

私が知っている成果をあげる人は、気質と能力、行動と方法、性格と知識と関心などあらゆることにおいて千差万別だった。
共通点はなすべきことをなす能力だけだった。

「時間管理」
成果に結びつかない仕事は切り捨てる
任せて良い仕事は部下や外注に任せる
時間は大きなかたまりで使えるように調節する

「貢献」
自分の仕事が社会とどう関わっているかを考える

「強み」
自分の強みを発見し、それを仕事の基盤にする。そうすることで弱みは意味のないものにすることができる。

「集中」
際立った成果をあげられる領域に力を集中させる。
仕事に優先順位をつける。

「意思決定」
問題の正体を明らかにすることから始め、異なる意見に耳を傾けることが重要。

●組織の正当性の根拠−それは「強みを生かす」こと

顧客と従業員のニーズを満たすことは組織におけるマネジメントのレゾンデートル(存在理由)にはなりえても、正当性の根拠にはなりえません。
マネジメントによって「強みを生かす」ことで、より成果を伸ばし社会貢献することこそ組織におけるマネジメントの正当性の根拠になります。

●何をもって覚えられたいか

子供や孫、あるいはまわりの仲間たちに、自分はどういう存在として記憶にとどめておいてもらいたいかを意識しなさい。
今よりちょっとだけ良い自分を思い浮かべながら日々を過ごす。毎日の一挙手一投足が自然と「なりたい自分」へ向かい5年後には確実に変わっているのです。
必ずや「よい自分」「よい会社」に近づくことができるはずです。


■第四章 ドラッカーが見据えた未来

●新しい社会への移行

「今という時代」「来たるべき時代」
「社会構造の変化」は脱近代合理主義、知識社会の到来
知識社会とは、肉体労働者ではなく、知識労働者が中心の社会。
知識とは、成果を生むための高度な知識、常に変化し続ける知識。

●今、私たちは歴史の峠を越えつつある

歴史は数百年に一度、際立った転換をする。数十年をかけて、次の時代の身繕いをする。
この激動の時代は2020年~2030年まで続く。
かつては資本家と労働者の関係がはっきりしていたから労働組合の意義が大きかった。
IT革命・グローバル化により世界が繋がることで、距離を意識する必要がなくなった。
これは産業革命の鉄道に匹敵する発明。
どこにいてもビジネスができることは社会構造を変える。

≪ドラッカーの時代認識≫

1957年・・・近代合理主義から新しい時代へ移行した
1969年・・・今日まさにその渦中にある「大転換期」の到来を予告
1976年・・・高齢化社会の到来に伴う経済・社会・政治の変貌を予告
1980年・・・バブルの到来を警告
1989年・・・経済・社会・政治が、新しい世代に入ったことを宣言
1993年・・・2020年~2030年まで続く転換期を描く
2002年・・・経済が社会を決めるのではなく、社会が経済を決める新時代の到来を宣言。

●知識や教育も変化を続けている

知識の目的は「追求」から「活用」へ変化。生きた知識・使える知識が求められる時代。
欠点を減らして平準化する教育から、強み・得意を伸ばす教育へ変化する。

●知識社会になると、なにが起きるのか?

資金集めが不要になる。役に立つ知識の元に自然にお金が集まってくる。
言われたことだけをやるのではなく、常に自分の頭で考え行動する人はすべて知識労働者。
人間がいきいきと働ける社会になる。
お勤めはどこですか?ではなくお仕事はなんですか?と訊かれる社会。
金ではなく「ひと」が中心にいて、仕事を通じて自己実現を果たす社会。

組織社会で働くすべてのひとが幸せになるための重大な課題がひとつ。
何割かのひとは今まで通り単純労働に従事します。
できうる限り労働生産性をあげる仕組みをつくり、働き手を組織に縛りつけないようにすることがドラッカーの理想。

●ポストモダンの七つの作法

七つの手法を武器に、世のため人のために行動することが、組織社会における新しい慣習の形成をもたらす。

「見る」
バタフライ効果理論に立って全体を見る。理屈ではなくすべてを命あるものとして見る。
他人が見ていることについて聞く、自分を客観的に見る。
「見て、聞いて、全体をとらえる能力」

