【感想・ネタバレ】新・思考のための道具 知性を拡張するためのテクノロジー―その歴史と未来のレビュー

あらすじ

コンピュータを計算のための機械ではなく「人間の考える過程を支援したり増幅するツール」という斬新な切り口で捉え、その開発に関わった人物とコンピュータ史を鮮やかに描きだす現在に至るコンピュータ史を理解するための必読書。
本書は、好評を博したロングセラー『思考のための道具―異端の天才たちはコンピュータに何を求めたか?―』の新訳・増補版です。新版では、旧版に登場した人物にあらためて取材した「新版あとがき」が増補されています(1~14章は刊行当時のままの内容です)。
本書では、コンピュータ技術の発展と変遷を追いながら、思考過程を支援する道具、知性を増幅する装置としてのコンピュータを夢みた人々が、どのような考えのもとに開発を進めたかが、著者の取材のもとに鮮やかに描き出されています。そして、コンピュータがどのように発展し理想に近づいたのか、どの点が失敗したのかなど、その後の姿が新版あとがきで言及されています。
コンピュータの歴史の入門書として、また、コンピュータをめぐる過去とそして未来についてみつめなおす本として、おすすめの1冊です。
日本語版新版の発行にあたり、初版を全面的に見直し、全編新訳化を図り、巻頭・本文中に20点以上の資料写真を追加、関連年表を掲載するなど、日本語版初版に大幅な追加変更を加えました。巻末には、東京大学の坂村健教授による本書解説を掲載し、より一層、読みやすく生まれ変わりました。
《本書に登場するコンピュータ革命を夢みた天才たち》
チャールズ・バベッジとエイダ・ラヴレイス伯爵夫人、ジョージ・ブール、アラン・チューリング、ジョン・フォン・ノイマン、ノーバート・ウィーナー、クロード・シャノン、J.C.R.リックライダー、ダグラス・エンゲルバート、ロバート・テイラー、アラン・ケイ、エイヴロン・バー、ブレンダ・ローレル、テッド・ネルソン

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

各章の記述は密度が濃いが、新版になって、オチが見えなくなってしまっているのが、本当に惜しい。初版の1985年当時の本としては、知性をアーグメント(拡張)する機械としてのコンピュータという切り口で成功を収めている。しかし、その後の20年の進歩、とりわけインターネット+ケータイの日常化に見られる今を切り取り、未来のビジョンをあぶり出すことには成功していない。

以上、辛口に書いたが、旧版の部分は科学読み物としては大変に骨太で読み応えがある。丹念に原著と関係者に取材しているため、新たな発見も多い。

以下、気になった記述。
・ファンタジー増幅器、知的ツールキット、相互交流可能な電子コミュニティという道具。
・重要な課題は、機器がどこまで賢くなれるかを考えるよりも、私たちの想像力次第でどのようにも変わる、こうしたマシンとの関わりを考えていくことだろう。
・2種類のモチベーション:1.複雑な計算をやらせる 2.人間の推論の本質を記号のかたちで捉える
・リックライダーの発見:考えるための時間の85%が事前準備に使われていた
・本当に難しいのは、新しい作業や思考の方法に、人間の方がどう馴染んでいくかということ。
・コンピュータ支援によるコミュニティを作り出して、知性ばかりでなく、コミュニケーションを増強することも出来るようになる。
・オーグメンテーション・システムを学ぶことに抵抗を示した人間は、いったんそれを受け入れてしまうと、今度はそれを手放すことにも同じように抵抗する。
・1968年『通信装置としてのコンピュータ』(4つの特徴。1.オンラインによって相互交流のための相手を関心から選べる。2.コミュニケーションがより効果的になる。3.反応が早い、ユーザを補完する。3.より混みいったメディアで提示できる。4.チャンスの増大)
・コミュニケーションの過程とは、心のモデルの外面化の過程である。話し言葉、文字、数字、印刷物などはどれも、モデルを外面化し、他者の同意を得るための人間の能力を大きく進歩させた。
・道具づくりには二つのやり方がある。一つはヴァイオリンのようなもの。もう一つは鉛筆のようなもの:アラン・ケイ
・コンピュータに実行可能なシミュレーションを制約するのは、人間の想像力の限界だけである。
・ゲームは過程、ワープロは結果をユーザは求めている。
・レトリックが生まれたのは、印刷技術が現れてから150年後のことだった。
・ネットとウェブは全く異なるレベルの存在。

0
2012年04月16日

「IT・コンピュータ」ランキング