「我、見る。ゆえに我あり」論理的な分析と近く的な認識の均衡が不可欠となる。

「分かったものを使う」
すでに分かっていること、すでに起こったことをもとに行動せよ。すでに起こった未来。
今起こっていることをしっかり観察すれば、おのずと次に起こることが見えてくるはず。

「基本と原則を使う」
基本と原則を、万能の原理としてではなく、補助線として使う。
何のための経営ですか?基本は「世のため人のため」です。

「欠けたものを探す」
ギャップを探して新しいニーズを見つける。
見えないものによって現実の多くは支えられている。
見えないものを明らかにし、見えるものの意味を示すことが大切。

「自らを陳腐化させる」
ポストモダンの社会は
あえて自らを陳腐化することで、絶えず新しいものにチャレンジしていく姿勢が大切。

「仕掛けをつくる」
理想を現実化させるための仕掛けをつくる。
例えば達成目標を定め、失敗した場合の反省だけでなく、成功した場合の検証をし、成功を慣習化させる仕掛けをつくることも重要。

「モダンの手法を使う」
モダンの手法は「論理と分析」、ポストモダンの手法は「観察と知覚」。
「論理と分析」の限界を分かったうえで使う。
何しろ近代文明をここまでもってきたのは「論理と分析」の力だから。

●日本の「西洋化」ではなく、西洋の「日本化」

論理ではなく知覚の能力に優れた日本人にとって、ポストモダンは日常である。
日本画が描くのはモノではなく「空間」。「空間」を見ることが日本ならではのモノの見方。
日本人はものごとの本質を因果ではなく、形態としてとらえる能力を持っている。
明治維新以後、日本人は、日本の「西洋化」ではなく、西洋の「日本化」をしてきた。

●日本はポストモダンの手本になりうる

日本の会社では、従業員を欧米のような部品扱いにしません。
日本では会社という組織が、単なる労働の場ではなく、人と人をつなぐコミュニティの役割を果たします。
人と人の絆を重視する組織としての日本企業に組織の理想を見出しました。
ドラッカーは一時期「日本こそがポスト資本主義社会のモデルになりうるはずだ」と考えました。
「組織はすべての人と社会を幸せに導くものでなくてはならない」というドラッカーの理想にかなり近い部分があったのは間違いないでしょう。
「継続」が重視される時代から「変化」を求められる時代へ移行するにつれ、日本的経営は袋小路に入りましたが、ドラッカーは日本に期待し続けました。

日本が、終身雇用によって実現していた社会的な安定、コミュニティ、調和を維持しつつ、知識労働と知識労働者に必要な移動の自由を実現することを願っている。
日本の解決が他の国のモデルになるからである。
いかなる国といえども、社会が真に機能するためには、社会的な絆が不可欠だからである。

あらゆる先進国が、今日の姿とはまったく違うものとなる。
自らをマネジメントすることができ、しなければならないという知識労働者の登場は、あらゆる国の社会を変えざるを得ない。

●日本には復興の力が備わっているはず

震災が起こり被災地ではボランティアが活躍しています。
ドラッカーは、非営利組織こそが社会の新しいコミュニティに成りえる、としてNPOの発展に尽力してきました。
NPOは、助けられる人の救いになるだけでなく、助ける側にとっての市民性の発揮と自己実現にも繋がっていく。
政府機関は自らプレーヤーになることは苦手である。ゆえに「民力」が必要である。

ドラッカーの根底にあるのは「人を大事にする社会」の構築でした。
だからこそ、彼の思想は人々の心をとらえてやまないのです。そして役に立つのです。

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2024年08月18日

Posted by ブクログ

『マネジメント』はビジネス本なのだと思っていた私にとって、そして世のビジネス本になんとなく胡散臭さを感じている私にとって、この本はとても良い「ブックトーク」を提供してくれた。
ドラッカーがなぜ「マネジメント」を書いたのか、彼の言う組織とは何か、という根底のところを丁寧に解説してくれている。
ドラッカーの人となりや、著者自身のドラッカーへの敬意が伝わって来て感動したので、さっそく『マネジメント エッセンシャル版』を購入してみた。

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2020年10月31日

Jan

購入済み

読むだけでは意味がない

有名なドラッカーの「マネジメント」だが、まだ読んだことがない。
同じようなジャンルの「7つの習慣」や「ユダヤ人大富豪の教え」(たしかこんなタイトルだったような……)
は読んだことがあるが、読むと感動するというか、感銘を受けるのだが、じゃあその後の人生で活かされているのかと言うと、さっぱりである。

ちまたにこのような本が山ほど売られているところを見ると、自分と同じく多くの人も生き方の指針を探しているのだと思う。

そして、多くの人が自分と同じように読むだけで実際には役立てられていないことも多いのだろう。

でも中には自分の人生にうまく取り入れられる成功者もいるはずだ。その人達との違いは何なのか。
それは、具体的な実践とそれによる変化が結果として見られたかどうかの経験、実践を続けるための意志を持ち続けること、なのかなと推測する。

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2020年06月23日

Posted by ブクログ

「マネジメント」の要約というよりは、ドラッカーが「マネジメント」を書いた背景が分かる本であり、「マネジメント」に興味がある人は、なかなか興味深い内容が書いてあります。

ドラッカーがどういう人生を生きたのか、についてや、どのような考え方の変遷で本を書いたのか、が理解できた。この本を読むことで、より深く「マネジメント」という本を読めるな、という印象でした。導入としては最適の本だと感じました。

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2019年10月08日

Posted by ブクログ

NHKの教育テレビで放送されている「100分で名著」。


古今東西の名著を広い視点から解説してくれる番組で非常に面白いのだが、その内容の書籍版が刊行された。

今回はドラッカーのマネジメント(エッセンシャル)である。


最初は「要約されたものをさらに要約して大丈夫なのか?」と懐疑的だった。

かし、エッセンシャル版の要点を抽出しつつ、その前後に発売されたドラッカーの書籍のポイントを加えながら編集されている。


マネジメントを中心においた、ドラッカー哲学の再編成したものという感覚か。さすがドラッカーを知り尽くす男、上田惇生である。


巻末のドラッカー名著集を見るだけで他の本も読みたくなってきた。


もしドラは内容をより身近な事例にアレンジした本であるが、本書はドラッカーの世界全体を手軽に知ることができる好著である。

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2012年02月27日

Posted by ブクログ

導入本として最適かなと思います。これで全体構造を理解して、マネジメントの本にあたれば、少しは理解できるかなと期待しています。それにしてもドラッカーは、働く人の幸福のためにマネジメントに着目しるなんて、ほんとすごい人だと思いました。

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2025年10月23日

Posted by ブクログ

恥ずかしながら、ドラッカーのマネジメントも、「もしドラ」も読まずに社会人生活を送ってきました。

最近マネジメントに関心を持つようになり、本屋で見かけて購入しました。

本書は、ドラッカーが「マネジメント」を書くに至る歴史的背景や、ドラッカーの「マネジメント」以外の著書からも引用しながら解説されているため、ドラッカーという人物に関心が湧く本でした。

ドラッカー関連の本を読みたくなる一冊でした。

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2025年09月03日

Posted by ブクログ

 ドラッカーの「マネジメント」を簡単に紹介した本。非常に読みやすくしているので、興味を持たせる点ではいいが、少し内容が薄い感じもしないではない。
 しかしながらマネジメントを要約しているためか、ドラッカーの言葉の力強さの一部を知ることができ、これを読んだ人はエッセンス版を、読もうという人もいるのではなかろうか。
 個人的にはマネジメントを学ぶというよりも、自己啓発本のニュアンスを感じてしまったのは、「マネジメント」を読んでいないからであろう。

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2022年02月10日

Posted by ブクログ

ドラッカーの来歴とマネジメント一冊に詰込められている心が紹介されている。これを読んで明日から活かせるスキルになるかというと違う。

これを読んだ上でマネジメントを読むと良さそう。

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2021年03月14日

Posted by ブクログ

ドラッカーの生い立ち、人生、エピソードについて書かれています。
『マネジメント』をまだ読んでない人に読みやすいのでお薦めです。

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2012年03月25日

Posted by ブクログ

本当はNHKの講座で聴きたかったのですが、ドラッカーの超入門編としては最適だと思います。
この本を読んでから「もしドラ」に入ったほうが、もしドラをより一層楽しめるのではないかと思います。

ドラッカーの考えには共感するところが多いので、私も勉強し直してみます。

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2012年03月20日

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